好き嫌いなく食事をとるために。小さい頃から“色々な食材に出会うこと”が大切
2020年02月11日
フィジカル/メディカル2月から約2ヶ月間は、「スポーツをする子どもの年齢に合った食育」の概要をお届けします。1月に「食育とは?」を食育連載担当者で話した際、ジュニア年代の食育は次のようなテーマ設定になりました。今週からはこのテーマに沿い、各カテゴリーの食育でどんなことが大切で、どんな食事をしたらいいのかをインタビュー形式で紹介していきます。また週によっては、食事例としてレシピも組み合わせていきますのでお楽しみに!
▼小学校1・2年生
三食のごはんとおやつを食べられるようになる
▼小学校3・4年生
どんな食べ方をしたらいいかを考えられるようになる
▼小学校5・6年生
大人の準備期として体が何を必要としているのかを知る
監修●川上えり/構成●北川和子
管理栄養士の川上えり先生
子どもが様々な食べ物に出会うことで食育が始まる
――年代に合った食育を考える上で大切なことは、きっと子どもの頃にどうやって食事を覚えていったのかを振り返ってみることからなのかなと思っています。
川上 そもそも赤ちゃんのときには、あらゆる感覚を使ってごはんを食べています。味覚、視覚、嗅覚だけでなく、例えば手づかみ食べをして触覚もフル活用していますよね。そんな体験や経験を重ねていくことで徐々に食べられるものが増えていくものだと考えています 。
――個人的には、離乳食のときってお母さんたちはものすごく気を使って食べ物を選んだり調理したりしていると思うのですが 、その「ものすごく気を使う」ステージはいつの間にか終わっています。その目安は、いつなんでしょうか? つまり、何をキッカケに「いろんなものを食べさせよう」って切り替えるようになるのか? ここを知りたいです。
川上 離乳期のお母さんたちは、アレルギーの有無を確かめるために「新しい食品は午前中に、食べ慣れた食品は午後にあげる」という指導を受けると思います。私は保育園での栄養士経験がありますが、0~1歳児クラスの子どもには、その子が食べた経験のあるものから献立づくりをするのが一般的です。月齢ごとに「新しく増やす食べもの」がだいたい決まっています。
――きっと子どもは苦いとか甘いとか、見た目の色とかを本人が感じて、少しずつ好き嫌いを分けていっているのかな、と。お母さんやお父さんがアレルギーに配慮しながら安全性を念頭に「楽しく食べる」ことと「しっかり管理する」ことを両立させるには、どうしたらいいのでしょうか? 話を聞いていると、そのバランスは難しいように感じます。
川上 3歳くらいになれば、アレルギーの有無がだいたいわかってきます。その頃からたいていの物が食べられるようになっていきます。そのくらいの年齢になると、すでに子どもの「〇〇が食べたい」という意志がはっきりしてきますから、お母さんやお父さんの食育としては「いろんなものが食べられるようになる」ために上手なチャレンジをさせていく時期だと思います。
――なるほど。その頃になると、幼稚園や保育園にいくことで友達との関わりが増えてきます。そうなると、おやつやジュースといった「白砂糖」が入っているものの誘惑が出てきます。
川上 そういった食材を完全にコントロールするのは難しいので、気をつけるべきことは量だと思います。でも、自分だったら子どもに白い砂糖がたっぷり入った食材はできるだけ与えたくないなと思います。
――友達や祖父母など、それぞれの人間関係の中で「甘いお菓子はどうしても避けられない」ときがありますが、やっぱり川上さんも「与えたくない」と思うものなんですね。
川上 アメやジュースの味を、子どもは1回で覚える場合もありますから。できるだけ「出会いの瞬間」を遅らせたいとは思いますけど、難しいですよね。
――その「蜜の味」を1回で覚えてしまうのは避けられない。だとすると、大事なことは身近なお母さんやお父さんが「お菓子に対してどのように意識を変えるのか?」ですよね。
川上 そうですね。意識はとても大事なことです。
――例えば、ある街クラブでは試合が終わると、それぞれの子どもがお菓子の袋を開けてみんなで交換をする習慣があったりします。最初にそれを見たとき、「なんだ、この習慣は」と思ったのですが、角度を変えて見てみると「ひょっとしたら、お菓子がキッカケで交わりの薄い子ども同士がコミュニケーションをとるのに役立つのかもしれない」と思いました。
例えば、「みんなで食べる楽しみのお菓子はOK。でも、日頃は控えて体にいいものを食べる」みたいに考えて、子どもに食事の価値観をきちんと提示できたらいいですよね。やはり「食事を楽しむ」ことは、人とのコミュニケーションが前提にありますから。人間関係の兼ね合いもありますし。大切なことは「食事ってこういうものだよね」ということをお母さんやお父さんが子どもに伝えられることだと考えています。
1月食育連載最終回記事
免疫力を高めるために必要な栄養素
1月の食育座談会の最終回で、1~2年生は「三食のごはんとおやつを食べられるようになること」をテーマにしました。この年齢の子どもはどのくらいの量が目安にすればいいのでしょうか?
