「選手にとっての経験」だけで済ませていいのか。5回目の『ワーチャレ』で見えた、指導者が本気で向き合うべき“日本サッカーの課題”
2017年08月30日
コラム
バルサの選手はいいプレーを幾度となく再現できる
日本チームの選手が大会中に大きな成長を遂げられない、もう一つの原因に“いいプレーの再現性の低さ”にある。
バルサの選手たちは似たような状況が起こればいいプレーを繰り返し再現できるし、そのトレーニングを行っている。再現するためには、チームとしてどんなサッカーをするのかというコンセプトがあること、個人としてすべてに狙いを持ってプレーしていることの両方が必要である。どちらか片方ではなく、選手の育成には両方が欠かせいない要素だ。
なぜなら、それがなければ選手はオン・ザ・ボールでもオフ・ザ・ボールでもプレーの良し悪しの判断基準と成功失敗の理由を自分なりにしっかりと感じとることができないからだ。ここがないから似たような状況に置かれても日本チームの選手はいいプレーを再現できない。
特にジュニア年代の監督とコーチはチームとして進むべき方向性を選手に明確に示し、それに伴うプレーの良し悪しを日頃のトレーニングの中で作ってあげることが大きな仕事だ。それがあるから選手にとっては経験を上積みできる。
最近はトレーニングで課題となる現象を起こし、正解となるプレーを指導することが当たり前のようになってきたが、それは試合でも同じことだ。選手がトレーニングで習得したことを試合の中で偶然に起こすのではなく、必然に起こすのが練習の意義だ。試合では本気度が違うと思うのであれば、それと同じプレッシャーの中で最終的に成功体験を積ませる方法をとらなければならないだろう。
様々な改善点があると思うが、試合に使えるプレー=技術の再現性という見方をすれば、日本チームの選手は技術という道具の使い方を知らない。ボールをたくさん扱って技術という刀を磨くことは得意だ。しかし、その使い方という戦術的な要素を身につけられないからせっかく磨き上げた刀の切れ味を発揮することができない。
具体的に、試合で技術を発揮するためには自らでプレー時間を作り出す戦術的な要素を体で覚える必要がある。たとえば、体の向きをボール方向ではなく、ピッチの幅と平行に開くだけで視野が広がり敵の状況がわかるので次のプレーへのイメージが持てる。ほかにも1歩後ろや1歩斜め後ろにバックステップを踏むだけで敵と間合いができて視野が確保でき、止めて蹴る時間とスペースを作ることができる。
日本の選手は自らのプレー時間を“ボールを素早く動かすこと”、たとえば細かいダブルタッチや細かいターンなどの技術で作り出そうとする。しかし、それでは相手からのプレスを避ける根本的な解決にはならない。プレス回避のスキルを身につけるためにロンド(鳥かご)がやっているが、日本ではこれをパス回しの練習だと勘違いしている監督やコーチが多い。
マンチェスター・シティの監督、グアルディオラは「ロンド(鳥かご)をなんのために行うか」という理由を、長年彼を追い続けている記者マルティ・ペラルナウの著書『グアルディオラ総論』(ソル・メディア)の中で次のように発言している。
要約すると「ロンドは選手をうまくする、体の向きやボールの受け方を向上させるためのトレーニング。これはボールを失わず、早くプレーするための基本だ。どこで、どうボールを受けるかが重要で、ロンドはボール回しをする遊びではない」ということだ。
グアルディオラのロンドに対する造詣深いこのコメントは刀を磨くことが得意な日本の選手に“刀の使い方を覚えることの重要性”を伝える上で、非常に説得力がある。そして、いいプレーの再現性を高めるためには、習得した技術とその使い方をセットでプレー化することが基本にならなければならない。それができれば自らでプレー時間を作り出すことができ、もっと選手が狙いを持ったプレーができる。
今大会を通じて、バルサの選手たちとはこの部分での個のスキルに圧倒的な差があったことは間違いない。監督のダビド・サンチェス・ドメネもジュニサカWEBの単独インタビュー(近日アップ予定)で日本チームの技術の高さは心から認めていたが、その使い方については改善の余地があると口にした。
いいプレーの再現性を高めるという点では技術とその使い方だけでなく、チームとしてどう戦うかというコンセプトが判断材料に関わる。そのため、現状のJ育成組織では各カテゴリーの監督とコーチが改善できることと、クラブ哲学に関わる彼らが直接的に改善できない範疇があるのは、念のためにフォローしておかなければならない。
ただプレー機会を与えること、いいプレーの再現性を高めることは日頃から改善できることが十分にあるので、これまで以上に選手にとっての経験の上積みは可能だ。そのためには選手以上に監督とコーチが変わる努力をし、勇気を持たなければならない。さらに日本サッカーを引っ張るJクラブは自分たちがどんなサッカーを目指すべきか、それに加えて、育成組織まで一貫した指導をするためにはどうすべきかを“いま”本気で考えなければならない。
<関連リンク>
・U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2017
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