「考えろ!」「気合を入れろ!」ではない。ジュニア年代の選手には具体的なヒントが必要不可欠である/ジュニサカ取材日記④

2018年12月28日

育成を考える

取材・文●木之下潤 写真●佐藤博之

選手に具体的なヒントを与えることは心の準備につながる

 初日とは打って変わった天気に気分も晴れ、試合会場に足を運ぶと、ピッチ上には太陽の日差しが燦々と降り注いでいた。逆光ではっきりとは捉えられないが、すでに数チームの選手たちがボールと戯れていた。

 大会二日目、まずチェックしたのは夏のフットサル選手権大会『バーモントカップ』で優勝に輝いた大阪市ジュネッスFCだった。それはダノンネーションズカップ、バーモントカップ、ジュニアサッカーワールドチャレンジなどU12の主要な全国大会に出場し続け、結果を残してきた町クラブだったからだ。

 大阪府大会も順当に勝ち上がり、今大会の出場権もきっちり獲得。初日こそ柏レイソル(千葉)に1対2で敗れたものの、ここまで二連勝と勢いにのるアリーバFC(宮崎)に2対0以上の点差で勝てば、1位で決勝トーナメント進出を決められる。だから、どのような戦いを見せてくれるのか注目していた。

 試合前、各々がキックの調整を行っていた。そんな中でゴールキーパーだけは監督と二人でロングキックからのハイボールの処理を熱心に練習していた。

「いくぞ!」
「はい!」
 ……
「もう一本!」
 ……

 それが終わると清水亮監督はゴールキーパーの手前に選手を一人立たせ、再びハイボールの練習を続けた。

「ラスト一本!」

 これを見て、アリーバFC対策だとすぐに理解できた。今大会は、どの試合を見ても丁寧にボールをつなぐチームがほとんどだったが、数チームだけはフォワードやサイドハーフのスピードや身体能力を生かすため、ロングキックを多用していた。実は、アリーバFCもその一つだった。特にキックで言えば、数人の選手たちは大会屈指の強さを誇っていた。

 試合開始のホイッスルが鳴ると、アリーバFCは早々にディフェンスラインから前線へと放り込むようなボールを蹴ってきた。その強さはハーフウェーライン付近であれば、ゴールキーパーのところまで余裕でボールが飛んでくるほどだった。

 幾度となく、大阪市ジュネッスFCの選手たちはそのボールを跳ね返し、ゴールキーパーは頭上でハイボールの処理をした。その対応は結果的に前半終了まで何度も続いたが、彼らは粘り強くハイボールの処理をし続けた。

 ただ、その粘り強さが彼らの勝利を呼び込んだことは間違いなかった。

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 大阪市ジュネッスFCが前半14分に先制点を決めたのだが、それ以降のアリーバFCの攻撃は明らかに焦りの色が出ていた。その証拠にロングキックの距離とコースには狂いが生じていた。それは「同点に追いつかなければ」という思いが力みを生み、それによってゴールにまっすぐ飛んできていたハイボールが徐々に反れる回数が増え、それに走り込む選手たちの顔にも落胆の表情が浮かぶようになった。

 その心理的な優位性を実現したのは選手たちだが、それを可能にした下準備を試合前から綿密に行ったのは監督の手腕によるところが大きい。やはり全国大会レベルの試合になれば、相手チームの分析と具体的な対策は差を生む。それはプレーそのものへの影響もあるが、どちらかといえば心理的な影響の方が大きいように思う。

 事前に、相手にどのような特徴があるのか、どのようなサッカーをしてくるのかくらいはわかっていた方が選手たちも心の準備が作りやすい。3月くらいから大阪市ジュネッスFCの戦いを追っているが、清水監督は選手のメンタルコントロールが非常にうまい。それは具体的なプレーのヒントを与える意味であり、「気合いを入れろ」というような根性論を指しているのではない。

 今大会でも「考えろ」などという抽象的な言葉が数多く聞こえてきたが、ジュニア年代の選手たちに必要なのは具体性である。全国大会に出ている選手であってもまだ成長過程なのだからプレーにおいて知らないこと、あるいは指導を受けても忘れていることを前提に事を進めるべきだと、あらためて感じた。

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