指導力をアップデートしていくには「議論」が必要。将棋の「感想戦」のように。

2019年03月01日

コラム

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【スペインの上級ライセンスを日本人最年少で取得し、帰国後も湘南ベルマーレや大宮アルディージャのJクラブの育成組織で指導者として活動した倉本和昌氏】

学校とスポーツを切り離して考えなければならない

Q.(日本の)部活動をどう思いますか?

坪井 スペインと日本の部活動はどう違いますかという話は研修をやっていてもよく出てきますよね。
 
高橋 スペインでは日本の高校のように学年を3つに分けるという概念自体がないかもしれませんが、いわゆる強豪サッカー部と同じような規模感で100人以上選手が在籍しているクラブはあるんですか?
 
坪井 ありますよ。でも必ず、ABCDというようにチーム分けされます。全員が試合に出られる環境があります。
 
高橋 日本の高校生のように3年間ずっと公式戦に出場できないということはないということですかね。
 
坪井 ないですね。出場できなくなったら移籍する感じ。
 
高橋 移籍の環境が整っているのは大きいですね。
 
木之下 そうするとリーグ戦だったり、移籍だったり、環境が大きいですね。
 
倉本 全部クラブ化しなきゃダメです。たぶん。その学校のチームなんだけど、他の学校のチームにいっても良いとか、高校には在籍しながら、他の高校のチームに移籍したり、選手が流動的にならなければ、本当の意味でリーグ戦をやっても難しいですよ。
 
 これはとある学校の先生の話なんですが、部活と学校と切り離して欲しいと言っていました。切り離さなきゃ両立はしんどいって。昨今は、世間的にも『ブラック部活』は問題視されている流れなので学校側は強制的に休みを取らせるなど配慮しています。でもそうするとサッカーをプレーしたいと思っている人たちが来なくなるんですよ。練習量が減ると。だったらクラブチームに行ったほうが良いと。もう、学校とスポーツを完全に切り離して考えいかないと、授業して部活まで見て、さらに家に帰って宿題まで見てって地獄ですよね。
 
木之下 でも、そういうこと決断しなければいけない時期に入ってきていますよね。
 
倉本 もうそういう流れですよね。そうすると僕はサッカーコーチの需要は増えると思うのです。チームが増えれば指導する場も増えるし、優秀な指導者は求められるから。
 
木之下 そういうところはハード面の解決にもつながってくるのかなと思います。外部指導員は外部の企業に委託するとか。
 
坪井 現在は、先生がブラックな環境で指導をしなければならないのではないでしょうか? まずは、それを外部委託すること。そうすれば、指導をしたい若い指導者の現場経験の提供になり、本来はやりたくないのに現場に立っている顧問の指導者もブラック環境から脱出できる。お互いwin-winです。そして、最終的には16時以降のグラウンド自体を民間に委託するんです。発展系として、そこに小さな飲食店などを開き、そこで保護者が見られるようにする。結局フットボールを取り巻く環境自体を学校外からアプローチしていくという考え方になったほうがみんな幸せになれる。という投稿を先日しました。
 
木之下 それこそ18時以降は外部のチームがグランドを使用する場合、人工芝に変えられたりとか、そういう可能性もありますよね。僕はそういう環境整備が重要だと思います。自治体も絡みやすいですし。
 
坪井 スペインはみんなそう。行政が土地を持っていて、クラブが指定管理者制度という制度で、下のカテゴリーの町クラブでもしっかり人工芝のグランドを利用できる環境がある。行政と民間が手を取り合っているんです。
 
 日本のA級のライセンスの講座で社会学をやっていて、そういうことをやっていこうよって出てくるんです。2010年くらいに国家政策として決まってるみたいです。スポーツ立国ってあったけど、9年経ってもまだ実践されていない。
 
倉本 新しいチームを登録したいとなったときに『グランドがないから』と、ずっと登録させてもらえないことがあったらしくクラブ側が訴えたことがあったらしいんです。よく調べると裏で根回しして登録を意図的に阻んでいる人がいた。
 
 もし今後そういうことがあれば、その地域は出られなくするというJFAから強い通告があった。ある意味で2020年の東京五輪に向けてスポーツ界の膿が出ていると思うんですよね。もう体罰の問題なども隠しきれない。どこかからか動画で撮られている可能性が高いので。スポーツの指導者は、地域にとってどんな存在どう地域と関わっていくべきなのか、改めて問われていると感じます。
 
坪井 膿の出方はグローバルになっていくと思います。ハードの使い方、指導者の質とか。それこそ公共交通機関の仕組みとかと一緒に。そういうものがヨーロッパとかアメリカと比較された上で、日本ってどうなの? みたいに。基準が変わってくことは悪いことじゃないよね。その面で日本はだいぶ停滞していますから。教育と部活の分離は、そういう悪いことが出てくるというのはメリットだと思います。


<プロフィール>
倉本 和昌(くらもと かずよし)

高校卒業後、プロサッカーコーチになるためにバルセロナに単身留学。5年間、幅広い育成年代のカテゴリーを指導した後、スペイン北部のビルバオへ移住。アスレティック・ビルバオの育成方法を研究しながら町クラブを指導し、2009年にスペイン上級ライセンスを日本人最年少で取得。帰国後、大宮アルディージャと湘南ベルマーレのアカデミーコーチを計8年間務めた。現在はスペインと日本での経験を活かし「指導者の指導者」として優秀なコーチを育成するサポートをしている。
 
坪井 健太郎(つぼい けんたろう) CEエウロパユース(スペインユース1部)第二監督

1982年、静岡県生まれ。静岡学園卒業後、指導者の道へ進む。安芸FCや清水エスパルスの普及部で指導経験を積み、2008年にスペインへ渡る。バルセロナのCEエウロパやUEコルネジャで育成年代のカテゴリーでコーチを務め、2012年には『PreSoccerTeam』を創設し、マネージャーとしてグローバルなサッカー指導者の育成を目的にバルセロナへのサッカー指導者留学プログラムを展開。2018年10月には指導力アップのためのオンラインコミュニティ「サッカーの新しい研究所」を開設した。著書には『サッカー 新しい攻撃の教科書』『サッカー 新しい守備の教科書』(小社刊)がある。

木之下潤(きのした じゅん) 文筆家/編集者

「出版屋」として書籍、雑誌、WEB媒体の企画から執筆まで制作全般を行う。「年代別トレーニングの教科書」「グアルディオラ総論」など多数のサッカー書籍の制作にたずさわっている。2018年から地域のサッカークラブやスクールのコンサルを行い、10年先も町に根付いた存在であるためにクラブ・指導哲学や年代別のトレーニングを指導者たちと共に言語化している。


 

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