コロナ後のジュニアサッカー。私たちはどう向き合うか

2020年06月10日

メンタル/教育

数ヶ月におよぶ緊急事態宣言が明け、少しづつ町に活気が戻りはじめています。サッカークラブも活動再開というチームが増えているのではないでしょうか。もちろん感染症が終息したわけではないので、新しい生活様式のなかでの活動になるかと思います。しかし、活動再開後に潜む危険について、感染症以外のリスクも忘れてはなりません。サッカーコーチ・久保田大介氏の連載コラム、今回は「コロナ後のジュニアサッカー」について久保田氏が考えていきます。

文●久保田大介 写真●ジュニサカ編集部


【前回】ほんの些細な“言葉の言い換え”で、子どもたちに判断力と自信がつく?指導者が気をつけたい言葉の選択


スポーツ少年団 イメージ

コロナ禍で見えてきたもの

 新型コロナウィルス感染拡大防止対策のため、2月末から続いた休校措置、そして4月からの緊急事態宣言。全国のサッカークラブも、ほぼ99%はこの間ずっと活動を休止し続けていたことでしょう。

 しかし緊急事態宣言も明け、学校も順次再開⋯となり、おそらくもう活動再開しているクラブもあれば、6月から本格再開!となったクラブも多いと思います。

 例年ならばこの時期はもう、4月からリーグ戦や公式戦も始まり、ゴールデンウィークには遠征に出かけて大会に参加して、そしてまた週末のたびに大会や試合が続き⋯という日常だったはず。

 でも今年は、それが全て消えた。試合どころか、日々の練習もできなかった。

 この間、それぞれのクラブで工夫して動画配信をしたり、課題や宿題を出したり、、その他さまざまな取り組みをしてきたクラブも多いと思うけれど、ようやく本当に活動が再開できる!サッカーができる!となった時に、これまでの反動が一気に来てしまうことを、僕はとても危惧しています。

 5月下旬からさっそく活動を再開したという3種クラブのコーチの方から聞いた話ですが、再開の初日、いきなりケガをしてしまった子が数人いたそうです。

 やはり動いていなかったブランク、特に頭と体のギャップは相当に大きいと思うし、いきなり全開で再開だぜ!とはせず、JFAやスポーツ庁も指針を出したようにまずはゆっくり、そしてしっかりと体のケアから始め、頭と心、そして体とのギャップを徐々になくしていく作業から、慎重に始めないといけないですよね。

 子どもたちのため!と口では言いつつ、実は自分がコーチをしたいだけ、週末の自分の居場所が欲しいだけ⋯というコーチも、少なからずいらっしゃいます。そういう方の熱さに乗せられて「いきなり練習試合!」なんて流れになるのだけは、本当にやめてほしいと思うのです。

「サッカーをしたい」と子どもたちが思える環境とは

 コロナの第一波(この言い方が正しいかはわからないけれど)が過ぎて全国でサッカーが再開された後、おそらく、育成年代のサッカークラブは大きく4つに分かれるのではないでしょうか。

① 再開後、いきなりこれまで通りのペースに戻して活動するクラブ
② 再開後、いきなりではなく、徐々にペースを戻しながら活動するクラブ
③ 「休んでた分を取り戻さなければ!」と、これまでよりもさらにタイトなスケジュールで活動するクラブ
④ 「休むことも良いもんだね」と気づき、これまでよりもゆったりとしたペースで活動をしていくよう、方針転換するクラブ

 一番多いのはやはり②ですかね。多い順で言うと、②①③④かな⋯。でも意外と「③」を選ぶクラブが多い気がするのは、僕の考え過ぎでしょうか。これ、杞憂に終わればいいけれど。

 この活動休止期間中、僕はうちのクラブの選手に対してほとんどコンタクトを取りませんでした。休止したての頃はちょいちょい動画を送るようなことはしていたけれど、ほぼそれだけ。

 もし自分が選手だったら⋯と考えたら、学校も休み、サッカーも休みとなった時に、所属クラブのコーチから定期的に動画が送られてきたり課題や宿題を出されたりしたら、自分なら絶対に嫌だなぁ、と思って。

