自発的な子どもを育てるためのサポート術
2014年05月12日
コラム自分の子どもがどう考えているか、何をしたいかを聞く
だからといって、子どもの自主性に全てを任せるのも違う。親には親の希望があり、提案がある。それを我慢する必要はない。子どもに話して、問いかけていくことが大切なのだ。
「私の娘の話なんですが、中1で160センチくらいあったんで、『今から真剣にサッカーしてみないか。真剣にやるなら教えるから』と勧めました。娘は『どうだろう。今のままが楽しいからいいや』と返事をした。結局、放っておいたら24歳になる今もサッカーを続けています。そういう問いかけをして、自分の子どもがどう考えているか、何をしたいかをしっかり聞いてみることが大事なんです」
進路や将来の方向性など、重要なことはもちろん親子間で話をするだろう。だが、要所要所だけ対応していればいいわけでもない。キャッチボールは日常から始まる。毎日の積み重ねをおろそかにしてはいけないのだ。
「例えば、テレビを見すぎる子どもがいるとします。それに対して親は『もう少しテレビを見る時間を減らした方がいいと思う。なぜかというと、お前は勉強しないからだよ。どう思う?』と聞いてあげられることが大事なんです。『今は見たいから見る』と子どもが答えたなら『じゃあ、勉強はどうする?』と切り返します。『この後やるよ』と言ってくれば『でも寝るのが遅くなるよ。大丈夫?』と尋ねればいい。これも会話のキャッチボールですね。自分で計画を立てて目標に近づこうとしている姿が見られれば、それを応援してあげればいいと思います」
ただ、家庭内のことはつねに話し合いで解決できるとも言い切れない。物事を理詰めで突き詰めていくと、最終的に辻褄が合わなくなってくることもあるからだ。
「そこでやってはいけないのは『とにかくいいの。ダメと言ったらダメ』と話を一方的に終わらせてしまうこと。子どもには『ああ、やっぱり説明できないのか』と不満が残る。親子間では最初からダメと言っていいと思います。私もよく娘に『池上家ではダメ』と言いました。『もしそれをやりたいなら池上家を出て行ってからやってくれ』と強いスタンスでのぞんでいい。親は子どもを守ろうと思っているのですから、自信を持って対応するべきなんです。しかし指導者の場合は違う。全てのことを説明できるように理論武装しておく必要があります。『とにかくこの練習をやってみろ』ではなく『これはこうだから』と。子どもが嫌だと言ったら『じゃ、こっちをやろうか。これはちょっと違うから』と納得させられるようにしないといけませんね」
池上さんの話を聞いていると、ジュニア年代はプラス思考で子どもに接することが何よりも重要であることはよく分かる。怒鳴ったり怒ったりする前に、まずは子どもたちの言い分に耳を傾けること。それに対して率直な意見を言ってみるところから始めてみてはどうだろうか。
プロフィール
池上 正
(いけがみ・ただし)
1956年大阪生まれ。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼年代や小学生を指導。02年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。同クラブ下部組織の育成コーチを務める。03年より小学校などを巡回指導する『サッカーおとどけ隊』を開始、千葉市・市原市を中心に190カ所におよぶ保育所、幼稚園、小学校、地域クラブなどで延べ40万人の子どもたちを指導した。2010年1月にジェフを退団。同年春より「NPO法人I.K.O市原アカデミー」を設立。理事長としてスクールの運営や指導、講習会、講演をこなすかたわら、大学や専門学校等で講師を務めている。2011年より京都サンガF.C.アドバイザー、12年2月より京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターに就任。08年1月に上梓した初めての著書『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(08年・小学館)は、11年12月現在で7万部に迫るベストセラー。11年9月には指導現場で、その実践例を大公開した『サッカーで子どもの力をひきだす オトナのおきて10【DVD付き】』が発売。U-12の育成に携わる指導者や保護者には必見のDVD付き書籍となっている。
近刊情報
『サッカーで子どもの力をひきだす オトナのおきて10【DVD付き】』
指導者や保護者から多くの支持を得ている『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』の著者・池上正氏が普段からよく使う象徴的な言葉(フレーズ)を取りあげながら、どのように子どもと接すればいいのか、言葉をかければいいのか、子どもとの距離のとり方……子育てやサッカー指導に悩む方々の具体的な解決策として、 “オトナが守るべき10のおきて”を伝授します。
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