「指導者を誰もがあこがれる職業に」 中国でサッカースクールを経営する日本人の夢

2016年02月05日

コラム

「スポーツ指導者を誰もがあこがれる職業に」

 一方、TFAは引き続き日本の子ども中心で展開していたが、2013年より中国の子ども向けのスクールも開始し、すでに数百人の中国人が加わって総数千人を超え、混合選抜チームでの対外試合も始めた。また、上海及び山東の中国のプロサッカークラブや学校とも提携し、幼稚園の巡回指導、中国人コーチへのコーチング指導や、中国のスポーツスクールへの経営指導を行うなどの交流を深め、さらには日本のJクラブの中国遠征のサポートや、著名Jリーガーによる特別指導を行うというように、業務内容の幅を広げている。2015年7月には中国中央テレビのサッカー普及をテーマにした30分番組で、中国における代表的な民間サッカースクールとして取り上げられ、一気に中国社会での認知度が高まっている。現在野口を入れてコーチは10名(日本籍5人、中国籍5人)で運営している。「私たちはサッカーをツールとした教育で中国ナンバー1を目指し、アジアをサッカー王国にします」を社のビジョンとして掲げている。

 現時点では千葉と野口はそれぞれ異なるアプローチで中国でのサッカースクールを展開しているが、どちらも2020年までにスクールの規模をそれぞれ1万人、5000人までに増やしたいという目標を持っている。

 それに加えて、この2人に共通しているのは「スポーツ指導者を誰もがあこがれる職業に、世の中からリスペクトされる職業にしたい」という思いである。2人がまだ学生気分で子どもたちを教えていた頃、親からその指導を絶賛され、あなたたちは子どものあこがれになっていると言われ、子育ての悩みの相談までされることがあった。ところが、そのときに「皆さんの子どもを、将来私たちのようなサッカーの指導者にしたいと思いますか?」と問いかけると、多くの親は口を噤んでしまったという。2人は多くの優秀な日本人指導者とも出会ってきたが、彼らがS級ライセンスを持ちながら月収は20万に満たず、不安定な身分に苦しみながらも「好きなことをやっているのだから、仕方がない」と言っていることに、強い違和感を覚えていた。

 日本では、スポーツ指導者はビジネスを語りたがらない意識がいまだに強く、Jクラブ傘下のスクールのスタッフでさえ、未だに給与も雇用の安定性も低く、一生をかけてやれる仕事とは言えない。しかし、経済合理性を貫徹することにためらいの少ない中国であれば、スクールをビジネスとして成功させ、そこに携わるスタッフに十分な報酬を支払い、社会でリスペクトされる職業として認知させ、更には地域への貢献も可能だという認識を2人は共有している。日本のクラブではトップチームと強化には投資するが、普及はおまけであり、ボランティア・地域貢献と位置づけられている常識に風穴を開けたいと思っている。(続きは『アジアフットボール批評 special issue02』でお楽しみください)。


アジア批評02

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