「ドリブルしろ!」「パスを出せ!」では伝わらない。選手を最適なプレーに導く“言葉の細分化”

2020年03月13日

育成/環境

「ドリブルしろ!」「パスを出せ!」という指示だけでは、こども達は最適なプレーの判断がしづらいのではないでしょうか。ドリブルやパスはサッカーをしていれば誰もが理解できる言葉ですが、試合中では何のためのドリブルなのかパスなのかによって、ドリブルやパスという言葉よりも適切な言葉があると思います。LOBØS FOOTBALL CLUBの久保田大介氏の連載コラム、今回は、ドリブル、パスなど普段何気なく使っているサッカー用語を細分化していきます。

文●久保田大介(LOBØS FOOTBALL CLUB代表)写真●ジュニサカ編集部


【前回】「首を振れ!」は何のため? 本当に“観るべき”ものが置き去りにされていないか


全日本少年サッカー大会

「ドリブル」「パス」にも種類がある

 指導の現場で選手達に何かを伝えたい時、それを一つの「名詞」だけで言ってしまうと、結局何も伝わらない… これ、意外によくあるのではないでしょうか。

 「ドリブル!」

 どんなドリブルでしょうか。ドリブルだけでもその種類は数多くあるし、状況に応じて使い方も変えなければいけないはずです。

 「早く出せ」

 なぜ、誰に、どのように⋯

 全く伝わらないですよね。

 このコラムの初回、大きなテーマの一つとして「技術の種類を、日本語に置き換えて細分化すること」とし、ドリブルとパスについて以下のように書きました。

 例えばドリブルだけでも、その種類は数多くあるじゃないですか。ゲームの状況やその場所に応じて使うドリブルは変わってくるのに、ただ「ドリブルしよう」と言っても、子ども達は「最適な技術の選択」をできないと思います。

 例えば僕が普段の指導現場で使う言葉だけでも、ドリブルで言えば「抜く」「運ぶ」「逃げる」「ズラす」「剥がす」「引きつける」「引きずる」「誘う」「逆走」これくらいあるわけです。

 それぞれに種類は違い、意味も違う。状況によって必要になるドリブルは変わってくるし、それぞれの子どもが自らのプレーに狙いを持ち、意味を理解しながら技術を使うためにも、こうした「技術の種類を、言葉によって細分化する」ことは、コーチの大事な役目だとも思ってます。

 次にパス。

 「早くパス出せ」
 
 これじゃ何も伝わりません。まず「出す」ってなんやねんって話ですよね。

 自分は、パスに関しては「通す」「渡す」「預ける」「つける」「誘う」「捨てる」「置く」くらいに言い換えて使っています。

 「通す」ならば相手の間を通す勝負のスルーパス、みたいなイメージじゃないですか。でも「渡す」だと通すパスと同じ強さにはならないし、通すパスは走る味方に出すけれど、渡すパスは、止まっている味方の足下、みたいなイメージ。パスの強さも、違ってくる。

 「預ける」ということは「返してもらう」前提があるということが言外に含まれるから、「預けろ」と言うだけで「もう一度受ける」ことを、選手は自然にイメージできるようになる。

 コロナウイルスの影響でチームの活動ができず、家でサッカーの動画を観てるという小学生も多いのではないでしょうか。「あ、今のイニエスタは相手をあえて引きつけてたね」とか「今のは、一旦預けたんだね」など、一流選手のプレーをいつもとは違った見方で観てみるのも、一つの楽しみ方だと思います。

 なので今回はもう少しだけ、ドリブル、パス、そしてファーストタッチについても、日本語で細分化してみたいと思います。

全日本少年サッカー大会

「状況」「目的」を整理して細分化する

 

 まず、ドリブルを日本語に細分化してみます。

 

抜く
・文字通り、対峙した相手を抜き去る。個人で数的優位をつくり出せます。

運ぶ
・空いているスペースを埋めるように、ボールを前進させる。センターバックの選手がこれで相手FWのラインを超えられると、とても効果的ですね。

ズラす
・パスコースをつくるために、ボールの位置をズラす。相手の重心を動かせればなお効果的ですね。これをドリブルと言うのはちょっと違うかもしれませんが。

引きつける
・スペースをつくり出すために、意図した方向にあえて相手を連れて行く。できたスペースに味方が入り込めば、スイッチやミラーパスなどで相手を崩すことができます。

引きずる
・運ぶ、と 引きつける、のコラボレーション。相手を引きずりながらボールを運ぶ。

逃げる
・相手のプレッシャーから逃げる。相手がついてくれば、引きつけていることにもなりますね。

逆走
・これはうちのクラブでよく使う呼び方ですが、わざと後ろに進んで相手を引きつけるやり方です。
簡単にパスで後ろに下げると相手はついてこないケースがほとんどですが、ドリブルで後ろに下がると、相手は必ずついてきます。そうすると、そこにはスペースができますよね。それが狙いです。

 逆走車がいると警察(相手)は必死に追いかけてきて、周りの車(これも相手)は唖然としてフリーズする⋯

 子ども達には、よくそう言って説明します笑

 

