スポーツをする子どもの成長を支える。年齢に合わせた食事のとり方

2020年02月04日

フィジカル/メディカル
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2018年9月から始まった食育連載は、3月いっぱいをもって終了することになりました。実は、新たな方向性を編集・木之下潤が提案し、管理栄養士の川上えり先生と担当ライターの北川和子さんとで話し合い、2月よりスタートを切る予定でしたが、道半ばとなりました。そこで、今月から約2ヶ月間は、新しく始めるはずだったテーマ「スポーツをする子どもの年齢に合った食育」の概要をお届けすることにします。最初に「なぜこれをテーマにしようとしたのか?」の理由を企画考案者である木之下が書き綴り、来週以降は川上先生のインタビューや事例レシピを紹介していきます。

文●木之下潤


成長段階に合わせた食育

 「どうしてスポーツをするジュニア向けの食育企画は、子どもと大きく一括りにされているのか?」

 これは、私がずっと抱いていた疑問です。子どもが口にするものは母乳、離乳食、そこから食べ物や味付けが徐々に増えていきます。それなのに小学生の食事は、「筋肉を増やしたいならタンパク質をとったほうがいい」など、すでに大人と同じものとして曖昧なテーマ設定のものがほとんどです。

年代別トレーニングの教科書
サッカー年代別トレーニングの教科書 著者●中野吉之伴

 小学1年生と6年生を比べると明らかに身長や体重、筋肉のつき方が違うのになぜでしょうか? 私は2016年に「年代別トレーニングの教科書」を企画編集しました。その発端は、著者である中野吉之伴さんが「ドイツのトレーニングは年代に応じた練習します。それを考えるとき、身体的・精神的な特徴を考慮します」と教えてくれたことでした。

▼小学1・2年生の性質・特徴
1.常に体を動かしたい
2.好奇心旺盛
3.まだ集中力があまりない
4.他人と比べたがる
5.まだ目的意識はあまり無い
6.基本的な運動能力の成長期
参考

▼小学3・4年生の性質・特徴 
1.体を動かすことを楽しめる
2.競争への強い関心
3.繊細さが顕著な場合が多い
4.上半身と下半身のバランスが取れてくるが、まだ筋力は弱い
5.テーマへの集中力は見られるが、まだ持続できない
6.大人の示す模範に無批判に従う
参考

▼小学5・6年生の性質・特徴 
1.コーディネーション能力が飛躍的に伸びる
2.心理的な落ち着きが出て集中力と学習意欲が高まる
3.自分からテーマに取り組む
4.批判を受け入れる力が備わってくる
5.戦術への解釈能力ができてくる
参考

 実際に、本の中身は2学年構成でそれぞれの年代の特徴が記されてあり、それをもとにトレーニングの内容がどうデザインされているのかが説明されています。だったら、「スポーツをする小学生として、食育もこういう流れがあっていいのではないか」と思っていました。もちろんサッカーのスキルを身につけるのと違い、厳密に「このタイミングで、この食事をとれば、こういう風な体になる」みたいなことを提示する気持ちはありませんし、忙しいお母さんに「これをもとに食事を考えて」なんてことを強要する気もありません。

 しかし、小学生の間は子どもが成長期であることは間違いなく、「その時期に合うような食事が何か考えられるのではないか」とは想像できずはずです。それで1月の食育連載では「食育」の再定義を行うと同時に、川上先生に「大まかに年代に合った食事ができないか?」と相談し、次のような項目を考案していただきました。

1~2年生/三食のごはんとおやつを食べられるようになること
3~4年生/どういう食べ方をしたらいいのか考えられるようになること
5~6年生/大人の準備期として体が何を必要としているのかを知ること

 例えば、体と体のぶつかり合いは体重が増えるほど筋肉が必要になります。そういう5・6年生には、どのような食べ方をして体づくりをしたらいいのか。また、小学1・2年生の頃はまだ集中力があまりありません。だとすると、集中力が高まるような食べ物をとればいいのではないか。すべての課題を食事で解決できることはないにせよ、年齢に合ったパフォーマンスに関わる部分をもし食事でサポートできるのなら、そういう情報の出し方のほうが具体的でおもしろいのではないかと思うのです。

 そこで、お母さんが「子どもに自信を持って手作りの料理を提供できるサポートができれば」と、2月からの新テーマ「スポーツをする子どもの年齢に合った食育」を考えました。

川上えり先生
管理栄養士の川上えり先生

年齢に合わせた食事をとる際のテーマ

 1~2年生のテーマ「三食のごはんとおやつを食べられるようになること」は、イメージとして2つです。それはきちんと食事を食べられる内臓機能の体力を養うことと、様々な食材の特徴を五感で覚えることです。体づくりと言いながら、学校給食では残す子どもがいて、そもそもいろいろな食材に慣れ親しんでいなかったり、日頃からきちんとした量を食べる練習がなされてなかったり。

 3~4年生のテーマは「どういう食べ方をしたらいいのか考えられるようになること」です。この年代は教育界で「9歳の壁」、「10歳の壁」という言葉があるように、この頃から思考力が大きく育ちます。そのため、例えば算数では文章問題が登場するわけです。それと同じように食事でも「どういう食べ方をしたらいいのか」がわかるようになるとひらめきました。いわゆる「三角食べ」のような話です。

 5~6年生のテーマは「大人の準備期として体が何を必要としているのかを知ること」です。川上先生によると、この頃から管理栄養士的な知見からも大人と同じ量の食事をとることが推奨できるそうです。私も取材中に初めて知ったのですが、食事量が最も多い時期は中学生の頃で14〜16歳くらいに数値的にもグラフがピークを迎えると言います。

 こういう風に話を掘り下げていくと、私も「スポーツをする子どもの体づくり」をきちんと編集できていなかったんだなと反省をしました。幼児期は免疫をつけるためのビタミン類をとることが大切だったり、うま味を覚えるためにダシ汁を効かせた薄味の料理を作ることが重要だったりするそうです。

 取材の中では、こんな内容もありました。

北川 1~2年生のテーマは「三食のごはんとおやつを食べられるようになること」ですが、こんなに食べられるものでしょうか?

川上 年齢によって栄養摂取量の基準値があります。例えば、1年生と6年生では随分違います。

 この栄養摂取量の基準値については文部科学省や厚生労働省のホームページにも記されているとのことです。私はこのことを詳しく知らなかったので、いまさらながら「食事はもっと数値的に示すことが可能なんだな」と感じています。

 来週以降は、小学生への準備期を含めて幼児期からの食育を川上先生のインタビューを通じて紹介していきます。

>>2月の食育連載は「2月11日(火)」に配信予定


【プロフィール】
木之下潤(文筆家/編集者)
1976年生まれ。福岡県出身。様々な媒体で企画からライティングまで幅広く制作を行い、「年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)、「グアルディオラ総論」(ソルメディア)などを編集・執筆。2013年より本格的にジュニアを中心に「スポーツ×教育×心身の成長」について取材研究し、1月からnoteにてジュニアサッカーマガジン「僕の仮説を公開します」をスタート。2019年より女子U-18のクラブカップ戦「XF CUP」(日本クラブユース女子サッカー大会U-18)のメディアディレクター ▼twitternote


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