“カテナチオの国” イタリアの子どもが12歳までに身につける守備の基本。日本人は「ボールを奪い切る能力が養われていない」

2018年09月04日

サッカー練習メニュー

自分の感覚として理想的なものを見つける

 まずは1対1から。「1対1はとにかく相手のボールを奪うことに尽きます。ただし、U-12世代はもう少しで(中学生年代から)11人制度サッカーへ移行していく時期なので、たとえ1対1でも、自分がボールを奪いにいくという行為がチームにどう影響を与えるかを考えながらプレーしないといけません。勢いだけで奪いにいって交わされてしまうと、しわ寄せがすべて他のチームメイトにかかることになります。それらを踏まえた上で大事になるのが、どう身体を使って、どこにポジショニングをして、どういう身体の向きでディフェンスをするかです」
 
 1対1を感覚的にマスターするのに最適なトレーニングがある。それが図1だ。図のようなグリッド内での1対1を行うのだが、四方には4色に色分けしたコーンがあり、そこに次の選手たちが待機する。真ん中の一人がボールを真上にあげて、たとえば 「赤と緑!」 などと二つの色を指定、それがスタートの合図となる。色を指定された場所にいる選手たちは、相手よりも速くボールを確保できるように駆け出して1対1が始まる。

【図1】
図1

 このとき、赤色の選手は緑のゴールを、緑色の選手は赤のゴールを目指す。 「ここで赤の選手がボールを奪えば、もう一方の緑の選手は守備者になります。緑の選手はまず相手を自分のゴールへ進ませないポジションや、そのための身体の向きを確保し、失点しないように考えながらプレーします。

 なおかつ、緑の選手にとって自分がゴールすべきは赤のゴールなので、赤の選手をディフェンスしながらも、相手を赤のゴールへどう近づけさせることができるかを考えながら守備をします。そこでボールを奪って攻撃に転じることができれば今度は自分が素早くゴールできるからです。

 このとき、指導する側はもちろん答えは言いません。そのような状況に持ち込むための、相手との身体の向きや距離感、立つべきポジションなど、自分の感覚として理想的なものを見つけてもらうのです」。
 
 守備をするときの身体の向きとして外していけない鉄則には 「相手に対して両足を揃えて立たないこと」 がある。これは相手に交わされたときに両足が揃っていると反転が遅くなる、という理由からだ。そしてもう一つ大事なことは、とルカさんが続ける。

 「このトレーニングを“1対1だけ”で終わりにしないことです。このトレーニングで最初にボールを真上に投げた選手は、自分が指定した二つの色(今回の場合は、赤か緑)のいずれかの待機場所に行きます。1対1をする二人の選手(赤と緑)はボールを真上に投げた人の動向をしっかり頭に入れておく。

 そして1対1が終わったら、もう一つの空いている色に向かってダッシュをする、というルールを設けます。すると、1対1の要素に加えて、攻守の切り替えの要素を入れることができるのです。選手たちは常に一つのアクションのさらに次のプレーを予想しておく必要があります。

 このトレーニングでいえば、どこの色が空いているのかを頭にインプットしながら1対1を行います。試合と同じような状況をこの1対1のトレーニン グでも作り出すということです」    

 試合を想定している以上、たとえば、1対1をスタートするときのボールをどう処理するのかさえもトレーニングになる。ボールを確保して攻撃側になる選手は、相手のディフェンスがどういうスピードでどうアプローチに来ているのか。それによってトラップをどうすればいいのか。逆に、守備側になる選手は、攻撃側の選手がトラップしてしっかりボールを収めたのに、勢いのままに相手に突っ込んでいけば交わされる可能性は高い。どう駆け引きをしながらアプローチをすれば守備に有利なのか。それらを総合的に考えながら1対1を行う必要がある。
 
 ちなみに、このトレーニングのグリッドのサイズを狭くすれば1対1は激しくなるし、サイズを広げれば、守備側が身体の向きやポジションを少し冷静に考えながらプレーすることができるだろう。何を子どもに求めるかによって設定は変わる。指導者も一緒に考えながらトレーニングを進めたい。

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