「女子サッカーを見つめる」ことは日本の育成全体を再考するヒントにつながる【1月特集】
2019年01月21日
育成/環境企画の狙いは学ぶこと、議論を巻き起こすこと
籾木結花選手をはじめ、取材した選手は全員SNSを活用している。
それは自分の活躍を発信するだけでなく、「女子サッカーを盛り上げたい」という気持ちも持っているからだ。特に「個人と個人とが簡単につながる」このSNS時代、それを利用して自らの価値を高める選手は多い。男子選手だと「プロだから」が理由にあるだろうが、女子選手はそれが当たり前ではない。リーグ四連覇を果たした日テレ・ベレーザの選手たちでさえ、プロが理由にならないのがほとんどだ。
女子は男子以上に「環境問題」という壁が厚くて高い。
しかし、私たちは小中高大という女子サッカーの育成過程、またプレー環境の現実の声を知らない。だから、今回はこの特集を組むキッカケとなった松本市の女子サッカークラブ「松本ウイング」の代表・小林雅範氏に、長野県内の女子サッカーの現実を教えてもらうことから始める。きっと都市圏と地方では直面する問題は異なるし、選手人口が多い都市圏には存在しない問題があるだろう。
さらに特集企画第三弾では、今年からアメリカのオクラホマ大学でプレーすることが決まった黒崎優香選手(https://note.mu/yuuka_kurosaki)のインタビューを届けたい。ここで、彼女の取材で印象的だった内容を一部抜粋する。きっと、新たな価値観を得られるはずだ。
「日本って高校三年生の段階でアメリカの大学を決めるのは遅いんですよね。中学生の頃から選択肢に置いておけば英語が勉強できるけど、1年間で学ぼうとしたら死ぬ気でやらないと難しいです。100%スカラシップ(奨学金制度)を出せる枠はNCAA(全米大学体育協会)の中でチーム何人とルールがあるし、高二や高一、早ければ中学の時点でスカラシップを契約している選手もいるので日本人選手が高三でそういう制度を狙おうと思っても遅いんです。強豪チームでは、もう枠はありません。
アメリカに渡って損はしないと思います。
視野も広がって、英語もできるようになります。ある程度、日本でサッカーがうまい選手ならスカラシップを取ることは難しくありません。だから、ジュニア年代の子たちにそういった選択肢があることを発信していく必要があると、私も感じています。女子選手とその両親に知ってもらえたら、コーチにも海外にルートがあることをわかってもらえます。私の予想ですが、ここ数年でアメリカ留学する選手たちが増えていくはずです。
日本版のNCAAの立ち上げが話題になっていますし、競技を問わず、他の選手たちも発信していて、日本にもアメリカの情報が入り出していますから。だから、もっと英語に触れる機会を増やしながら勉強をしていればチャンスは広がっていきます。アメリカの大学リーグでプレーしていれば、その上のプロリーグのスカウトも見ているわけです。どの試合も全米中に放送されています。スポーツチャンネルで生放送があっちでは当たり前ですから…」
正直、日本の育成環境は簡単に変えられない。
目の前の与えられた環境下でプレーするしかないが、知っていればチャンスは確実に増える。国内であっても、学業が優秀であれば選択肢が増えることは間違いない。女子に限らず、育成選手全員に言えることだが、「サッカーがすべて!」になってはいけないのだ。むしろ、そういう選手はプロになっても頭打ちになる可能性が十分にある。
今回の特集は完結させるものではなく、継続していくものだ。だから、女子の育成環境の問題に触れたら、きっと育成全体を見直すヒントにもつながっていくと思っている。私自身にも先は見えないが、「女子サッカーを見つめる」ことでいろいろな議論が巻き起こればいいというのが結論だ。それをジュニサカWEBのSNSを中心に行われることを期待し、第二弾の長野県松本市の女子サッカークラブ「松本ウイング」の代表・小林雅範氏のインタビューへの前振りとしたい。
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