「選手にとっての経験」だけで済ませていいのか。5回目の『ワーチャレ』で見えた、指導者が本気で向き合うべき“日本サッカーの課題”

2017年08月30日

コラム

8月27日まで4日間、熱戦が繰り広げられた『U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2017』はFCバルセロナ(以下、バルサ)の4度目の優勝で幕を閉じた。今年で5回目の開催となった今大会の意義は、日本のクラブにとって“世界を体感する”ことだけなのか。今後の育成につなげるために日本のサッカー関係者は何に向き合い、具体的にどんなことを積み重ねるべきなのだろうか。

取材・文●木之下潤 写真●佐藤博之


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大会が始まって5年が経ち、日本の指導が変わったといえるのか

 バルサに負けた日本チームの監督が口にする言葉がある。

“選手たちにとってもいい経験になりました。この経験をクラブに持ち帰り、また日々のトレーニングに励みたいと思います”

 選手育成をクラブ哲学に持つスペインの名門クラブと戦い、選手が「いま何ができて、何ができなかったのか」を体感できたのでそれを次につなげたい。その思いが心に湧くのはわかる。確かに、そのとおりだろう。

 しかし、今大会が開催されて5年が経過するのに、この島国・日本が世界と戦える貴重の場を「選手にとっての経験」だけで済ませていいのか。そして、この5年間で、日本サッカーをリードすべきJの育成組織は世界と戦うためにクラブとして何を修正し、どんなチーム作りをはかってきたのか。

 タレントという意味で、バルサに分があることは否定しない。ただ「日本のジュニアはこの時期8人制サッカーをやっているから」とか、「バルサはトップからカンテラ(育成組織)までサッカーのコンセプトが統一され、一貫した指導がなされているから」とか、ましてや「歴史が違うから」という言い訳だけは聞きたくない。

 それがまかり通るのであれば、スペインでは9月に新しいシーズンが始まり、バルサの選手は休み明けで、シーズンがスタートしてから1週間ほどしか経っていない。たまに「日本とはカテゴリーの区切り方が異なり、早生まれの選手は中学1年生だから」ということを耳にするが、選抜チームの顔ぶれを見ると4〜6月生まれの選手が在籍していることも多い。

 ヨーロッパではどの国も9月から11人制サッカーに移行するので、準備期間が短いという点では日本のチームと同じ条件。また、トップから育成組織まで統一したサッカーコンセプトがあるという点では、Jクラブにもできることだ。

 こんな比較に何の意味もないが、今年バルサを指揮したダビド・サンチェス・ドメネは今シーズンから新たにインファンティルB(※日本のU13-12世代)の監督に就任したばかり。選手との信頼関係の構築でいえばJ育成組織の監督に分があっただろうし、チーム作りにかけられた時間もどちらの監督が多く持てたかは明白である。

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