「勝ちたい」と思っているのは誰か? 勝利以外の評価基準を指導者が持つ必要性【3月特集】

2019年03月29日

コラム

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問いかけ方は言葉の選び方や扱い方に紐づく
  
——指導がうまくいっていない時って大人側が一方的に進めているんですよね。私は現場に月2〜3回入るようにしているのですが、後ろから「選手を参加させて」と合図しています。子どもたちは話すことで参加意識が高まるので、たったそれだけですが、グッと目の輝きが変わっていきます。
  
藤代「その通りですね。先日、私の新刊が出たのですが、そこで発見したことがありました。それは校正時に赤字を入れさせてもらったのですが、私の中で使っていない言葉がありました。

『あれをさせる』
『これをさせる』

 自分でも『どうして使わないのかな?』と考えて辞書を引いてみました。すると、『●●させる』とは『人にある行為を仕向けること』と記載されてあったんです。ようは、支配や服従的なニュアンスが含まれていて、相手にとっては『コントロールされている感があるんだな』と思いました。

 大人側はどうしても『させる』を使いがちです。

 例えば、『ウォーミングアップをさせといて』とつい言いがちです。『させる』はそもそも子どもたちの思いではありません。もっと練習がしたくなるようにするためにどうしたらいいのか。しっかりと『問いかけ方』を考えていかないと広がりと深みを作れません。極端な話、『できたか』『できなかったか』の二択だけで話すと、子どもたちの練習に対する印象もその二択で終わってしまいます。言葉によって成長は築き上げていくものだと思うのです。『きちんと言葉を操って、質問して振り返りをして、成長して』を繰り返していけば、それがチームの、クラブの風土になっていきます。育成の現場では、その部分は徹底した方がいいと思います」
  
——言葉は重要ですよね。
  
藤代「『練習したいのは誰だろう?』『勝ちたいのは誰だろう』……。昔、私もサッカー指導者をしている時は、自分に問い続けていくと結局『自分かな』みたいな時代もありました。たまに現場でもこういうことがあります。指導者が『勝たせてあげたいんですよね』とおっしゃっているのですが、選手に聞いてみると『いや、別に。それよりみんなでしっかりと戦って力を出し尽くしたい』と」
  
——私ははっきりと自分の気持ちは言います。『オレは勝ちたい』と。でも、勘違いして欲しくないのは『でも、プレーするのは君たちだから、オレは君たちが力を発揮できるようにサポートする』ときちんと付け加えて説明します。『オレは勝ちたい』を言うのは、子どもたちに熱を伝えるためです。

藤代「誰を主語にして語りかけるか(WHO)は非常に大切です。今日も野球をしている保護者さんとお話をする機会がありました。旦那さんがコーチをしているのですが、ある時に監督から一通のおかしな内容のメッセージが届いたそうです。そこには『コーチ陣で話をして、こんなことをやります』と書かれていました。不思議に思い、旦那さんに聞いてみると『知らない』と答えが返ってきたそうです。

 メッセージにはあたかも『私たち』という意味になっていました。意味合いのつけ方を間違えると反感を買うこともあります。でも一方で、あえて『私たち』と使うことで協力関係を作ることもあります。だから、主語はとても大切です。『オレは勝ちたい』って熱がこもっていて、それもいいですよね」

——解釈や受け取り方によっては反感を買う場合もあると思います。「オレは勝ちたい」も保護者側から聞くと「勝利至上主義じゃん」的なことを思う方もいますが、子どもたちはきちんと理解しています。それは私と子どもたちの間に信頼関係があるからです。例えば、ビジネスメールの文でいえば、クライアントさんへの指摘がある場合も「私はこう思います」と言えば個人に矛先が向きますが、「私たちライターは……」的な言い方に変えると受け取り方は業界での一般論に変わってきます。主語というか、言い方一つで相手の受け取り方は違うので、そこにはメンタル的な要素が必ず関わってきます。

藤代「重要ですよね。言葉もツールとして捉えると選ぶのが大事です。でも、言葉に『トーン』という要素が加わるとメンタルの部分も含まれていきます」

——口調や音量でも意思を見せられますよね。まるで国語の授業ですが、「5W1H」をその時々で使い分けるだけで、人の受け取り方や思考が変わってくるのは大人になると考えなければならないことかなと感じています。

藤代「最近のサッカー界は、言語化がテーマじゃないですか? いろんなクラブと関わっていて思うのは、一つのクラブで指導者によって言っていることが違うことです。それって哲学や指導方針が明文化されていないわけです。でも、現場の指導者はそれを言語化する時間を作らなければいけないとわかっているけど、それがなくても指導ができるから結局のところ『言語化=明文化』は後回しにされてしまいます」

  

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