試合中に倒れたエリクセン。専門医が解説する適切な対応とは? ジュニアサッカーの現場で知っておくべきこと
2021年11月05日
フィジカル/メディカル今年6月、世界的にも有名なデンマーク代表のクリスティアン・エリクセン選手が試合中に倒れたことが大きな話題になりました。サッカーの試合中に選手が突然倒れることは、年代を問わず起こり得ることで、子どもたちも例外ではありません。そこで今回は、救急や小児を専門とする古家信介医師に、ジュニアサッカーに携わる指導者や保護者が知っておくべきこと教えていただきました。
文●古家信介 写真●Getty Images
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欧州最高峰の大会で起きたまさかの出来事
2021年6月12日に行われたEURO2020(欧州選手権)デンマーク対フィンランド戦、前半42分過ぎにその出来事は起こりました。スローインのボールを受けようとした、デンマークの10番クリスティアン・エリクセン選手がややふらつきながらボールに向かうと、誰にも触れていないのに突然前のめりに倒れたのです。
初めに異変に気が付いて手を挙げたのはフィンランドの選手でした。そしてデンマークの選手もすぐ主審に異変を伝え、試合は中断されます。医療スタッフが駆け付けて応急処置が行われ、心肺蘇生法が開始されました。エリクセン選手は無事に息を吹き返し、病院へと搬送されました。
デンマークの主将シモン・ケアー選手はエリクセン選手の気道を確保し、他の選手にも声をかけて周りに目隠しをするように円陣を組んで立つように指示しました。大きな国際大会での出来事ですから、試合会場の観客やテレビなどを通じて多くの人が見ています。ケアー選手はエリクセン選手のプライバシーを守るために迅速な行動をとりました。
後日、対応したデンマーク代表チームドクターのマーティン・ボーセン氏は「駆け付けた時は呼吸もしていて、脈も感じることができたが、突然心臓がとまったので、心肺蘇生が必要だった」と語っています。対応が遅れていれば命が奪われかねないような状況でした。
ケアー選手やデンマーク代表の選手達の行動は素晴らしかったです。
ジュニアサッカーの現場に置き換えて考えると…
非常に稀な事ですが、スポーツ中に心臓が止まってしまうことはあります。今回は周りにいた選手や審判が素早く異変に気付き、医療スタッフを呼んで処置を行ったことで尊い命が救われました。日本医師会によりますと、心停止から1分ごとに救命率は10%低下すると言われています。異変に気づいたら対戦相手の選手だろうと関係なく、迅速な対応が命を救うということが証明されたケースでした。
育成年代の大会や普段のトレーニングでは、医師などの専門知識を持った人がいない場合も多いと思います。そのときに頼れるのは周りにいる保護者や指導者の皆さんであり、倒れた子どもの近くにいる選手たち自身です。
今回のような心臓が突然止まることはどこでも誰にでも起こります。突然誰かが倒れた場合には声をかけるとともに、大声で助けを呼び、救急車やAEDの手配、心臓が止まっている場合には心肺蘇生法を行います。
これらはトレーニングを受けていれば決して難しいものではありません。子どもであってもできます。ぜひ講習会などで学んで、いのちについて考えてみてください。
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<出典>
・Christian Eriksen collapse: The heroes who helped save Denmark’s star player – BBC Sport
・日本医師会 救急蘇生法
<プロフィール>
古家信介(ふるや・しんすけ)
医師、専門は救急、小児、スポーツなど。救命救急センターなどの勤務を経て、2020年にスポーツ救急災害メディカルを設立。小学生の頃からサッカーに魅せられ、今もプレーしつつスポーツドクターとして活動する。好きなプレーはオーバーヘッド、好きなものはジャック・グリーリッシュ選手のふくらはぎ。
スポーツ救急災害メディカル(https://sportsfirstaid.jimdofree.com)
2020年に設立、スポーツ・救急・災害の現場でのメディカル対応に関する研修会やイベントなどを開催する。日本サッカー協会のスポーツ救命ライセンス講習会やJFA+PUSHコース開催などを手掛ける。
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