FCトリアネーロ町田に新たに加わった「情熱」。イタリア遠征が改めて教えてくれたこと
2019年07月22日
ジュニアサッカーニュースFCトリアネーロ町田は日本の代表として、イタリアの国際大会『ユニバーサル・ユース・カップ』(4月19~22日)に出場した。予選リーグは1勝2敗で負け越し、3位トーナメントに回ることになった。徐々に世界の強度に順応してきたトリアネーロは破竹の3連勝を飾り、同トーナメントを圧倒的な強さで勝ち上がってきたチェルシーが鎮座する最終戦に辿り着く。待っていたのシビれるフィナーレだった。全2回の後編も若山聖祐監督(34)の回顧から、リアルなイタリア遠征記をお伝えする。
取材・文●石沢鉄平 写真●FCトリアネーロ町田提供

チェルシーはマンツーマンを極端に嫌った
チェルシーの試合をつぶさにチェックしていた若山監督は試合前から弱気モードになっていた。「フィジカル面もそうですけど、個々の能力がすごいなと思っちゃった」と白状する。そこで、1対1の局面をつくると厳しいと考え、数で守るいわゆるゾーンを選択する。しかし、このチョイスは結果的に失敗に終わる。
「前半の3、4分で2発やられて…。スライドが間に合わなくて、スペースを与えた瞬間にスピードでぶっちぎられちゃったんですよ」
トリアネーロの守備陣を切り裂いたチェルシーの10番のスゴさは若山監督の脳裏にしっかりと刻まれている。
「中央で3人抜き。これは将来、確実にプロだな、みたいな。身長は小6なのに足は中2、中3の速さ。こんな選手いるんだっていう、ホントのスーパー」
大量失点の悪夢がよぎるなか、指揮官は早々にゾーンを諦める。2トップのチェルシーに合わせ、2バックにしてマンツーマン気味に変えた。なんとこれが吉と出る。
「開き直ってミラーゲームにしたら相手がすごい嫌がって。ワンタッチ、ツータッチのはがし方があまり得意ではなかった。ウチがプレッシャーをかけたらいい反応を見せなかったので、これはいけるなという感覚が出てきたんですよ」
スラスラと読み流しそうになるが、ゾーンからマンツーマンへスムーズに切り替える作業は決して簡単なことではない。日本で相手のシステムに合わせる練習、試合を重ねてきた賜物だと若山監督は言う。
「選手の対応はものすごく早かったですね。相手のシステムを見てどう守備をするのか日本では毎週やっています。高学年になってくるとキックオフする前から自分たちで(相手が)3-3-1だぞとか2-4-1とか言っていますから」
後半にセットプレーで1点を返すと、流れは完全にトリアネーロに向く。今度は2-2に追いつき、そして逆転…。予選リーグのルガーノ戦から破竹の5連勝で、初の海外遠征を見事に締めてみせた。

選手、監督ともに感化された海外の感情表現
大会全体を通して、「結局、圧力をかけられたところでボールを持てないと意味がないんです」と、若山監督は再認識したという。「帰国後、トレーニングや意識を変えた点はあるのか?」と質問を投げると、「守備です。絶対に守備です」と間髪入れずに返ってきた。そして、こう続ける。
「だから、自分たちで強度を上げていこう、と。そういう環境を作って向こうでもボールを持てるように、その感覚だけは落とさないようにしよう、と」
その意識改革は早速、結果に表れる。20分6本で行われた大宮アルディージャU12との練習試合で13-3のスコアで快勝した。これにはアルディージャのコーチも、「『この圧はどうした?』ってビックリしていました」と笑う。
以前はいわゆる“戦えなかった選手”が対人に滅法強くなり、守備を頑張れるようになった。今までにない強度を体感できたことはもちろんのこと、海外の選手が持つパッションに直で触れたことも大きい。
「向こうの選手は感情表現がスゴかった。日本だとコーチが言わないと動かなかったり、感情を出せない子が多いなか、誰一人そういう選手がいない。みんな負けず嫌いで、多分それに感化された部分はあるんでしょうね」
宿泊していたホテルのレストランで急に踊りだすほど表現豊かなトリアネーロの5年生世代がさらなるパッションを覚えたとなると、いやはや末恐ろしい限りだが…。
実は選手だけではなく、若山監督もこの国際大会で感化されたものがあった。それは海外の指導者が発露する熱量の高さである。「声を荒げればいいって話ではないですけど」と前置きしたうえで、ある決意を固める。
「指導者がメチャクチャ熱かったですね。スカしている指導者なんていなかった。みんなで一緒に戦っていました。誰一人ベンチに座っていなかったですよ。斜に構える必要はないかな、と。選手の気持ちが高ぶるんだったらいいんじゃないかと思うんです。僕もそのスタイルでずっといこうと決めました」
試合中、ベンチに腰かけながら難しい顔をしている若山監督を見かけたら、ジュニサカ編集部に報告していただきたい(笑)。それは冗談として、ジュニア年代、いや、サッカーを指導する姿勢とは何ぞや、と、今一度考えさせられる話ではある。

