親から子どもに伝えたい 成功や失敗の体験をさせることの重要性
2015年08月14日
コラムジュニア年代のサッカーは、親と子の二人三脚です。子どもの上達を願うなら、親も成長していく必要があります。そのために、ぜひとも知っておきたい親の心構えをジュニア育成の現場に立つ指導者が教えます。
(文●末本亮太 写真●編集部)
「何かを学ぶためには、自分で体験する以上にいい方法はない」
昨今の子どもを巡る環境は、なるべく危険な目に遭わぬよう、リスク回避を重視する傾向にあります。それが、サッカーのピッチにも持ち込まれていることに私は不安を感じています。貴重な実践の経験を積むことができなくなることへの危惧です。
現在の子どもたちは、さまざまなツールを使って、あらゆる情報を得ることができます。自分で体験していなくても、体験したかのような感覚に陥ってしまうのです。この年代の子どもたちにこそ、自分の目で見て、自分の耳で聴いて、自分の肌で感じたことの素晴らしさを体感してほしいと思っています。
アインシュタインはこのように言っています。「何かを学ぶためには、自分で体験する以上にいい方法はない」。自分で体験して失敗したこと。自分でやって成功し、答えを見つけたこと。これらこそが彼らをつくる根っことなるのです。
例えば、子どものサッカーに必要なものを親が用意して忘れ物をしないようにすること。公式戦に必要な選手証を親や指導者が管理すること。試合に間に合うように必ず保護者が引率をすること(地域によって仕方のないこともありますが)。果たしてこれらは、本当に子どものためになるのでしょうか。
短期的な視点も必要ですが、日本の未来を担う宝である子どもたちに一番大切なのは、自分でやってみてできたこと、できなかったこと、それら成功や失敗の体験ではないでしょうか。
サッカーのピッチには、たくさんの成功や失敗が落っこちています。失敗が起きないように、大人があらゆる対策をして防ぎ、痛い目に遭うことから回避させる。それが成長に繋がるとは思えません。
試合において、ある現象が起きていて、負けてしまう状況が指導者の視点から感じられることがあります。時には、我々大人はそれを見守り、子どもたちの気づきを促す、あるいは、負けという結果を受け止めさせなくてはなりません。指導者が介入して、未然に防ぐことも可能でしょう。しかし、子どもたちにとってのゴールは、そこではないはずです。
負けたという取り返しのつかない体験をして、何が良くなかったのかを内省する。改善策をつくり、同じシチュエーションになったとき、必ずや自身の力でそれを乗り越えていく。これらは12歳の子どもにだってできるのです。そういった経験学習をしないで成長していった子どもと、あらゆる成功、失敗体験をし、そこからPDCAサイクルを回して、改善していった子どもとの積み重ねてきたメモリーの違いは明白です。
子どもたちは柔軟です。失敗を成功に、成功をさらなる成功に、次々と繋げていきます。そういった体験をしてきた子どもたちは、きっと大人になっても、失敗こそが成功の始まりと捉え、成長のための教訓にしていくのではないでしょうか。
そうなるか否かは、関わる我々大人にかかっているのです。
あえて少し難しい体験をさせましょう。成功や失敗の原因を一緒に探して言葉にしましょう。その蓄積が宝になります。必ず彼らの糧になる日がくるはずです。
プロフィール
末本 亮太
(すえもと りょうた)
NPO法人大豆戸FC理事。1978年、東京都生まれ。
神奈川県立横浜翠嵐高校、早稲田大学教育学部で学業と平行してサッカーに打ち込む。大学卒業後は一般企業に就職し、新入社員とアルバイトに対する人材育成が評価される。現在、横浜市港北区大豆戸町にあるNPO法人 大豆戸フットボールクラブの理事を務める。自身も4歳と2歳の男の子を持ち育児に奮闘中。「ちょっと自慢できる、サッカーを通じて出会うはずのない感動、人、未来を創造し、非日常を提供すること」をミッションに掲げ、精力的に活動している。また小学生を連れての被災地訪問などNPO団体として、サッカーだけにとどまらない活動も行っており、将来を担う子どもたちの育成に力を注いでいる。
⇒普通の子どもたちが通う、横浜のNPO法人サッカークラブ「大豆戸(まめど)FC」。その指導者として8年以上現場を見てきた末本亮太氏が監修する本書は、子どもがサッカーを始めるときに「親は何をすべきであり、何をすべきでないのか」、これからサッカーを続けていくうえで「どんな接し方をすれば子どもは伸びるのか」をひも解きます。ジュニアサッカーの今を知ることができる一冊です。
【サッカー少年の親になる!】
出版社:メディア・パル
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