コラム

池上コーチの一語一得「ドリブルをタブー視する雰囲気」

2013年06月04日

池上正さんが子どもに対する悩みや、保護者・コーチの子どもを取り巻く大人に関する疑問や悩みに答えるこのコーナー。今回は試合経験をほとんど与えられないお子さんについてのご相談です。

◎試合(試合で修正したい悩み)

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(質問者:小学5年生の保護者)

小学5年の息子は少々わんぱくです。自分の思うように動きまわりたいのだけど、クラブの方針なのか、パスを出さないと試合中大きな声で監督に怒られ、他のメンバーの子どもたちにも釘をさされます。息子のチームはパスをまわすことに必死で、ドリブルを仕掛けることに対して、チーム全体にタブー視する雰囲気が漂っているように感じます。試合後、勝っても監督や仲間から言われることに落ち込んで帰ってきます。どう言葉をかけたら良いでしょうか?

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あくまで自分で判断することを目指して
親も意見して考え方の幅を広げてあげましょう

 あるチームは5年生くらいでもずっとドリブルばかりやります。監督さんのこだわりでそうさせているようです。そのような指導に対して、周囲からは「ドリブルもいいけど、味方を使うこともできないといけないのでは?」といった批判もあるようです。一方、それとは逆で、パス重視で指導する方もいらっしゃいます。

 私は、ドリブルをしたほうがいいとき、パスしたほうがいいときの判断が最も重要だと考えます。バランスをとることは非常に難しいのですが、さまざまな技術を使い分けることが選手やチームの進化だと思います。

 また、選手ごとにドリブルがうまいとか、パスが上手いなど特長があるのですが、それはあくまでその選手の個性です。例えば、メッシはドリブルが武器ですが、他のプレーヤーが自分より優位な状況を作り出していれば、そこへパスします。さらにいえば、イニエスタは素晴らしいパサーですが、彼だってドリブルします。

 個人の特長はあっても、そのときの状況の最高の判断ができなくてはなりません。そういった判断ができないままボールを保持していると「持ちすぎ」などと言われたりします。

 基本的に乗り越えるのは本人なので、任せればよいと思いますが、親として言うべきは「そのときそのときで、自分の判断をすればいいよ」ということではないでしょうか。

 パスでも、ドリブルでも、そのときに周囲の意見は違うかもしれないけれど、自分で感じて判断することが何より大事です。

 そして「それでどうだった?」「判断は合ってたかな?」と、問いかけてあげればよいのです。そのプレーが成功したか、不成功に終わったかは、あまり意味を持ちません。チャレンジしたことを認めてあげてください。

 そのように話し合う過程で、親の意見を言ってもよいのです。意見を言って、考え方の幅を広げてあげてください。「あそこさあ、ドリブルでいっちゃったけど、パスだしたらどうなっていたと思う? お父さんはね、味方がフリーでシュートできたと思うけど」

 コーチは自分のイメージを優先して語りがちです。子どもに問いかけたりアドバイスするときに、判断そのものはどちらでもOKと思って尋ねる人はあまりいないようです。例えば「コーチはパスだと言ったけど、自分はドリブルでよかったと思ってる」と子どもが話してきたら、「だったら、コーチに話してみたら?」と勧めてください。双方向でコミュニケーションすることで、プレーの幅や創造性は広がるはずです。

プロフィール

池上 正(いけがみ・ただし)

1956年大阪生まれ。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼年代や小学生を指導。02年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。同クラブ下部組織の育成コーチを務める。03年より小学校などを巡回指導する『サッカーおとどけ隊』を開始、千葉市・市原市を中心に190カ所におよぶ保育所、幼稚園、小学校、地域クラブなどで延べ40万人の子どもたちを指導した。2010年1月にジェフを退団。同年春より「NPO法人I.K.O市原アカデミー」を設立。理事長としてスクールの運営や指導、講習会、講演をこなすかたわら、大学や専門学校等で講師を務めている。2011年より京都サンガF.C.アドバイザー、12年2月より京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターに就任。08年1月に上梓した初めての著書『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(08年・小学館)は、11年12月現在で7万部に迫るベストセラー。11年9月には指導現場で、その実践例を大公開した『サッカーで子どもの力をひきだす オトナのおきて10【DVD付き】』が発売。U-12の育成に携わる指導者や保護者には必見のDVD付き書籍となっている。

近刊情報

『サッカーで子どもの力をひきだす オトナのおきて10【DVD付き】』

指導者や保護者から多くの支持を得ている『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』の著者・池上正氏が普段からよく使う象徴的な言葉(フレーズ)を取りあげながら、どのように子どもと接すればいいのか、言葉をかければいいのか、子どもとの距離のとり方……子育てやサッカー指導に悩む方々の具体的な解決策として、 “オトナが守るべき10のおきて”を伝授します。

VOL44

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