【若山聖祐監督は指導者の“姿勢”を再確認した】
目から鱗のゴールサイズに現地サポーターの振る舞い
まだまだ土産話はあります、といった表情で、若山監督は目から鱗の生き生きとした“欧州レポート”に話題を変えた。「アレが最高にいいんです」というのが、同大会で使用されたゴールサイズだ。
「バーの高さは日本(小学校)と同じくらいでしたけど、横が広いんですよ。だからあんなにDFができて、いいGKが育つんだなと思いましたよ。日本のゴールだと高学年になると、小さいから守れているという錯覚に陥っちゃう」
例えば、全日本少年サッカー大会で170㌢クラスの大型GKがいたとする。幅5㍍×高さ2.1㍍のゴールでは、崩し切らないとゴールの可能性はたしかに低い。「選択肢が減っちゃうと、シュートの意欲もなくなる。フィオレンティーナ戦でカットインしてすごくいいミドルシュートがあったんですけど、ああいうプレーが出てこなくなっちゃうのかな、と」
絶妙なゴールサイズとともに、現地のサポーターにも唸らされた。3位トーナメントのコモ戦でトリアネーロの選手がFKを決めると、「まさかのコモのサポーターが『ブラボー』って、スタンディングオベーション。日本じゃありえないですよ」
さらに、試合後、クラブハウスから出てくるトリアネーロを現地のサポーターが取り囲んだ。なんと自然と拍手が巻き起こる。
「自分たちが負けて悔しいはずなのに僕らがいいプレーをしたらそれを褒めてくれました。日本だと負けたチームの保護者が勝ったチームを称賛することってあんまりないですよね。僕はまだ15年しか指導歴はないですけど、とにかくビックリしましたよ」
初戦のフィオレンティーナ戦では試合中に紫の発煙筒が焚かれ、監督いわく“ミニチュア版セリエA”の光景が広がっていた。さすがにコレはやりすぎな感(笑)は否めないものの、「いいもに対してはいい、という表現がちゃんとできる」(若山監督)ことは、サッカー少年を子どもに持つ保護者だけではなく、我々サッカーメディアの人間も肝に銘じるべきスタンスであろう。
形式ばってしまうが、最後に同稿最大のテーマであるジュニア年代で海外遠征を経験する意義を聞くと、陸続きに隣国がない日本人が避けては通れないコンプレックスに話が及んだ。
「海外の選手をリスペクトしすぎちゃった時点でもはや勝負になりません。ただ、若いころに世界のクラブとやるだけでコンプレックスってなくなってくると思うんですよ。『オレたちはチェルシーとやった』。まぁ、0-10で負けてただの記念試合では何の意味もないんですけど、こういう経験をすることによってようやく同じ土俵に立てるんじゃないかな」
くしくもチェルシーのトップチームは現在来日中である。先週19日に対戦した相手が川崎フロンターレではなく、“成人版”FCトリアネーロ町田だったらどのようなゲームを披露しただろうか…と想起し、一人ほくそ笑んでしまった。
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