「首を振れ!」は何のため? 本当に“観るべき”ものが置き去りにされていないか

2020年01月30日

育成/環境

指導者の言葉次第で、選手たちは“自分で考えながらプレーをする”ことができるでしょう。ただただ指示を鵜呑みにするだけで、自分でプレーを選択していなければ、動かされていると同じです。LOBØS FOOTBALL CLUBの久保田大介氏の連載コラム、今回は普段、指導者が何気なく使っている言葉がほんとうに選手に伝わっているのか、選手の能力を引き出すコーチングについて突き詰めていきます。

文●久保田大介(LOBØS FOOTBALL CLUB代表)写真●Getty Images


【前回】サッカーに必要なのは「速さ」ではなく「早さ」? 言葉の使い方ひとつで指導が変わる


シャビ・エルナンデス

「首を振れ」と指示をするだけでは意味がない

 普段、コーチの方が何気なく使う言葉でも、それが選手にしっかり伝わっているかどうか、ただ言の葉を発しているだけで、その言葉の本当の目的や真意が伝わっていないんじゃないか、というケースを多々見かけます。

 例えば【 首を振る 】という言葉。

 「首振れ!」
 「首振り〜」
 
 普段の練習や試合の現場で、とてもよく聞こえる声ですよね。

 でも首を振るのは決して目的ではなくて、あくまでも手段。では何の手段かといえば、自分の後方や左右、つまり「目が付いていない方向」で何が起きているか、どうなっているかを確認し、自分のプレーを決めるために「首を振って」見るわけです。

 でも、あまりにもそれを言われすぎて、その首振りが無意識の習慣での首振りになり、首を振っているだけで実は何も見れていない、何も認識していない、つまり無意識のあまり、肝心の「観る、知る」ことができていない。そんな選手が多いように感じます。まるで首を振るという行為が目的になっているかのような。

 よく見る「2人組で1人が投げて1人がインサイドで返す」みたいな基本的なアップでも、ほとんど機械のように首だけ振りながらそれを行っている選手を多く見かけますが、首を振るだけでなく後方で何が起きていて誰がいて、などの情報をしっかり認識しながらやらせないと、まるで意味がないですよね。

 「シャビは試合中に800回首を振るらしいぞ」これ、昔よく聞きました。(笑)

 800回が正しいかは別として、その首振りの時に自身の後方がどうなっているか、シャビはしっかりと「認識」できていたからこそ、難しいことをいとも簡単に見えるようにプレーしていたわけです。

 人は、意識して観ようとしないと観れない。僕はそう思います。だからこそ「首振り」を無意識レベルの習慣にすると「首を振る行為」だけが習慣化して、その状況で観るべきもの、認識すべきものを観れなくなる。実際に観れていない、認識できていない選手をとても多く見かけます。

 だから「首振れ」という言葉だけを伝えるのは危険。

 ちゃんと「首を振って、何を観るのか」この状況あるいはこの場所では「何を観るべきなのか」を一緒に伝えてこそ、首振りという行為は初めて有効になるわけで。

 「首を振る」は体を動かす行為。「何を観る、何を認識する、結果、どう決断する」は頭の中(時には心)のこと。インテリジェンスの領域。

 このインテリジェンスの部分こそを習慣化すべき。それが自然になるように、コーチは言葉のチョイスに気をつけながら、トレーニングの中で伝えていくべきではないでしょうか。

 だから「首を振れ」ではなく「◯◯を観ろ」もしくはもっと具体的に「◯◯を見つけろ」のほうが、結果的に選手は必要に応じて自然に首を振って、本当に「◯◯」を観よう、見つけようとするのではないでしょうか。

 そうすれば次第に自身のポジショニングや体の向きなどを工夫して、首を振る必要がない状態で視野を広く持つ選手が出てくるかもしれない。
 
 指導者が放つ言葉のチョイスやセンスによって、選手のインテリジェンスや個性は存分に引き出し、磨いていける。

 「◯◯を観ろ」「◯◯を見つけろ」
 
 この◯◯の中に何が入るか。状況、場所によって当然変わってくる。
そこに指導者のインテリジェンス、力量、センスが問われるのだと思います。

 今回は一つの例として「首を振る」という言葉を取り上げましたが、他にも、言葉や用語だけが独り歩きしてしまい、本来の意味や真意が選手に伝わっていない、効果的にコーチングに生かし切れていない、という言葉はたくさんあるのではないでしょうか。

 これを読んだ皆さんがふと、考えてみるキッカケになれば嬉しいです。


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