指導者に求められる説得力。グラスルーツの指導者に不可欠な「意見を交わす経験」
2019年01月19日
コラム
「その国のサッカーはグラスルーツに色濃く表れる」
当たり前だが、試験に落ちた。ただ、その苦い経験からとても大事なことを学ばせてもらったと感謝している。本来なら再試験を受けるとき、不合格となった口頭試験とそれに付随する形でコーチ実習試験を受け直すだけでよかった。
しかし、私はつかみかけた感覚を大切にするため、試験だけを受け直すのではなく、1年間、現場で自分を見つめ直してから再び講習会を最初から受け直した。指導者としての立ち振る舞いに芯が通ったことで、その後、講習会で触れる内容がまるで違うものに感じられた。
きっと同じように数多くの指導者が自分自身と向かい合い、見つめ合ったことだろう。そうやってトップレベルだけではなく、グラスルーツにも質の高い指導者が確実に増えてきた。かつて元日本代表監督のイビチャ・オシムはこう話していたという。
「その国のサッカーはグラスルーツに色濃く表れる」
ドイツ育成改革の本当のすごさは、グラスルーツからのハイブリット化に成功したことにある。『育成プロジェクト』はこれまで曖昧だったり、おざなりだったものに徹底的にメスを入れ、時間をかけて明確で意思の通ったものに仕上げた。
町・村クラブで目を輝かせてボールを追いかける子どもの中からタレントが生まれてくる。ブンデスリーガのユースアカデミーと全国に張り巡されたシュツットプンクトが可能な限り、すべての才能の卵を拾い上げ、長期的な視野でサポートする。
そして、自分たちが確立した育成コンセプトのもと、将来を見据えた年代に応じたトレーニングが論理性と人間性を備えた指導者によってなされる。拮抗したハイレベルなリーグ戦を戦い合い、エリート学校との提携で人間としての成長も大切にした。
その中で勝ち残ったものだけを求めるのではなく、サッカーを愛するすべての人が、いつまでもサッカーと関われる社会循環を目標に築いた。2014年のワールドカップに優勝するまで、15年という時をかけて土台から頂点までどっしりとした育成ピラミッドを完成させた。
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