サッカーは“個人競技”ではない。「良いプレー」とは何か

2018年10月22日

コラム

前回(サッカーにおける「スピード」の定義とは? 足の速さだけが「スピード」ではない)、「スピード」の定義を再考した。サッカーにおける「スピード」とは、「移動のスピード(走る速さなど)」だけではないという話だった。勘違いされがちなのは「サッカーにおけるスピードの定義」は決して個人能力だけで解決できる話ではないということだ。『バルセロナフィジカルトレーニングメソッド』の「サッカーにおけるスピードの条件要素」から抜粋して紹介する。

バルセロナフィジカルトレーニングメソッド』より一部転載

著●ラファエル・ポル 翻訳●坪井健太郎 監修●小澤一郎 写真●佐藤博之


決断と行動は相互依存の関係にある

 複雑な環境に対する選手の行動の原動力の適応は、実行するプレー・環境と選手自身の複雑な相互作用のプロセスに成果として生まれる(Araújo, 2005; Davids et. al, 2008)。

 一般的には「移動のスピード」をサッカーにおけるスピードとしているが、さらに「判断‐実行のプロセスの分析によるリアクションスピード」もスピードに含まれる。そして「それらはトレーニングでコーディネートするべきだ」と何人かの著者が補足している。

 加えて、選手の集合体としてのグループアクションのスピードの研究では、相互作用を引き起こすことが可能なシンプルな個人の行動が、チームの創造性あふれる動きのパターンを導き出し、時間‐スペースの関係において集団でのディフェンスとオフェンスのバランスを崩すことができる、としている。

 例として、あるチームがパスやドリブルによって相手をある決められたゾーンへ引き付け、ボールを素早く動かすことで、他のゾーンで数的優位や有利な位置を得る事ができる、というシーンが挙げられる。相手は数的不利を解消するため、素早く行動に移らなければならない。

 つまり、相手チームのアクションスピードを一時的に高めているのだ。この能力は、単に個人能力であると理解することができないのは明らかだ。まずは、プレーするにあたっての「決断を下す」というプロセスを学習することになる。

 また、どうやってそれを実行し、他の選手との関係においてそのパターンが発生するのか、あるいは修正を行なうのかということも理解していくこととなる。そして、それは集団プレーでスピードを発揮するということの分析にも役立つ。それぞれの要素を解析する前に重要なのは、それらを他のものから独立させて理解する事はできない、ということだ。

 時間‐スペース的に双方向に関与していると考えられるため、要素を分けてしまうと能力を最高レベルまで引き上げることはできないのだ。例えば、決断を実行の原動力と無関係と見なすことはできない。選手の内的・外的条件に適合しない「良い判断」というものは存在しない。

 例えば、マークを外してフリーになっている味方に1タッチでパスする「先天的な」決断力を持つ選手がいるとする。しかし成功させるための運動作用を調節する能力が足りなければ(例えばそのフリーな味方に適したパスを出せない)、アクション全体としては効果的ではなくなる。 また、何人かの提唱者(Araújo, 2005,Fingelkurts兄弟 2004)は、反応原理とは受けた刺激に対してではなく、刺激を受けて目的を達成するためにする行動であり、認識プロセスにフィードバックする行動であるという。

 線形での階層的観点から判断と行動のプロセスを説明するのではなく、2つのプロセスの相互作用の非線形のフィードバックの観点から解釈するべきである(Araújo, 2005)、としている。

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