練習の目的を意識した称賛と鼓舞。日本ではその関係性がブレている【4月特集】
2019年04月24日
育成/環境4月は「大学生指導者から見る4種の問題」を特集テーマに、第二弾では荒岡修帆さんにドイツの指導現場を含めた意見を語ってもらっている。前回は、荒岡さんが思う叱責指導について、また必要な叱責と無駄な叱責の違いについて深めてもらった。インタビュー最終回は、練習テーマに則したコーチングや声かけの仕方など日本では多く見かけない指導法について詳しく教えてくれた。
【4月特集】大学生指導者から見る4種の問題
文●木之下潤 写真●ジュニサカ編集部、佐藤博之

ドイツは練習テーマに則した声かけをしている
――子どもたちが答えようがないアプローチというのが、きっと理不尽や強制といったものになるのではないかと思います。どうしても日本では褒める指導、叱責する指導と両極端に捉える傾向があるので、叱責一つでこれだけ議論できるのは荒岡さんが深く考えているからだと思います。シンプルに選手との関わり方はとても大切です。ドイツに行って選手との関わり方で学んだこと、日本にはなかったことがあれば教えていただきたいです。
荒岡「すごくいいなと感じたことは、試合や練習における話の中で子どもたちから意見を聞き出していることです。例えば、練習テーマが『速攻』だとしたら、まず『速攻では何が大切?』というような質問から入ります。これは日本の子どもとの違いかもしれませんが、私が見てきたドイツの子たちはほとんど全員が手を上げて発言します。
ひと通り子どもたちが意見し終わる頃には、だいたい指導者が伝えたかったことがその中に入っています。だから、複数の子たちの意見をまとめると、指導者が伝えたかったことになっていることが多いです。その場合、指導者の役割は子どもたちに意見を求め、集めてからまとめ、そしてプラスαで何かを付け足して伝えることです。そういうコミュニケーションの取り方、指導の仕方はとてもいいなと思います。
私がドイツで関わってきたのは、RBライプツィヒなどこちらでも評判がいいとされるクラブに関わっている指導者なので、少し偏っているかもしれません。ただ、褒めることに関して言えば、コーチングにおいて練習の全体構造を常に意識しているのはすごいなと感じたことの一つです。つまり、練習の目的を理解した上で、その目的から逸れることなくコーチングをしています。だから、より練習の目的に近づくような褒め方、鼓舞の仕方をしているという印象です。
年末に、日本のサッカークラブをいくつか見学したのですが、その日の目的があった上で練習はしていても、とりあえずいいと思ったプレーはどんなものでも褒め、悪いと思ったことも目的とは関係なく指摘しているように感じました。目的と練習との関係がコーチングによってブレていましたし、結びつけられていませんでした」
――テーマを設けた練習メニューに対して、そのテーマを達成するために必要なプレーについては声かけをしていけばいいと思うのですが、日本ではテーマから外れた無駄なことについても多くを語りすぎるので子どもたちが混乱している状態が多いのかなと思っています。
それは自分がコンサルする町クラブの指導者に対してもそうですし、地域のクラブでもよく見かけることです。一つの練習に対して、子どもたちが意欲的に積極的に活発的に関わっているチームは、指導者が練習テーマに対してそれに即した声かけをしているなと感じます。
荒岡「そこはすごく大事なんだろうなと、ドイツに来て思うようになりました。もちろん日本でもやっている指導者はいるのでしょうが」
――実際に、日本でそういう指導を見かけることは多くはありません。
荒岡「一貫した声のかけ方が、はじめの練習の説明から練習、最後のフィードバックという一連の流れを通して、しっかりと子どもたちの印象に残りやすいと思います。はじめにその日の練習の目的を言って、それは『先週末の試合でこういうミスが多かったから』と理由も添える。そして、こうした方がいいんだと伝えた後、練習の中でそれができたときに『良い!』と認める。そうすると経験として積み重ねができて、違う判断をした時は丁寧にフィードバックをすればいい。
そういう指導を受けた子どもたちは『目的に沿ったラインの上に乗せられたところで、良いか悪いかを見つめることができる』から、経験として身についていくのではないかなと。最後の総括でも、仲間たちの意見も聞くことができるからプラスαとして理解も深まっていくと思います」
――ドイツは練習テーマに沿った指導、関わり合い方、深め方、プラスαの多様性というコーチングですね。日本のように基準となる棒があちこち動いてしまうと、何を目的にしていたのかも、何を身につけようとしていたのかも、何が悪くて良かったのかもブレてしまいます。結局、何をやろうとしていたのかを見失ってしまいますよね。
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