指導者に求められる説得力。グラスルーツの指導者に不可欠な「意見を交わす経験」
2019年01月19日
コラム
【ドイツで15年以上指導者を務めている中野吉之伴氏】
「こんな練習では何も得られない」
あれはB級ライセンス講習会に参加したときのことだ。最後に行われる試験で私に出されたテーマは『中盤でのビルドアップから攻撃チャンスを作り出す』だった。講習会の中で扱ったことだったので、習ったことを下地に練習メニューを作成して試験に臨んだ。
自分では整理して伝えられたと思ったが、一人の指導教官が険しい顔をして指摘した。「なぜ、守備側のチームが一人少ない状態で練習をするんですか?」
一瞬、なんのことかがわからなかった。なぜなら実演では練習の習得度を増すために、いつも片方のチームが少ない状態に設定されていたからだ。実演後の講習でも「テーマを強調するために片方の人数を調整することは必要なことだ」と教わった。間違っていないはずのところを指摘されたので、事態を把握するのに時間がかかってしまった。
「確かにそうかもしれませんが…」
私の発言を遮るように、さらに指導教官の言葉が続いた。
「どちらかのチームを調整して行う練習から、どうやって実践に即した経験を積むことができるのか? 何のための練習をしようとしているんだ?」
終いには、バッサリと切り捨てられた。
「こんな練習では何も得られない」
自分よりも上の立場の指導教官に切り込まれてしまったことにうろたえ、相手の論理をそのまま受け入れてしまった。その後、実習の試験と自分の実技試験を受けたが、すでに不合格はこの段階で決まっていた。
当時の自分にとってはショックな出来事だった。自信を持って臨んだだけになおさらだ。自分だけ落とされていたら「ひょっとして日本人だから?」という疑念を持ったかもしれないが、落とされた中にはドイツ人指導者がいた。何度も自問自答し、指導者仲間にも相談したが、なかなかピンとくる答えは見つからなかった。
そんなある日、ドイツ育ちのベトナム人指導者に『論理的な説得力』について教えられた。
「アジア人だから、どうしても見た目で相手になめられることが普通にある。だからといってそれをそのまま受け入れていては、いつまで経っても同じ土俵に立てない。自分の考えを相手に『なるほど』と思わせられなければならないんだ。それができるようになったとき、自分たちの美徳である謙虚さや相手を慮る心配りは誰にも負けない大きな武器になる」
これ以上の言葉はなかった。たとえ指導教官や代表監督に疑問をぶつけられたとしても「なぜ自分がその練習を取り入れ、選手に取り組ませようと思ったのか」を論理的に説明できないようでは、指導者としての矜持が守れない。それ以前に、選手たちに失礼だ。
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