運動神経は”才能”ではない!? スポーツ上達の秘訣は「脳」にあり
2018年04月28日
メンタル/教育当たり前ですがスポーツには「得意」「不得意」があります。その不得意の原因が「運動神経が悪いから」と思っている方も多いのではないでしょうか? しかし、スポーツ科学の第一人者、深代千之氏は「生まれつき運動神経が悪い人はいない」と話します。では、スポーツが「上手い」「下手」の判断基準は何で決まるのか、運動神経を育むためにはどうしたら良いのか、深代氏の言葉に耳を傾けます。
『子どもの学力と運「脳」神経を伸ばす魔法のドリル』より一部転載
著●深代千之 再構成●ジュニサカ編集部 写真●ジュニサカ編集部、佐藤博之
生まれつき運動神経が悪い人はいない
スポーツが得意な人には、「運動神経の良さ」という生まれ持った力がある―そう思い込んでいる人は多くいます。「私は運動神経が悪いから、何をやってもうまくいかない」とスポーツ全般に苦手意識を持っている人は少なくありません。
この苦手意識は、自分自身のみならず、自分の子どもにスポーツをやらせる際にも出てきます。新しい動きをなかなか習得できなかったりミスをしたり、うまくいかないことが重なると、「うちの子は私に似て運動神経が悪いから」と〝遺伝〞や〝生まれ持った才能〞といった、外的要因のせいにしてしまうのです。
こうして、子どもの可能性をつぶす言い訳をしてしまうのは、とてももったいないことです。
はっきりとお伝えしたいのは、「生まれつき運動神経が悪い人はいない」ということです。「運動神経」とは何なのか、正確に説明できる人は少ないのに、言葉だけが一人歩きしています。運動神経が悪いからスポーツは楽しめないという誤解や思い込みが、子どもの運動離れを助長しているのではないかと危惧して
います。
では、運動神経とはそもそも何を指すのでしょうか。
運動神経とは、運動の指令が脳から筋肉まで送られるときの「情報の通り道」のこと。脳から命令が出て運動につながるまでの神経のシステムを神経系といいます。
私たちの神経系は、脳と脊髄(せきずい)からなる「中枢神経系」と、そこから出る信号を末端まで送る「末梢神経系」に分かれています。運動神経は、この末梢神経系の一部に必ずあるものです。運動神経がなければ、手を思い通りに動かして文字を書くことも、箸でご飯を食べることもできません。
運動神経の有無に個人差はなく、誰にでも同じように備わっているものなのです。そう説明すると、運動に苦手意識のある方は、「脳からの指令を伝達するスピードが遅いはずだ」と思うかもしれません。しかし、脳から筋肉に情報を伝える「伝導速度」にも個人差はありません。運動のうまい下手は、遺伝によって決まるものではなく、「生まれつき運動オンチ」「運動の才能がない」という人はいません。
これらは間違った思い込みであり、自分や子どもに対する言い訳でしかないのです。
運動のセンスのよさは「脳の神経回路」の働きによる
運動神経は誰にでもあるとわかったものの、「同じスポーツを同じタイミングで始めたのに、明らかに私よりもあの人の方がうまい」「センスが違う」とがっくり肩を落とした経験をした方もいるでしょう。
確かに、運動のうまい、下手があるのは事実です。サッカーでの巧みなドリブル、無駄のないフォームで走るランナー、身体を完璧にコントロールして踊るダンサーなど、アスリートたちの身のこなしを見て、その「うまさ」に惚れ惚れします。
スポーツにおけるうまい、下手の判断基準は、「ある動作を思い通りにできる人か、頭ではわかっているのに身体を思うように動かせない人か」で分かれます。「あの人はセンスがある」というとき、それはつまり、「自分の身体を自自在に操っている人」を指しています。
ただ、それは生まれ持った才能ではなく、そのスポーツをやる上で必要な動きを練習してきたかどうかという、後天的な環境の違いによって決まってきます。つまり、練習を積んで、脳の神経回路をたくさん作ったかどうかによって決まるのです。
子どものころから、外遊びの中でさまざまな動きを経験し、複数のスポーツを楽しむことで動きのバリエーションを蓄えておくことは、あらゆる運動の基礎となる「神経回路」を育むことにつながります。これが、運動がうまくなる秘訣です。
<プロフィール>
深代千之(ふかしろ・せんし)
1955年生まれ。東京大学大学院・総合文化研究科・教授。東京大学大学院・教育学研究科博士課程修了、教育学博士。(一社)日本体育学会会長、日本バイオメカニクス学会会長、国際バイオメカニクス学会元理事。スポーツ動作を力学・生理学の観点から解析し、動作の理解と向上を図るスポーツ科学の第一人者。
【商品名】子どもの学力と運「脳」神経を伸ばす魔法のドリル
【著者】深代千之
【発行】株式会社カンゼン
四六判/208ページ
価格:1,620円(税込)
☆6歳~12歳こそ、「運脳神経」を伸ばす適齢期
身体を動かして、脳にたくさんの神経パターンの引き出しを作る力。これを「運脳神経」と呼んでいます。
運動神経ではなく“運脳”神経という造語で表現するその定義は、「思い通りの身体の動かし方を身につけるための脳と身体の協調性」です。脳と身体の“協調性”は6歳~12歳の間に磨くのが最適です。本書で取り上げた7つの動き40のドリルを参考に「運脳神経」を伸ばしてください。勉強も運動もできる、スーパーキッズの土台を築くことができるはずです。
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