コラム

なぜ『PK』は決まらないのか。スポーツ心理学者が語る『PK』失敗につながりやすい“回避行動”とは

2015年12月21日

PKはサッカーにおいて恐らく最も簡単に奪えるゴールである。しかし、簡単なはずのPKはなぜ外れるのか。PKに成功する秘訣とは一体何なのか。そのヒントを探るため、長年にわたりPKに関して取材を行ったジャーナリスト、ベン・リトルトンの著書『PK ~最も簡単なはずのゴールはなぜ決まらないのか?~』から、元サッカー選手で現在はスポーツ心理学者という異色の経歴を持つゲイル・ヨルデット博士の言葉を一部抜粋して紹介する。

(文●ベン・リトルトン 監訳●実川元子 写真●Getty Images)

『PK ~最も簡単なはずのゴールはなぜ決まらないのか?~』より一部転載


PASADENA, CA - JULY 17:  Brazil goalkeeper Taffarel celebrates after Roberto Baggio of Italy had missed his penalty to decide the FIFA World Cup Final 1994 between Brazil and Italy at the Rose Bowl on July 17, 1994 in Pasadena, California, United Sates. Brazil beat Italy 3-2 in a penalty shootout to win the World Cup. Photo by Shaun Botterill/Getty Images)

PK失敗につながりやすい“回避行動”とは

 発表した3つの論文によってヨルデットはスポーツ心理学分野の新星となった。現在彼はノルウェー・センター・オブ・フットボール・エクセレンスで心理学部長をつとめている。「最高のパフォーマンスを発揮するために、また失敗に対処するために、どうすれば最も効率的に考え、感じることができるかを研究している」とヨルデットは言った。現在彼は、先制点を決められると意気消沈してしまうチームからの依頼で、その悪癖を断つための対策を研究している。

 学者であるヨルデットのスタンスは、データに基づいてスポーツ心理学の見地から意見することだ。なぜイングランド代表がPK戦でこんなにも負け続けるのかを尋ねたところ、彼は考えられるいくつかの理由をあげた。

「3年間完璧なPKについて研究してきた」と彼は私に話した。「助走で理想的な歩数は? 高いところと低いところのどちらを狙えばいいのか? 強いボールを蹴るのと正確性を重視するのとでの成功率は? そういった疑問に対して、はっきり『これが効果的だ』という答えはない。大きな影響を与えるのは、結局のところプレッシャーをどう回避するか、またストレスにどう対処するか。サッカーではなく心理学の問題ですね」

 心理学的な要素の一つが、これまで見てきたように過去の成績の重みだ。ヨルデットは1、2回のPK戦の失敗が次のPK戦にどういう影響を与えるかを研究している。

 つまりPK戦で負け続けているというだけで、イングランド代表は次の大会のPK戦でも負けるということなのか? その通りだ。

 図2で見る通り、前回まで2回以上PK戦で敗退しているチームの選手のPK成功率はなんと57%まで下がる。勝ち癖もつきやすい。2回以上勝っているチームの選手の成功率は89%と高くなる。だが、負け癖は残酷な負のスパイラルとなる。

 前のPK戦で負けたチームの選手は、たとえ前回個人として成功していたとしても成功率が下がってしまう。成功する確率は45%になってしまうのだ。ヨルデットにイングランド代表はPK戦に負け続け、ドイツ代表が勝ち続けていることが個人のPK成功率の数字にバイアスをかけているのではないかと尋ねた。ヨルデットは、それは違うと答えた。

PK図1
【図2:それまでのチームの戦績と個々のPK成功率】

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