バルセロナ成功に欠かせない人物が語る、サッカーにおける様々な“スピード”とは
2017年05月30日
コラム元FCバルセロナ監督のジョゼップ・グアルディオラが、ルイス・エンリケ体制のバルサ成功はフィジカルコーチのラファエル・ポルにあると太鼓判を押した。そんな絶大な評価を受けるフィジカルコーチが語る真のトレーニングとは? 5月30日発売となる『バルセロナフィジカルトレーニングメソッド』から一部抜粋して紹介する。
文●ラファエル・ポル 翻訳●坪井健太郎 写真●Getty Images
スピードとは単なる速さではない
一般的には「移動のスピード」をサッカーにおけるスピードとしているが、さらに「判断‐実行のプロセスの分析によるリアクションスピード」もスピードに含まれる。
そして「それらはトレーニングでコーディネートするべきだ」と何人かの著者が補足している。
加えて、選手の集合体としてのグループアクションのスピードの研究では、相互作用を引き起こすことが可能なシンプルな個人の行動が、チームの創造性あふれる動きのパターンを導き出し、時間‐スペースの関係において集団でのディフェンスとオフェンスのバランスを崩すことができる、としている。
例として、あるチームがパスやドリブルによって相手をある決められたゾーンへ引き付け、ボールを素早く動かすことで、他のゾーンで数的優位や有利な位置を得る事ができる、というシーンが挙げられる。
相手は数的不利を解消するため、素早く行動に移らなければならない。つまり、相手チームのアクションスピードを一時的に高めているのだ。この能力は、単に個人能力であると理解することができないのは明らかだ。まずは、プレーするにあたっての「決断を下す」というプロセスを学習することになる。
最高レベルの能力に必要な適合
また、どうやってそれを実行し、他の選手との関係においてそのパターンが発生するのか、あるいは修正を行なうのかということも理解していくこととなる。
そして、それは集団プレーでスピードを発揮するということの分析にも役立つ。それぞれの要素を解析する前に重要なのは、それらを他のものから独立させて理解する事はできない、ということだ。時間‐スペース的に双方向に関与していると考えられるため、要素を分けてしまうと能力を最高レベルまで引き上げることはできないのだ。
例えば、決断を実行の原動力と無関係と見なすことはできない。選手の内的・外的条件に適合しない「良い判断」というものは存在しない。
例えば、マークを外してフリーになっている味方に1タッチでパスをする「先天的な」決断力を持つ選手がいるとする。しかし成功させるための運動作用を調節する能力が足りなければ(例えばそのフリーな味方に適したパスを出せない)、アクション全体としては効果的ではなくなる。
(続きは『バルセロナフィジカルトレーニングメソッド』をご覧ください)
【著者】ラファエル・ポル
【翻訳】坪井健太郎
価格:2,484円(税込)
A5判/264ページ
2017年5月30日発売
⇒世界最高クラブ「FCバルセロナ」の3冠を支えた若きフィジカルコーチ、ラファエル・ポルの最先端理論と練習法を大公開!
「フィジカルトレーナーは、フィジカルトレーニングの実行と関連する人間の動きの原動力と生物学的プロセスの専門家として、選手とチームに期待する適応が発生するためにトレーニング計画に協力するべきである」
「サッカーにおけるスプリントの必要性は、直線を走ることよりも方向を変えることに特徴づけられている」
「トレーニングプロセスにおいて判断(戦術)のプロセスと、アクション(技術とフィジカル能力)のプロセスを分けて考えることは間違っている」
「ジムのマシーンでのトレーニングは、選手のコーディネーションのパターンを尊重しておらず、結果的に多くの支障をもたらす」
インテンシティーを重んじる
現代サッカーに必要な
スピードとパワーを強化する
【目次】
■第1章 サッカーにおけるスピード
1-1 サッカーにおけるスピードの条件要素
1-2 サッカーにおける決断
1-3 チーム内の異なる選手間のコーディネーション:プレーモデルの実行
1-4 影響する要素とスピードに影響する生物エネルギー
■第2章 サッカーにおけるパワー
2-1 パワーの概念
2-2 フィジカルの基本能力としてのパワー
2-3 筋収縮を引き起こす条件
2-4 試合を想定しないパワートレーニングは必要であるか?
2-5 パフォーマンス向上のためのパワートレーニング
■第3章 サッカーにおける持久力
3-1 持久力の定義
3-2 持久力トレーニングの目的
3-3 持久力トレーニングによってもたらされる順応
3-4 サッカー選手のエネルギー必要性の認識
■第4章 システミコメソッド
4-1 モデルが位置づける科学的パラダイム
4-2 ダイナミズムシステムとは?
4-3 ダイナミズムシステムの観点から見た選手
4-4 トレーニングシステムの応用
4-5 負荷強度の決定
4-6 トレーニングプロセスにおけるプレーモデル
4-7 監督の役割
4-8 フィジカルトレーナーの役割
4-9 トレーニングのピリオダイゼーション
4-10 トレーニングのピリオダイゼーション: プレシーズン
4-11 週間トレーニングサイクルの設計
4-12 週間計画に関する考察
4-13 結論
■第5章 ダイナミクストレーニング
【高強度のダイナミクス(アクション)】
・3対3+GK
・守備を固めた3対3+GK
・浮き球での3対3+GK
・1対1+GK
・2対2+GK
・2対2+2フリーマン+GK
・小さいスペースでの3対3+GK
・2人×3チーム+1フリーマン(攻撃側)+GK
【高強度のダイナミクス(相互作用)】
・3対3+1フリーマン(攻撃側)
・3対3+1フリーマン(攻撃側)+GK①
・4対4
・4対4+1フリーマン(攻撃側)+GK
・3対3+2フリーマン
・4対4+3フリーマン
・3対3+1フリーマン(攻撃側)+GK②
・アタッキングサードでの3対3+GK
【低強度のダイナミクス】
・10対10+1フリーマン(攻撃側)+GK
・スペースを狭めた11対11
・相手背後のエリアに侵入する8対8
・8対8+GK
・サイドのエリアを限定した9対9
・7対7+2フリーマン+4GK
・マーカーゴールを配置した10対10
・6対6+6フリーマン
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