 次に、パスを日本語に細分化してみましょう。

 

通す
・相手と相手の間を通すパス。走っている味方や、相手のギャップにいる味方の足下へも。通せたということは、少なくとも相手2人を置き去りにしたことになりますね。

預ける
・味方に一旦預ける。預けるということは「返してもらう」のが前提なので、この言葉だけで、ワンツーを受けたり、もう少し先で返してもらうための次の動きを、選手達にイメージさせ促すことができるのではないでしょうか。

渡す
・出す、でもない、もちろん蹴る、でもない。「通す」よりも、優しく味方に渡すような、強弱の調節。

つける
・これ、使う人結構多いですよね。渡す、預けると似てるかもしれませんが、FWなどにボールを渡し(預け)そこをポイントにしていくイメージでしょうか。自分は使わないフレーズなので、正直なところ、よく分かりません 笑

 これらの他にも、誘う、捨てる、置く、散らす、替える、走らせる⋯などでしょうか。他にもあれば、ぜひ教えて下さい。

 

 次はファーストタッチです。僕は「トラップ」という用語は全てファーストタッチという言葉に含まれると思っているので、ここではあえてファーストタッチとします。ダイレクトパスやダイレクトシュートもファーストタッチといえばファーストタッチですが、文脈上、今回はあえて取り上げないこととします。

 

止める(止まる)
・文字通りボールを止めることですが、止めよう、触ろうという意識が強すぎるとミスを誘発するので、僕はあえて止めるではなく「(自分が)止まる」と言ってます。自分が良い場所に立って止まり、ボールに自然に合わせるイメージですかね。結果的に、このほうが子ども達にはよく伝わります。
あえて相手を引きつける意図のために、わざとわかりやすく足下で止める、というのもうちではよくやります。

収める
・止めると似ているイメージですが、収めるということは、相手よりも確実に先に触れる、相手よりも先に動き出せる場所にボールと一緒にいられる状態、だと思います。「あぁ、あの選手しっかりボール収めたわ」みたいな。

持ち出す
・ファーストタッチで、ボールと一緒にスペースへ動き出す。「コントロールオリエンタード!」と叫ぶよりも楽だし、子ども達にも伝わりやすいのではないでしょうか。

外す
・止める、収める、持ち出す、のコラボレーションで、触る前の駆け引きで相手の逆をつき、触った瞬間にはもう相手を外せてフリーになれている状態ですね。ファーストタッチの理想はこの「外す」だと思ってます。

さわらない
・一番ミスらないのがこれです。触るからミスるのであって、触らないでもいられるならば、できるだけ触らないほうがいい。
ギリギリまで触らず、相手(との間合い)を見極める。触るフリして相手を引きつけ、流して相手を外す。後ろにスペースがあるのなら、触らずにそのままターンする⋯等。

 

 おまけ …複合技の『剥がす』

 

 張り付いているものをベロっと剥がすイメージですから、相手を引きつけておいてスイッチ、あえてボールを止めて相手を引き寄せて、できたそのスペースをつく、相手の重心の逆をついてフリーになった味方にボールを渡す、相手と同じラインで受けて、ファーストタッチで前に出る、等⋯これら全て「剥がす」で表現できるのではないでしょうか。もちろん、もっとあると思うけど。

 「味方と協力して、相手を剥がしてごらん」

 この言葉だけで、感性豊かな子ども達ならば、いろんな方法を試して「剥がす」を表現してくれると思います。
 
 試合の場でも「剥がせ!」と監督や味方から指示が出た時、そこに関わる数人がコラボレーションして相手を剥がし、崩してゆくなんて、最高じゃないですか。

 チームで言葉を共有することこそが、戦術の入口のような気がします。

 ドリブル
 パス
 ファーストタッチ

 という名詞ではなくて、それを表す動詞に替えれば。そこには必ず、それを選んだプレーの意図がある。

 今、中盤のスペースが空いているから「運ぼう」

 味方が裏を取った。ならば「通そう」

 相手が寄せてきた。ならばワンツーで相手を剥がせる、だから「預けよう」

 相手がまた寄せてきた。今度は預けるフリして「外そう」

 このように、それぞれのプレー用語を日本語に細分化してみるとすると、そこには、判断する習慣がより必須になってきます。

 なぜ今それを実行するのかという「状況に伴った判断力」や、視線、そして次に何が起こせるかという「少し先」を見る頭の中も、プレーによってそれぞれ違ってきます。そしてそれをいつやるかといったタイミングを図り操る判断力や個人戦術も向上するし、パスは種類によって強さも蹴り方も変わってくるので、技術練習という要素も、多く含まれるはずです。

 状況に応じた判断力とともに技術を使い分けるわけですから、判断力と技術どっちを先に教えるか⋯という鶏と卵ではなくて、一緒に向上させることができる。そのツールとして、日本語はとても使いやすくわかりやすい気がします。

 最後に個人的な見解ですが、、

 究極の理想は、ドリブル、パスといった「名詞用語」を一切使わない指導だと、僕は思っています。


 

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