 せっかくできたこの時間。コロナをきっかけに社会や世界のことをたくさん勉強したり、たくさん本を読んだり、これまで塾やサッカー漬けで時間がなくて出来なかった「実はやってみたかったこと」に挑戦してみたりしたほうが、子ども達にとってはよっぽど有意義なんじゃないかと思ったので、クラブの子達に対して僕はほぼノータッチでした。

 今回のコロナ禍は、僕らがふと立ち止まる時間をくれました。僕ら大人だけでなく選手たちも、学校もサッカーもなくなり突然できた多くの時間をめいっぱい利用して、これまで見ることのできなかったたくさんの世界、たくさんの本、たくさんの自由な時間を、存分に満喫してほしいと思ったんです。

 それに本当にサッカーしたければ、クラブ側から何か提供されなくても勝手に公園行ってボール蹴るだろうし、そういう子の方が絶対にうまくなりますよね。

 誰にも制限されず時間も内容も自分で決めて、頭の中でいろんなことを想像(妄想)しながら自由にサッカーしてる時間て、子ども達にたくさんの発想とイメージを広げてくれるものだと思います。

 この活動休止期間に監督やコーチに縛られず、そして自粛警察の目をかいくぐって自由にサッカーをしていた子たちの中から、ひょっとしたら、未来のメッシやクリロナが日本中でたくさん生まれているかもしれませんよね。

 活動再開となり、集まった子ども達を見た時に「あれ、確実に体が大きくなってるな」とか「何かゆとりが出てきたな」とか

「あれ、こいつ前に出来なかったことが出来てる」とか「うわ、こんなに化けてる!」とか

 そんなことを感じ取ったたくさんの監督やコーチの方々が「これはきっと休んでた効果だな。休むこと、余裕を持つことって大事なんだな」と気づき、活動再開しても「もうちょっとノンビリいこうや」となってくれたら最高だなぁと、僕は願ってやみません。

 日本の子どもたちは、今まで間違いなく「忙しすぎた」んです。なので、冒頭で記した活動再開タイプの順番、あれ ④ を選ぶクラブが多くなってくれればいいなぁ。

 また、言い方に語弊があるかもしれないけれど、サッカーだけが人生じゃない。この時間で別のことに興味が湧いて、例えサッカーを辞める子がいたとしても、それはとても素敵なことなんじゃないかなと、僕は思います。

 未来のメッシやクリロナだけでなく、サッカーから転向した「未来のエジソンやライト兄弟、スティーブ・ジョブズ」が生まれていたとしたら、それこそもう最高じゃないですか。

今年は「公式戦」を中止にしてみてはどうか

 最後に。これは僕からの提案なのですが、コロナの影響で、今年度は全国でたくさんのスケジュールが既に大幅に崩されていますよね。なのでそれを逆手にとって、活動を再開しても、もう今年度は全ての「公式戦」と呼ばれるものを中止にしてはどうでしょうか。せめて、小中学生だけでも。

 全国大会につながるものから、市大会、区大会?のような、大人がなぜか燃えてしまう「公式戦」と呼ばれるものを、今年度は全てなくしませんか。

 やっても地域の交流戦かフレンドリーな大会のみ。そうすればメンバーを絞る必要もなく全員出場させられるし(ですよね?)監督やコーチ、保護者の皆さんも勝利至上主義から解放されますよね(ですよね?)

 そんな自由でゆっくりで牧歌的な試合で、結果に縛られず、大人に縛られず、たくさんの出場機会をたくさんの子どもたちが得ることができたら。

 数年後、発想豊かでファンタジーに溢れる選手がゴロゴロ出てきそうな気がしませんか? これまで、立ち止まって考える余裕のなかった大人達も、少し考えを改めるきっかけになるかもしれません。

 クラブや指導者の数だけ様々な考えがあると思いますが、僕はこれ、本気で願っています。 どうか皆さんも、考えてみて頂けたら嬉しいです。


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