「イングランドのサポートメンター」が指摘する“日本の指導者”に必要なこととは?
2019年10月16日
育成/環境イングランドFAは、2014年に「コーチメンタープログラム」をスタートした。地域の指導者やチームをしっかりとサポートできる人材「コーチメンター」を育成することが目的である。そのプログラムのインストラクター「サポートメンター」として250名以上の指導者やチームをサポートした実績を持つポール・ニアリー氏に取材する機会を得た。彼は、イングランドFAのコーチインストラクターとしてレベル1・2などで講師も務めている。
現在はイーストアングリア大学のサッカー事業担当長として、サッカーを通した学生の人材育成および大学の付加価値を高めることに尽力しているという。イングランドFAが認めた20名ほどしかいないコーチメンターのインタビューを3回に渡って全公開している。第三弾では、コーチを育成する立場のポールがどうやって指導しているのかに迫る。
取材・文・写真●木之下潤
成長に必要なのは誰からも学ぶ力を持つこと
ポール「例えば、あなたが就職面接に行くと、3人の面接官がいました。あなたはどう感じますか? 緊張したりしますか?」
——そうですね。多少はします。
ポール「『この仕事は絶対に取らなければいけない』という場合はどうでしょうか? 一般的にこういったフォーマルな場所、フォーマルな状況では自分らしさが出にくいです。そういう意味では、コーヒーやビールを飲みながらのほうが、その人の人間性が出ると思います。だから、イングランドFAはそういう場所を選んで面接をしているのだと思います。『人としていいんだ』という人がコーチメンターになっています。
例えば、今このカフェのような場所で自分の考えを話すことができなければメンターなんてできません(笑)。もちろん人間性に加えて、サッカーに対するアイディアを持っていないといけません。それは『白いシャツを着ています』ということと同じように、どんな立場の人間であろうとサッカーに対して自分の思うこと『こういう試合がしたい』といったことはそれぞれが持っていることなので、誰も間違ってはいないんです。
むしろそれを認め合うことによって、どの立場の人とも学び合うことはできますし、教え合うこともできます。仮にサッカーに関して『自分の方がアイディアを持っていなかった』としても話を聞いてみることで『こういうスペシャリティな部分があるのか』と発見があったり、聞いて学ぶ機会を作ることができます。そういうことがサッカーなんじゃないかなと思います。そういうところをお互い学び合う関係がすごく重要です。そういうところをサポートするのがコーチメンターです。
——日本滞在中にいろんな方とお話をされたと思います。私は日本人指導者に足らないのは『意見を言うこと』であったり、『自分がどういうサッカーをするから子どもたちにどう伝えたらいいか』といったり、そういうことが苦手だなと感じています。ポールさんの目から見てどうでしょうか?
ポール「私もあなたと同じような意見を持っています。選手に対しても同じです。要するに、選手もそうならコーチもそうなんです。先日、18歳の選手たちにトレーニングをしたのですが、その時に『選手がトレーニングに関する振り返りをする』ように伝えました。その後、コーチに選手の振り返った内容を聞いてみたのですが、誰も答えなかったそうです。なので、その場で選手に質問をして聞いてみましたが、何もありませんでした。その数時間後、指導者講習会を開きました。そこでもいろいろコミュニケーションをとりながら進めていましたが、ちょっと話をしない指導者が目立ったので方法を変えました。質問して答えさせる形式にしたのですが、どうなったと思いますか?」
——シーン…。
ポール「ヤア、ヤア(笑顔)。コーチが自分の意見を発表する準備ができていないのに、どうやって選手が育っていくのでしょうか。このインタビューの冒頭でもお伝えしましたが、選手が育つにはどういう環境を作るかが大事です。これが日本の現状だと思います。そして、選手を知る手段です。どうやったら選手が自分の意見を表現するか。それを考えることが大切です。次はどうしようか。練習前におもしろいゲームをして、最後にみんなでハイタッチをして、そこから話をさせる。『ハロー』と言わせてみたり。
例えば、おもしろいウォーミングアップとは社会性、つまり『人と人とが関わり合いを持つ』ようなことです。コミュニケーションをしないといけない。ちょっとした罰ゲームを作り、負けたら簡単なダンスを踊ってみんなで笑ったりとか。そういうトレーニングを行って、最後にみんなにフィードバックをお願いすると、すごく意見してくれました。つまり、選手はコーチの鏡なのです」
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