サッカーは「GKがつらい思いをし続けるスポーツ」。ジョアン・ミレッ氏が持つGK哲学【GKを準備する】
2019年06月21日
メンタル/教育ジョアン・ミレッ。ここ数年Jリーグを追いかけているサッカーファンや育成指導者の方々には聞き覚えのある名前かもしれない。FC東京のトップチームや湘南ベルマーレのアカデミーなどでGKの指導・育成に従事したGKコーチの名前だ。来日前は、スペイン・カタルーニャ州やバスク州ゲルニカなどで様々なカテゴリーのGKを指導。数多くのGKを輩出した。ジュニサカでは、そんな彼の言葉から「GKを知る」ための連載をスタートする。第1回は、GKというポジションは何なのかをジョアンの言葉から考えていく。
【連載】「ジョアン・ミレッはGKを準備する」
通訳●倉本和昌 取材・文●高橋大地 写真●ジュニサカ編集部
ジョアン・ミレッ氏 監修『ジョアン・ミレッ 世界レベルのGK講座』2020/1/15発売!
GKとは何なのか
――連載の機会をいただきありがとうございます。ジュニサカでは、これまでも何度か取材をさせていただくことがありました(※過去記事リンク1、2)が、今回は定期的にジョアンの話を伺えるということで非常に有益なものになると感じています。時間はたっぷりあるので今回は大枠の部分を伺えればと思います。まずジョアンはサッカーというスポーツをどう捉えていますか?
ゴールキーパーだけがつらい思いをし続けるスポーツです。
私たちゴールキーパーは、他のポジションの選手たちとは少し違います。自分のチームがゴールを決めたら、もちろん私もチームの一員として嬉しい。
しかし、ゴールが決まった瞬間、私は相手のキーパーが倒れて落ち込んでいるところを必ず見てしまいます。それを見ると喜びが半減してしまうにも関わらず。
なぜ見るのか。その瞬間はいつか必ず自分にも訪れるから。ゴールを決められたときのキーパーの心理を考えると、いくら対戦相手であってもつらい。ゴールを決めたときの感情はフィールドの選手とキーパーは全く別物だと思います。
――確かにGKではない僕はそういう感情でゴールシーンを見たことはないかもしれません。次は、サッカーにおいてGKはどういったポジションだと考えているか教えてください。
キーパーはサッカーチームの中で重要度50%を占めている…。いや、それは本音ではありません。私は65%ほどはあると考えています。たった一人でそれだけの影響をチームに与える力を持っていると考えています。ただ、それほど重要なポジションにも関わらず、世の中はゴールキーパーだけに焦点を当てることが少ないのが現状です。
例えば、PKの話は知っていますか? PKに備えるためのメンタリティの話です。
PKは、動かなければ33%の確率でシュートを止められるんです。ゴールは大きく分割すると『右側、真ん中、左側』と3つに分けることができます。つまりゴールキーパーである自分が『真ん中』に立って全く動かなければ、100本シュートを打たれても33本は止められるということになります。
基本的にキッカーはゴールキーパーの逆を突こうと思っていますが、ゴールキーパーがなかなか動かないので、反応しても取られないサイドギリギリを狙って蹴ろうとします。そうすると今度はゴールを外れるか、ポストに当たる可能性が高くなりますよね。おまけに真ん中に立っていて止めれる範囲を少し広げれば確率は33%よりも上がります。
だから私はまず「動くな」と言います。なぜか?例えば、先に右に動いたら反対に打たれるからです。逆も同じ。だから「動くな」と伝えます。
つまりどういうことかというとPKは本来キーパーが止めなければいけないわけではないんです。でも、PKになると世界中が「キーパー止めろ」と願っていますよね。
キーパーが直接相手にファールをしてPKを与えた場合は自分の責任になりますが、大抵の場合はフィールドの選手が犯したファールによってPKになるわけです。それをキーパーが止めないといけないなんて、理不尽だと思いませんか?
本来であればファールをしたその選手がPKのキーパーとしてゴールマウスに立つべきなんです。(笑)
しかし、そうはいかず、ゴールキーパーがその責任を負うわけです。
PKとは『ペナルティ』によって与えられるもの。つまり罰なんです。だから本来は止められるものではないんです。
逆に言うと「(PKは)ゴールキーパーが止めないといけないものではなく、相手のキッカーが決めないといけないものなんですよ」と、キーパーに理解してもらえば、キーパーのメンタリティは変わります。確率的に決めなければならないのはキッカー側にあるのだから、本来はキッカーのほうが背負うプレッシャーは重いはずなんです。
だからキーパーがプレッシャーを感じる必要はない。それだけでキーパーは落ち着いてPKに臨むことができ、まず「動かない」ことでシュートを止められる確率がアップする。そして横に蹴られたボールに対して反応すればいい。ということをキーパー自身が知る必要があるのです。
――確かにキッカーにとっても気負いのないキーパーの方が蹴りにくいかもしれません。
キーパーコーチは心理学的な要素も勉強していなければならないということです。
それは選手を指導する際にも同じことが言えます。なぜなら、指導者とは「何を伝えるか」というのはもちろん大事ですが、選手に「どう言ったら伝わるか」もすごく大事で、常に考えていなければならないからです。
例えば二人の選手に本質的には同じことを伝えるにしても、言葉の受け取り側である選手が、どんな性格でどんなメンタリティなのか、またこのメッセージをどう捉え、どう解釈するのかをイメージしなければなりません。つまり、受け手側の状況やキャラクターにあわせて言葉を使い分ける必要があるんです。
これらはすべてキーパーコーチの仕事のひとつです。
――なるほど。
ジョアン・ミレッ氏 監修『ジョアン・ミレッ 世界レベルのGK講座』2020/1/15発売!
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