戦術的要素が増えても「選手目線」は忘れずに! 指導者なら正しく伝えたい“プレーの判断軸”とは。 ドイツ育成メソッドに学ぶ「年代別トレーニング」【小学5・6年生編】
2016年07月29日
サッカー練習メニュー連載第三回目に続き、ドイツの年代別トレーニングを参考に、ジュニア年代を幼稚園、小学1・2年生、小学3・4年生、小学5・6年生に区分けし、その年代に応じたトレーニングの考え方と実例を紹介いたします。連載最終回は「小学5・6年生」です。習得した技術を生かす個人戦術を頭の中でしっかり整理させるトレーニングも取り上げます。
(構成●木之下潤 写真●Getty Images)
前回同様、トレーニングを考案する上で重要なことは、この年代の身体的・精神的な性質・特徴を把握しておくことです。
▼小学5・6年生の性質・特徴
1.コーディネーション能力が飛躍的に伸びる
2.心理的な落ち着きが出て集中力と学習意欲が高まる
3.自分からテーマに取り組む
4.批判を受け入れる力が備わってくる
5.戦術への解釈能力ができてくる
ジュニア年代の最終章を迎える小学5・6年生は、攻守両面における個人戦術の習得がメインテーマになります。よく個人戦術といえば、1対1の局面打開とだけ捉えがちですが、そうではありません。サッカーは11対11でゴールを奪い合うスポーツなので、1対1の局面打開は選択肢の一つです。
もちろん、純粋に1対1で勝負を仕掛ける場面もあります。しかし、それ以外は味方や敵などの選択肢を自分の中に持ちながらプレーするのがサッカーです。だから、この年代では、同時にグループ戦術にも取り掛かり、複数の選択肢がある中で「いつ」「どこで」「どのように」1対1の戦いを挑み、それを制することができるのかを学ぶことが重要です。
コーディネーション能力が飛躍的に伸びる「ゴールデンエイジ」にあたる小学5・6年生は、心理的な落ち着きが出て学習意欲が高まる特徴があります。さらに、批判を受け入れる力が備わってくるため、これまで習得した技術を「試合でどう生かしたらいいのか」という戦術的観点でサッカーを考えさせる訓練ができるようになります。だから、技術、戦術、フィジカルなどの要素をより包括的に組み込んだトレーニングを行うことが大切です。
単純に1対1といっても、サイド、中央、相手との距離、ボールを持っている場合と持っていない場合など様々な状況が存在します。だから、味方や敵を加えたり、エリアを設定したり、1対1のトレーニングでも選択肢を設けて相手との駆け引きがある中で「攻守に仕掛ける1対1」を習得することが大事です。
そこで、指導者が特に意識して伝えるべきことは「何が許されるミス」で「何が許されないミス」なのかというプレーの判断基準です。ここにズレが生じると、子どもたちはプレーの判断軸を見失います。判断基準が明確になれば、自分からテーマに取り組む姿勢があるこの年代の選手たちは、加速度的に成長できる可能性を秘めています。
また、その判断基準の軸をもって頭の中でたくさんのプレーイメージをすることができるでしょう。ミスも指摘するのではなく、問いかけながら成功イメージへと導けば驚くようなプレーを見せてくれることもあります。成功の陰にたくさんの失敗があることを十分に理解し、子どもたちに成功も失敗もたくさんの経験をさせ、頭の中にたくさんのプレーイメージを蓄積させてあげましょう。
大切なことは、今できることではなく、「いつかできる」ように導くことです。戦術的な要素の割合が増えると、大人は「なぜできないんだ」と子どもと同じ目線に立つことを忘れがちです。ジュニア年代の総仕上げだからこそ、選手目線に立って指導し、中学生年代でよりサッカーがプレーできる選手を育んでいきましょう。
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