勝敗を分けたのは「ポジショニングの判断」の差だった/ジュニサカ取材日記⑥
2018年12月29日
コラム取材・文●木之下潤 写真●佐藤博之
ベスト8で差を生んだのは引き出しの多さ!
今朝から厚い雲に覆われ、寒波がやってきた。前日の好天とは打って変わり、とにかく寒い。ピッチを吹き抜ける風で、ボールは蹴っても戻されるほど。前半と後半で完全に風上と風下になり、試合の条件が変わる。
そんな悪条件に選手たちも苦戦を強いられた。
ベスト8の戦いは粘り強い戦いが求められた。風上に立ったチームが圧倒的に優位。それはシュート本数の違いとしてデータにも表れており、風下に立った時には前進が難しく、風上のチームは相手陣内でプレーできる時間が長い。
だからこそ、風下で守備に回ったチームがいかにボールを保持する時間をうまく作れるかが大事だった。
そういう視点で試合を見ると、大きく二つの戦い方に分かれた。一つは、ディフェンスからのビルドアップでファーストライン(フォワードのプレス)を丁寧にはがすチーム。もう一つは、ロングキックでファーストラインを飛び越え、危険を回避するチーム。
どちらの選択にもメリットとデメリットが存在する。
前者は、自陣での前進時にコントロールミスをするとボールを奪われ、そのままシュートまで持ち込まれる可能性がある。だが、自分たちがボールを保持しているため、ミスしなければ精神的に落ち着くことができるし、そのまま攻撃へと入ることが可能になる。
後者は、自陣での危険エリアを回避できる代わりに必ず肉弾戦になるため、それを制すことができなければ相手ボールになる確率が高く、また守備に回る可能性をはらんでいる。当然、それをマイボールにできればチャンスも生まれるが、ボールが前後を行き来することが多くなるため、心身の消費も激しい。
いずれにしろ、精神的にも肉体的にも粘り強さが必要だった。
その中でチームとしてのベストゲームを見せたのが、大阪市ジュネッスFCだった。前半早々に先制点を入れられるも、全く焦ることなく、いつも通りディフェンスから中盤、中盤からフォワードへとボールを動かしながら淡々とプレスを回避して攻撃を組み立てていく。彼らは他のチームに比べ、今年のU12の主要な全国大会で修羅場をくぐってきた経験が多く、精神的な強さを身につけていた。
一方で、先制点を入れた風下の東京ヴェルディはスタートこそ丁寧なビルドアップを見せていたが、時間が経つと共にボールが徐々に前に進まなくなった。
そこには、大阪市ジュネッスFCのシステム変更がポイントとなっていた。ベスト16までの彼らは『1-3-3-1』で戦っていたが、この試合からは『1-2-3-2』にシステムを変えていた。これにより東京ヴェルディのディフェンスに対して数的同数を作り出し、相手のパスコースを潰したのだ。
東京ヴェルディは最初こそ丁寧に目の前のディフェスをはがしつつボールを前に進めていたが、前半の途中からはそれが難しくなり、ロングキックを選択することが増えていった。残念ながら、彼らにはそういう戦いをした経験が少なく、前半のうちに逆転されてしまった。
後半に風上に立つため、「どうなるか?」と楽しみにしていたが、東京ヴェルディは『風』という条件をうまく活用できなかった。いや、むしろ大阪市ジュネッスFCの方が試合巧者だった。それは彼らが丁寧なボール運びとロングキックとを状況によって織り交ぜながらうまく戦ったからだった。
だが、東京ヴェルディはロングキックを使う戦いに慣れていなかった。その差が大きい。事実、他の試合を見ていても、その使い分けをうまくできていたチームが勝ち抜いたように思う。それはソレッソ熊本、川崎フロンターレ、アビスパ福岡にも近いことが言えた。サッカーに限らず、日本スポーツでよく言われる『自分たちの戦い』も、それができない場合も多々ある。それがたくさんあるのがサッカーというスポーツだ。だからこそジュニア年代の間は様々な経験が大きな糧になる。
もちろん、Jクラブである東京ヴェルディがロングキックを多用する戦いが、実力的に機会として少ないのも理解できるが、彼らはディフェンスラインからのビルドアップにパターンが少なかったのも見逃せない現実だ。もしサイドに張り続けているサイドハーフがもっと臨機応変に中央に絞ったりし、違う選択肢を作るなどの工夫をしていれば試合展開も違ったかもしれない。
ただ、それを経験させることができるのは指導者しかいない。どれだけの試合を想定し、その経験を積み重ねてきたのかがベスト8では差を生み出しように感じる。ここまで勝ち進んだチームに技術的な差はほぼなくなっていた。
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