川上 運動量も、食べられる量も、個人差があります。他にも、1年生の4月生まれの子と3月生まれの子では体つきが違うように食べる量も違ってきます。例えば、農林水産省の食育ページでは、おやつの目安が200kcal程度と明記されています。「おやつは200kcal程度で、夕飯に影響しないよう楽しむ程度に」と。スポーツに励む子向けには、「おやつもお菓子ばかりに目を向けず、足りない栄養を補うように、果物や牛乳・乳製品を積極的にとりましょう」とも書かれてあります。
▼参考=農林水産省「子どもの食育(おやつの工夫)」
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomo_navi/oneday/idea1.html
――1~2年の頃は、そもそも三度の食事の量はどのくらいを目安にしたらいいのか、また栄養配分の目安はどんなことを意識しながら子どもに応じた量を設定するといいのですか? また、不足しやすい栄養素はありますか?
川上 推定エネルギー必要量は「1〜2歳=950〜1,050kcal」、「3〜4歳=1,250〜1,400kcal」、「6〜7歳=1,450〜1,650kcal」、「8〜9歳=1,800〜2,000kcal」、「10〜11歳=2,150〜2,550kcal」となっています。エネルギー量の分散比は「朝3:昼3:夜4」です。例えば、1〜2年(6〜7歳)の場合は次のような例です。
朝=昆布おにぎり(100g)/ダシ巻き卵/具だくさんの味噌汁=約420kcal
昼=ごはん(150g)/ロールキャベツ/コンソメスープ/サラダ=約470kcal
夕=ごはん(150g)/鮭のホイル焼き/おから炒り煮/ほうれん草のお浸し/具だくさんの味噌汁=約650kcal
▼参考=厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/11/h1122-2a.html
基本的に、これから体がどんどん成長していく時期なので、タンパク質はしっかりとりたいです。季節的な話をすると、冬時期は体調を崩しやすいのでビタミン類はきちんと取りたいです。ビタミンA、C、Eを総称して「エース」と呼ぶのですが、これらは免疫力を高めるビタミン類だと言われています。特に小学校低学年の時期は「免疫力を高める」ためにも積極的に口にしてもらいたいですね。
――免疫力を高めることは大事ですよね。例えば、「味の教育」があるのかはわかりませんが、味付けで気をつけることはありますか?
川上 ダシで「うま味」を効かせたものが理想的です。うま味を効かせることで、塩分が少なめでも満足感を得ることができます。
――へぇ、そうなんですね。ちなみに、1日の塩分の摂取量は、大人より少ないのでしょうか?
川上 子どものほうが少ないです。厚生労働省のホームページ「日本人の食事摂取基準の概要」(2015年版)では、ナトリウムの食塩相当量が、6~7歳で5.0g未満、8~9歳で5.5g未満、10~11歳で6.5g未満、成人は8.0g未満となっています。
▼参考=厚生労働省HP「日本人の食事摂取基準の概要」(2015年版)
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
――つまり、親子で同じカップラーメンを食べたら、子どものほうは塩分過剰になってしまうわけですね。
川上 ええ。しかも塩分量については、昔より基準が引き下げられて厳格化しています。
――だとしたら、仮に子どもがラーメンのスープを飲み干したら、それだけで1日の摂取量を満たしてしまうくらいですね。でも、ラーメンって私たちにとってものすごく身近なメニューです。例えば、1日食べたらその後は数日食べないみたいな調整も考え方としては有りですか?
川上 そうですね。食の楽しみは大切なことですから。あとはスープを飲み干さない。トッピングにモヤシやホウレン草、コーンなどカリウムや食物繊維などの栄養素をプラスすると良いですね。
――さきほど成長期には「タンパク質が大切」と言われました。豚、鶏、牛、魚などのタンパク源がありますが、バランスよくとったほうがいいのでしょうか? 豚肉ばかり、鶏肉ばかりという家庭も中にはあるかもしれません。小さい頃からの食習慣は、大人になってからの味覚に大きく影響する気がします。
川上 タンパク質には豚、鶏、牛、魚、卵、牛乳などの動物性と豆腐、納豆、豆乳などの大豆製品、キヌワなどの植物性があります。これを1食あたり1:1の比率で摂ることが望ましいです。また、小さい頃からいろんな食材の味を経験しておきたいところです。1~2年生の頃は、まだ「好き嫌いせずに食べようね」という親の指導も素直に聞いてくれると思います。でも、5~6年生になってからの「好き嫌いの克服」って難しいと思うんですよ。すでに子どもの中で「好き嫌いの仕分け」も終わっている状態ですし。だから、早い段階でのアプローチが重要です。
来週は、小学校低学年の特性と食事について深掘りしていく予定です。お楽しみに!
>>2月の食育連載第3弾は「2月18日(火)」に配信予定
【プロフィール】
川上えり(管理栄養士)
海外プロサッカー選手の栄養アドバイスや、FCジュニオールの栄養アドバイザー。海外・国内遠征・合宿帯同や、アスリート向けレシピ制作、子育てママ向けのコラム執筆などで活動中。▼Instagram/Twitter
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