日本の子どもたちに必要なものは「余白」であることを大人たちはわかっているようでわかっていない【サッカー外から学ぶ】

2018年12月20日

コラム

余白

“自由時間”をつくることの真の価値

 橋井さんは『自由時間』の中にこそ、人間力を鍛える本質的な成長のチャンスが眠っているという。

「多くの親や先生が誤解していますが、問題解決能力、コミュニケーション力や、やり遂げる力といった“非認知能力”を伸ばすのは、カリキュラムに沿った教育プログラムの時間内ではなく、偶然の出来事が頻発し、ときにはトラブルやアクシデントが起きる自由時間にしかないということです」

「目に見えにくい力」とも言われる非認知能力は、学校のテストの点数やIQといった数値化できる能力とは性質そのものが違う。子どもたちが正解にたどり着くための解法や公式などの“テクニック”を教わることにそれなりの意味はあっても、本質的な成長にはつながらない。

「出された課題をこなせるように組まれているカリキュラムをこなしていけば、親の方はうちの子は成長している、上達していると感じるかもしれません。しかし、これはレストランで注文しなくてもどんどん料理が運ばれてきているようなもの。子どもたちにとっては食べたいかどうかもわからない料理を何も考えずにただ食べているだけなのです」

 この話もサッカーにそのまま当てはめることができる。平日はクラブのトレーニングでは物足りず、スキル特化型のスクールに通う。毎週土日は試合に明け暮れ、子どもたちは学校に通いながらプロ選手のようなスケジュールをこなしている現状がある。

 指導者も新しい練習メニューやドリルの導入は熱心だが、子どもたちの自主的な取り組みは「ダラダラするな」「遊んでないで練習しろ」と叱責してしまう。これではサッカーに必要な創造性、とっさの時の判断力が身につくとは言い難い。

 自由時間には、好きな遊びを自分で見つけ、自分で自分を伸ばしていく本当の意味での自由がある。時間はかかるかもしれないが、自分で決めた課題に向かって努力を積み重ねる経験が得られるというわけだ。

「自由時間が必要というと、気分転換や休養時間が必要という意味にとらえる人が多いのですが、First classroomで取り入れている自由時間の意味するところはそれとはまったく違います。子どもたちが一斉に始めて一斉に終わる、スタートやゴールだけでなく途中のチェックポイントまで決められているような受動的な体験ではなく、自分の好きなことに集中できる自由時間が大切なのです」

 橋井さんが園長を務める幼児園では、絵画でも造形でもズバ抜けた“傑作”が生まれるのは決まって自由時間の時だという。

「〇〇をつくらなければならないという課題があるより、自由時間のなかで自らつくろうと思い立ってそれに没頭した作品の方が素晴らしいのは当たり前のことですよね」

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