予測不能な攻撃を生み出すDFラインからの組み立て。CBに求められるパス意識とは
2020年12月17日
戦術/スキル2019-2020シーズン、プレミアリーグ史上最速となる優勝を果たしたリヴァプール。そんな昨シーズンの王者を率いているのはユルゲン・クロップだ。かつては、激しいプレッシングからのボール奪取が指揮官の代名詞であったが、現在ではボールを保持してからいかに相手の脅威となる攻撃を仕掛けられるかという戦術にも注目しなければならない。そして、予測不能な攻撃を生み出している要因の一つとして、最終ラインからの攻撃の組み立てがあげられる。ボールを持ったCBは何を意識してゲームの組み立てに参加するべきなのだろうか、12月14日発売となった『組織的カオスフットボール教典』から一部抜粋して紹介する。
文●リー・スコット 写真●Getty Images

攻撃のアングルを変える多彩なパス
現代のフットボールではCBがボールを持つ時間が増加している。従ってこのポジションの選手には、何らかのスペースが生まれた時にはそこを利用することができるような多彩なパスの能力を持つことが求められる。後方のエリアでボールを持った守備的な選手の最初の狙いとなるのは前方へのパスを送って相手のラインを突破することではあるが、それがいつも可能であるとは限らない。
リヴァプールがボールを持った際のパフォーマンスにおいて特に印象的な特徴のひとつは、そこからいつどのように攻撃を仕掛けていくかという予測の難しさにある。これは、フットボール界屈指のユーティリティ性を備えた攻撃ユニットを擁しているからこそ可能となっている部分もある。サディオ・マネもロベルト・フィルミーノもサラーも、強いプレッシャーを受ける状況下でもさまざまな形で難なくボールを受けて処理することができる。
図9ではその一例を示している。今回もファン・ダイクがボールを持ち、リヴァプールは[4-3-3]の陣形、相手チームは[4-1-4-1]の陣形を取っている。システム自体は重要ではないが、システムによって決まるスペースの埋め方は重要であることを見落としてはならない。例えば[4-1-4-1]は、ボールを持っている際には両サイドのMFがポジションを押し上げてFWをサポートすることで[4-3-3]へと移行する。だが、守備フェーズにおいてはそのサイドの選手2人が中盤のラインまで位置を下げ、より効果的な守備ブロックを形成する。

この例において、リヴァプールが前方へ展開できるスペースはほとんどないが、ピッチ上の反対側 ではサラーが右サイドへ大きく開き、アイソレーションの形で相手の守備選手と相対する状況を作り 出している。イングランドに戻りリヴァプールに加入して以降のサラーのパフォーマンスを考えれば、 このような1対1の状況を迎えられることは滅多にない。
ボールを受けたファン・ダイクには時間とスペースがある。ここでもやはり、現代フットボールに おいてCBの選手は他のポジションの選手たちよりもスペースを得られることがわかる。そしてファン・ダイクは、足元から素早くボールを繰り出してプレーを展開し、攻撃のアングルを完全に変えてしまうことができる視野の広さと多彩なパス能力も兼ね備えている。ダイアゴナルパスを通せば、わずか1本で相手の選手たち6人をプレーから置き去りにし、アイソレーションの状況にあるサラーが相手選手と1対1で対峙するチャンスをリヴァプールは生み出すことができる。
こういった形で攻撃のポイントを動かすことができる力、さまざまな距離のパスを繰り出せる力により、相手チームがリヴァプールの攻撃を効果的に食い止めるのは非常に難しくなっている。
全文は『組織的カオスフットボール教典』からご覧ください。
【商品名】組織的カオスフットボール教典 ユルゲン・クロップが企てる撹乱と破壊
【発行】株式会社カンゼン
【発売日】2020/12/14
【書籍紹介】
英国の著名なアナリストであるリー・スコットがペップ・グアルディオラの戦術を解読した『ポジショナルフットボール教典』に続く第二弾は、ユルゲン・クロップがリヴァプールに落とし込んだ意図的にカオスを作り上げる『組織的カオスフットボール』が標的である。
現在のリヴァプールはクロップがイングランドにやって来た当初に導入していた「カオス的」なアプローチとは一線を画す。
今やリヴァプールがボールを保持している局面で用いる全体構造については「カオス」と表現するよりも、「組織的カオス」と呼ぶほうがおそらく適切だろう。
また、クロップの代名詞だった激烈なプレッシングにも変化が生じ、もはやアイデンティティの主要部分ではなくなっている。
より効率的な形で試合のリズムをコントロールしようとしている最新のクロップ戦術が本書で赤裸々になる。
カテゴリ別新着記事
ニュース
-
なでしこジャパン(日本女子代表)メンバー発表!【MS&ADカップ2025】2025.11.19
-
【エリートプログラム女子U-13日韓交流】参加メンバー発表!2025.11.19
-
【2025ナショナルトレセンU-14後期】参加メンバー発表!2025.11.18
-
【U-15日本女子選抜トレーニングキャンプ】参加メンバー発表!2025.11.13
フットボール最新ニュース
-
アーセナルが直接対決を制しCL首位浮上【26日結果まとめ/欧州CL】2024.05.21
-
バルセロナがチェルシーに完敗【25日結果まとめ/欧州CL】2024.05.21
-
上田綺世が先制ゴールもチームは敗戦【27日結果まとめ/欧州EL】2024.05.21
-
バルセロナ、終始リードを許す展開で辛くもドロー【5日結果まとめ/欧州CL】2024.05.21
-
サッカー日本代表初招集MFが先発で勝利に貢献【6日結果まとめ/欧州EL】2024.05.21
大会情報
-
【卒業記念サッカー大会 第18回MUFGカップ 大阪大会】大会結果2025.03.07
-
【卒業記念サッカー大会第18回MUFGカップ 東京大会】フォトギャラリー2025.03.03
-
【卒業記念サッカー大会第18回MUFGカップ 東京大会】F.Cボノスが逆転勝利で優勝を果たす!<決勝レポート>2025.03.01
-
【卒業記念サッカー大会 第18回MUFGカップ 愛知大会】大会結果2025.02.25
お知らせ
人気記事ランキング
- クラブとともに戦い、走り続ける背番号13――。FC岐阜の永久欠番
- “早熟タイプ”か“晩熟タイプ”か。成長のピークはいつ訪れる? 子どものタイプを知ろう!!
- 関東選抜メンバー発表!【関東トレセン交流戦U-15】
- アグレッシブな守備を見せた しおやFCヴィガスが優勝を飾る!/バーモントカップ 第27回全日本少年フットサル大会
- 「JFAフットボールフューチャープログラム トレセン研修会U-12」2018年度の参加メンバー768名を発表!
- 【静岡市長杯第40回清水チャンピオンズカップ少年サッカー大会】表彰
- セレクションってNANDA?~横浜F・マリノスジュニアユース編~
- コバさんのスポーツ運動塾「トレーニングで疲労した体をケアするためのストレッチ講座 STEP1」
- 【第94回全国高校サッカー選手権大会】秋田/市立/秋田商業 選手名鑑
- 本格的な『卒団アルバム』をつくるのって難しいですか? 経験者に聞いてみた















