育成年代でよく使う「飛び級」。どう活用する?

2015年03月13日

コラム

“子どもにサッカーを教える”ことは言葉でいえばシンプルですが、指導者の方々は、その過程でさまざまな悩みや葛藤があるはず。今回は育成年代における「飛び級」について、ジュニサカでもおなじみの池上正さんにお話を伺いました。

構成・文●島沢優子 写真●編集部

ジュニアサッカーを応援しよう!Vol.28』より一部転載

飛び級は悪いことではない

 飛び級は悪いことではありません。ヴェルディのように、ジュニアからジュニアユース、ユース、プロまですべてのカテゴリーが結ばれ、強化が一本化しているチームでは、ごく当たり前のように行われています。

 小学5年生が中学1年生の大会に出場するなど、珍しいことではありません。ただし、その5年生は練習の時から中1と一緒にやります。その子のポテンシャルを考えれば、そのトライはひとつの強化方法といえます。

 さらにいえば、ジュニアとジュニアユースのコーチ間のコミュニケーションがきちんととれているからこそ、成果を上げられるのです。
 
 しかしながら、地域の多くのクラブや、ボランティアのお父さんコーチが運営する少年団では、そのやり方がかなり異なります。多くは、目の前にある「出場する大会のために」チームを作ってはいないでしょうか。
 
 よくあるのは、以下のようなケースです。5年生の大会があるとします。例えば、5年は15人しかいないとすると、8人制大会なので2チームは作れない。

 でも、選手の出場機会を増やしたいので4年生から7人「借りてきて」11人ずつに分けます。チームによっては「助っ人」と呼ばれるようです。

 そして、ほとんどの場合、チームは上手な順にAチーム、Bチームと分けられます。5年生のなかで6年生を上回る技術をもつ子はAに入れられたりします。
 
 ところが、この編成は試合のときだけで、練習では5年、6年と別々に行います。そもそも担当コーチも違っていて、練習や指導方法も違っていたりします。要するに「試合のときだけ」の飛び級。ここには、6年生と一緒にやる5年生7人のことをきちんと考えているようには見えません。

 加えて、前述したように試合のときだけ下の学年の子が加わり、その子たちが出場していると、上の学年の保護者から「6年生の出場機会が奪われる」と苦情が寄せられたりします。

 一方で、子どもが選ばれなかった5年生保護者からは「どうしてうちの子が選ばれないのか」とか「どういう基準で選んでいるのか」などといったクレームがあるようです。かなりこじれてしまい「勝てなくてもいいから、飛び級はしないで」と保護者に言われたという話も聞きます。

 これは、指導者が「勝つために飛び級をする」という価値観しか伝えていないから。チームも親がギクシャクすると子どもにも伝わるので、大会のたびにチーム内に動揺が広がることになります。

0313コラム用ヴェルディ

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