「勝ちたい」と思っているのは誰か? 勝利以外の評価基準を指導者が持つ必要性【3月特集】

2019年03月29日

コラム

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勝利以外の評価が町クラブには必要

——時系列で言えば、その明文化しないといけないものが最も未来に関わるものになっていくので、本当は最重要課題だったりするわけです。
  
藤代「それは根っこですよね。それがなくて傾いているのに気づかず、多くのクラブが少子化という波にのまれつつあります。私自身も言語化はやらなければいけないなと思っています。どういう言葉を使って、その背景にはどんな思いがあるのか、なぜこの言葉を使うのかなど、言葉を使ってもっと洗練していかなければならないなと感じています。でも、なんとかなってしまうからな……。一度立ち止まる勇気も必要ですよね。

 昨年12月に発売されたジュニサカさんの雑誌の特集(『練習しすぎ』が子どもの成長を奪う)に関わらせてもらいましたが、多くのチームの活動を見ていて思います。毎週末試合を組み込んで『立ち止まったら置いていかれる』と指導者の方々が口にされています。でも、ドイツで活動されている中野吉之伴さん然り、欧州の指導者はバケーションの意味をすごく理解していて、『休みがあるから跳ねるんだ』と発言されています。私たち日本人は『遊ぶことは怠けること』みたいなことを刷り込まれています」
  
——大事なのは、「人間は機械ではない」ということです。指導する時、大人があらかじめ想定している成長スケジュールというイメージは大切ですが、そこに余白がない状態でのものだったら人間はそれ通りに進めていけないし、それ通りに進もうとすると大人も子どもも心が擦り切れてしまうと思います。がんばることも必要だけど、時に休むことも必要。
  
藤代「私も昨年くらいから休むことにチャレンジしています。『今自分が何をしたいの?』『何が大事なの?』と振り返る時間を作るようにしています。例えば、クラブが勝ちを評価基準にすれば勝利至上主義としての時間経過になっていきます。だから、指導者が勝ち以外の評価基準を持たないと、きっと『置いていかれないように』というプレッシャーからは逃れられないと思います」
  
——私がコンサルする町クラブは「勝たなきゃいけない」という雰囲気が全くありません。試合での評価基準が何かといえば、練習でやっていること、積み上げてきたものが出せたかどうか。そのブレない評価軸は保護者に対してもちゃんと説明しています。

 話の流れがあるものなので誤解されたくはないでのすが、例えばずっと得点できない試合が続いていて、ある日「負けてもいいからこの試合は得点にこだわろう。まず1点だ」と送り出し、結果的には1対4で負けました。でも、試合後、子どもたちはニコニコしながらベンチに戻ってきたことがあります。つまり、チームとして掲げた目標を達成することが大事だし、そこで選手たちが得た納得感や自信は次につながるガソリンだと思うんです。

  
藤代「以前、中野さんに話を聞いた時に、練習の最後に『楽しかったか? すぐにでもまたサッカーをしたいか?』みたいな問いかけをすると言っていました。まさにそれが中野さんの評価基準だと思います。何を評価するかでチームは変わりますよね。ジュニアの間は、楽しかったかどうかが一つの評価基準として重要だと思います。

 当たり前のことでシンプルですけど、『怒ることをやめましょう』と言うより『私たちのチームは何を評価するか?』について一度向き合った方が子どもたち目線になっていますよね。スポーツは勝つことも重要なことだから、時に勝つことが評価基準であってもいいわけですよね。できれば、それにすべての子どもが賛同できるかどうかが入っていて欲しいです」

——今回は、藤代さんの「しつもんメンタルトレーニング」のメソッドより、考え方を中心に話を進めさせてもらいました。その理由は、違う人がメソッドだけを真似しても、本家の人がやる通りにはできないからです。サッカーも同じで、FCバルセロナの練習メニューを真似したところで選手が違うから映像で見ている通りにはなりません。藤代さんの考えを理解してもらえば、自分たちなりの落とし込み方ができるのではないかと思い、このようなスタイルをとらせていただきました。次回は、ぜひメソッドの部分で具体的な方法を取材させてもらえたらと思います。長い時間、ありがとうございました。


【3月特集】「問いかけ力」は「考える力」を培う


<プロフィール>
藤代圭一(ふじしろ けいいち)
一般社団法人スポーツリレーションシップ協会代表理事。「教える」ではなく「問いかける」ことでやる気を引き出し、考える力を育む「しつもんメンタルトレーニング」を考案。全国優勝チームや日本代表チームなど様々なジャンルのメンタルコーチを務める。全国各地のスポーツチームや学校教育の現場などでワークショップを開催し、スポーツ指導者、保護者、教育関係者から「子どもたちの目の前で変わった」と高い評価を得ている。2016年からはインストラクターを養成。著書に「スポーツメンタルコーチに学ぶ」「子どものやる気を引き出す7つのしつもん」(旬報社)がある。昨年12月に新刊「サッカー大好きな子どもが勉強も好きになる本」(株式会社G.B.)を執筆。

<しつもんメンタルトレーニング>http://shimt.jp/

 

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