アーセナル流『ドリブル指導論』~求められるのはボールコントロール力と状況判断力~
2013年07月21日
コラムキーワードはチーム内での動き連動と状況判断
では実践的な練習に移ろう。
確実なボールコントロールとドリブルをメインにした基本的な練習として紹介してくれたのが次のパターンだ。(トレーニング1)
フィールド中央に立った選手にパスを送り、ライン際に走り込む、そこでダイレクトのパスを受けてから四つのコーンをドリブルでかわし、中央に切れ込んでシュート。一見、シンプルなドリブル&シュートの練習だが、これには押さえなければいけない要素が詰まっているとキロフコーチは言う。
「左サイドのライン際なので、トラップは左足のインで受けるのが基本。しかしスピードに乗って、かつ柔らかいトラップができるならアウトサイドのワンタッチでコーンの間を通し、ドリブルにつなげることも可能でしょう。
最後のシュートに入る体勢も左足のインで中に切れ込むのが理想ですが、その前に体がライン側に向いてしまったらアウトで中に入れ、無理なく体をひねってシュート体勢に移る方が無駄がない。決めごとではなく、イマジネーションを働かせ、さまざまなパターンを実践することでとても内容の濃い練習になります」
そして練習の中心となるのが、アーセナル・スクエアというフォーメーションでの練習。数名の選手でパス、ドリブル、フリーランと組み合わせながらシュートまでもっていくトレーニングだ。
基本的な段階ではトレーニング2のようなダイヤモンド型を組み、最もゴールに遠い選手のパスからスタート。
ボールを受けた選手以外は一斉にボールをもらえる位置を求め、動き出す。ゴールに向かうだけではなく、フィールドを大きく横切る形でもいい。こまかなパス交換だけでなく、パスを出しやすいタイミングまでドリブルをするのも有効だ。そして最終的にはシュートでフィニッシュ。全体の連動性を高めるための練習だ。
「ボールを保持した瞬間、三人のフリーの選手が視界に入っていることが理想だとアーセナルでは考えています。そのためボールをコントロールしながら、周囲を見ることができるか、オフ・ザ・ボールの選手も連動しながら動けるかをいくつものフォーメーションを組んで練習するのです。
障害物を置いたり、選手の数を変えたりと、その方法は無数にあります。このようなフォーメーションでの練習はポゼッション、判断力、パス、ドリブル、シュートとすべての基本事項を押さえることができるのです」
そして毎回の練習の最後はミニゲーム。7分ハーフで行うが、前半はボール3タッチと制限をつけ、後半はフリーに行う。ここでこの日の練習内容の再確認を行う。
ドリブルのないサッカーなどつまらないし、1対1で相手を抜けない選手はプロにはなれない。しかしドリブルを極めるだけでは勝利にはつながらない。キロフコーチは最後にそう語ってくれた。仲間を活かしながら、いかに効率的にボールを相手ゴールまで運べるかを意識する。その手段としてドリブルを捉えることが重要。
そしてこの世代でボールコントロール力の徹底、そして周囲との連動と効率性を前提とした状況判断を学んでほしい。それが指導の大テーマであり、子どもたちの将来への飛躍につながるのだと。
「私自身が日本人の可能性を信じています。これらができればきっといいドリブラーがどんどん生まれますよ」
そういってキロフコーチは笑顔で取材を締めくくった。
(チーム情報)
国本小学校サッカー部
東京都世田谷区にある国本小学校のサッカー部。課外授業としての活動ながら全校生徒の約半数150人が参加している。しかしながら少数指導を旨とし、主に学年などで分けながら1クラス20名前後で練習を行っている。ピーター・キロフコーチはコーチング・ディレクターとしてすべての世代を指導。2013年からはさらに学外にも門戸を広げた「JYFA(ジャイファ)=Japan Youth Football Academy」を設立。ジュニアからユースまでのサッカー選手並びにコーチや監督を育成するための指導も開始している。
ピーター・キロフ
1965年ブルガリア・ソフィア生まれ。母国の名門FCスラヴィアに11歳でプロ加入後、MFとして活躍。引退後は26歳で同チームの監督に就任した。UEFA級コーチライセンス、FA(イングランドサッカー協会)アカデミーライセンスを取得し、マンチェスターユナイテッドサッカースクールでの指導を経て2009年からアーセナル・サッカースクールハワイ校校長。2012年からは国本小学校サッカー部のコーチングディレクターとして指導に従事している。
<関連リンク>
・『ジュニアサッカーを応援しよう!Vol.28春号』
・『ヴェンゲル・コード アーセナル、その理想の行方』
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