中学1年生が最後の砦!? 手遅れにならないための「自立」講座【後編】

2013年10月31日

コラム

手遅れにならないための「自立」講座、前編はいかがでしたでしょうか。「自立」への準備、そろそろ始めてみませんか?「中学1年生が最後の砦です」とも語る、JFAアカデミー福島やナショナルトレセンなどで言語技術を指導する三森ゆりかさんにお話をうかがいました。

取材・文●高畠正人 イラスト●舌霧スズメ

※『ジュニアサッカーを応援しよう!Vol.19冬号』P76-79より転載

 


会話を使って子どもたちと接する

自立03

 では、具体的に子どもたちに考える力を与えるにはどうしたらいいでしょうか。

 まずは、どんな小さな問題でもいいので、常に「あなたはどう思う?」「なぜ、そういうふうに考えたの?」と子どもに繰り返し問いかけて、親側も理由や根拠をしっかり話す。これの繰り返しです。

 親も子も自分の考えを伝えるには、相手にわかりやすく理解してもらわなければいけませんが、それにはトレーニングを積み重ねることが必要でしょう。

「あのタイミングでシュートを撃ったのはよかったよ。なぜかというと、相手が詰めてくる前にシュート狙ったからね。でも、もう数秒判断が速かったらどうなったと思う?」ときちんと伝えられるといいですよね。

 そうすると子どもは「次の試合ではもっと早くシュート体勢に入ろう」と自動的に考えることができるはず。家でもチーム内でも考えながら会話をすることを意識して繰り返す。それが考える力を身につけさせる第一歩です。

 会話をする際に気をつけたいのは、命令調で言わないこと。そして、注意をするときには、頭ごなしに「ダメ!」と言わないことです。

 具体的には、試合の後などに「なぜ、あそにパスを出したのか?」という理由を聞いてあげる。なぜなら、その子には「パスを出した」理由が本当はあるはずだからです。

 その理由や根拠を普段からしっかりとチーム全員が話し合える環境があれば、お互いの意思統一がされて、試合でも応用できるようになるでしょう。

 また、注意するときは「今のは良い判断だったね。その判断の質をもっと上げるにはどうしたらいいと思う?」と最初にひとこと褒めてから否定形を入れて根拠を述べるとよいでしょう。悪い部分を考えることで、失敗も減っていきます。それは頭のなかに失敗した理由が残っているから、次はやみくもに蹴ったりしなくなるのです。

 日本人は問いかけて答えを探すことが苦手ですが、保護者や指導者側から変わっていかなければ、子どもの自立は成しえないのです。だから、会話を使って子どもたちと接することが重要だと思います。

【“GO”のひとことで動けなくなる子どもたち】
自立04

 通訳が強い口調で「行け!」と命令する場面に私は何度か遭遇しました。こうした命令が繰り返されると子どもたちはだんだん動けなくなる。命令が体を制止しさせ、子どもたちはどうして良いかわからなくなってしまうからでしょう。

 本当は「Go」には、いろいろな意味があります。「行け!」と命令の意味もあれば「行こう」「行きなさい」「行ってみたら」程度に行動を促す意味を持つ場合もあります。

 強い口調で常に命令すると子どもの思考は停止します。それがこの通訳の訳しかたの問題に現れる現象です。子どもの自立を願うなら、命令をするのではなく、促して考えさせるように心がけましょう。

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