名手は「相手を遅くする」。サッカーにおけるセンスとは何か

2021年06月11日

育成/環境

「センス」がある選手とは、どのような能力を備えた選手のことをいうのでしょうか。集団スポーツであるサッカーでは、相手との速度差が重要になってきます。駆け引きの質をどう客観的に評価していくのがいいのかを現在発売中の『8人制サッカーの教科書』から一部抜粋して紹介します。

文●内藤清志 写真●Getty Images


サッカーにおける「センス」とは何か

 ここでは私が普段サッカーのどんなことを研究しているのかをお話します。私はサッカーの指導現場でよく使用される「センス」という言葉について、テクノロジーを用いて解明する研究を行っています。

 サッカーの客観的評価といえば、チームにおいては「シュート数」や「ポゼッション率」が挙げられます。選手においては「走行距離」や「速度」で示すことが一般的です。しかし、私は、現場での指導経験から、サッカーなど混合型(フィールド内で両チームの選手が入り乱れる)の集団競技においては、相手との駆け引きが重要であり、数値のみで評価することは、現場にとって有用ではないのではないかと考えています。

 なぜならサッカーでは、個人やグループによって生じる“相対的な速度差”が極めて重要だからです。ポルトガル代表のコーチングスタッフを務めたこともあるフリオ・ガルガンタ氏によれば、サッカーは「いつ速さを発揮するかが重要な競技である」と述べており、どれだけ速いかではなく「効率性・効果性が伴うプレーができるかどうかを取り上げるべきである」と主張しています。つまり、本書でも指摘しましたが、サッカーにおけるスピードというものの考え方を、自分(たち)を速くするというだけでなく、いかに“相手を速くさせないか”を考慮すべきだということです。

 つまり私は「サッカーの名手と呼ばれる選手たちは“相手を遅くする”ことを体得している」と考え、それが「センス」と呼ばれる言葉の根源なのではないかという仮説を立てています。それをテクノロジー(本研究ではGPSを使用して数値を取得しました)を使って明らかにしたいというものです。

 この研究の独自性は、サッカーにおいて、測定が容易である選手個人の体力的特性のみではなく、相手守備者との駆け引きや、事前の予測や情報量などが競技レベルの差となって現れることに着目し、その能力を客観的な数値として測定する方法の作成に着眼した点です。

 選手を評価する際の指標として、相手選手への影響という視点は、重要性が明白ながら客観的な数値として示すことが困難であるという点から、あまり研究されていません。引き続き、研究を進めていき、サッカーの指導現場において「センス」という言葉で表現されるような駆け引きの質が客観的に評価され、その重要性を主張することができれば良いと考えています。


つづきは『8人制サッカーの教科書』からご覧ください。


【商品名】8人制サッカーの教科書
【発行】株式会社カンゼン
【発売日】2021/04/20

【書籍紹介】
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