頭が変わればすべてが変わる。“GKを準備できる”指導者の心得【GKを準備する】
2019年06月28日
メンタル/教育FC東京のトップチームや湘南ベルマーレのアカデミーなどでGKの指導・育成に従事したGKコーチ、ジョアン・ミレッ。連載第2回目となる今回は、ジョアンが語る「GKを準備する人」とはどんな人物なのか。GKコーチは、選手に何を指導しなければならないのかを紹介していく。
通訳●倉本和昌 取材・文●高橋大地 写真●佐藤博之、Getty Images
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GKは孤独だ
――以前、ジョアンの教え子の一人である大久保拓生選手(サガン鳥栖)の記事(鳥栖の守護神・大久保択生は「失点」の恐怖を乗り越えた)を読みました。GKはメンタリティ一つでこれだけ変わるのかと感じました。
「ゴールキーパーを準備する人」は、頭→心→体という順番で指導していきます。まず選手の頭を変えることを意識しなければなりません。なぜかというと、頭が変われば全てが変わるからです。
大久保選手がFC東京にいるとき私に語った夢は「J1で1試合でもいいからプレーすること」でした。そう語っていた選手が今では、FC東京ではリーグ戦に10試合出場を記録、今シーズンはサガン鳥栖でレギュラー争いをしています。
うまくなるのに年齢は関係ありません。私のメソッドを本気で信じて正しいGKトレーニングをしてくれれば、そのキーパーの夢は必ず叶います。なぜなら正しい技術を発揮できるからです。
大切なのは、選手にどれだけ「これは間違いない」と確信を持たせて練習できるかどうか。それができたらキーパーは間違いなく成長します。
――前回の記事でおっしゃっていたGKコーチに必要な「心理学的な要素」にもつながる部分ですね。
海外では、試合後のロッカールームから最後に出ていくのは大体キーパーの選手です。なぜかというと、試合が終わりシャワーを浴びて着替えはじめるタイミングからキーパーは「今日の試合はなんでこうなったのか」と、振り返りを必ずしているからです。そのため、ロッカーを出るのが遅いんです。全員が全員ではないかもしれませんが、少なくとも自分が教えていたキーパーはそういうキーパーでした。
――選手自らがそういった思考をできるように促しているのですね。
私も現役のころから、その日の出来事を振り返る習慣がありました。今でこそ、キーパーの選手にも時間的に余裕がありますが、私が初めてキーパーコーチとして活動し始めたころ、スペインに3人程度しかキーパーコーチという職業の人間はいませんでした。1970年代の話です。
もちろん私が所属していたチームにもキーパー専門のコーチはおらず、全体練習が終わると「ジョアン、ちょっと残って。30分くらいシュート打つから」と監督が言い、居残り練習をするのが普通でした。キーパーの練習ではなくシュートの練習です。
そのころからキーパーは本当に孤独なポジションだと感じています。「キーパーのことは誰も助けてくれない」。そういう気持ちの中でやっていたので、今指導している選手たちには私が感じていたものと同じ気持ちにさせないようにしています。
――GKが孤独という意味では、今の日本でも基本的にキーパーコーチが足りていない現状があると思います。実際にスペインなどで、そういった状況は改善されたのでしょうか。
一つ、大きな問題があります。キーパーコーチが元プロのゴールキーパーだとしましょう。しかも、リーガ・エスパニョーラでプレーしていた選手です。
しかし、その彼らでさえ「キーパーを準備できる人」ではないんです。そもそも選手本人にゴールキーパーとして知識や技術も足りない状態だったとしても選手の能力や努力で、結果としてトップレベルでプレーすることは可能なんです。
現在の問題はやりたいと言えば誰でもキーパーコーチになれるということです。トップレベルで活躍した選手が、子どもたちを指導することに適しているかと聞かれれば、大きなクエスチョンマークがつきます。
あるとき、クルトワ選手(レアル・マドリー)をどう思いますか? と聞かれたことがありました。私は「ありえない」と答えました。
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