「練習したことは試合に出る」。湘南ベルマーレの監督と主将がレアル戦で感じた課題とは?【4月特集】
2018年04月11日
コラム小さい頃から試合に近いトレーニングをどれだけやれるか?
今大会、日本のチームの中でレアル・マドリードを相手に普段通りのプレーが見られたのが湘南ベルマーレだけだった。もちろん監督の浮嶋敏氏とキャプテンの竹田舜選手が語ってくれた通り、課題は多い。ただ二人の取材で最も印象に残ったのが、「特にレアルだからと言って焦らず、観客の多い中で楽しもうとみんなでプレーしましたし、落ち着いてプレーできました」というキャプテンの言葉だった。
こう答えられた理由は、湘南ベルマーレが普段から試合と同じように守備の切り替えの早さと球際の激しさを持って練習に取り組んでいるからだ。
これは育成年代に限らず、トップチームにも見られることだが、特にトレーニング時に「ケガをさせたくない」という思いが頭をよぎるからなのか、プレーに対する緩さが目立つ。このことは海外でプレーしている選手たちが様々なところで数多く発言している。さらに竹田選手は、ジュニサカWEBの質問「個人として、次の練習からすぐに改善したいこと、改善できることがあれば教えてください」に対してこう答えた。
「練習したことは試合に出ると思うので、今回レアルのような強い相手と戦って、もっと練習から激しくチーム内でやっていかないといけないと感じたので、そこは次の練習から改善していきたいです。守備も攻撃も両方です。守備が上がれば攻撃が上がるし、攻撃が上がれば守備も上がるので、どちらも意識を高くやっていきたいと思います」
これを当たり前のように発言できる背景には、湘南ベルマーレがアカデミーで取り組む一貫した指導にある。詳しくは「どうサッカーを捉え、指導に落とし込むか」。湘南ベルマーレが体現する“ボールを奪う意識”」をご一読いただきたい。
湘南ベルマーレと他のチームとの大きな違いは、プレッシャーに対する感度とその次にある「前を向けるスキル」にある。レアル・マドリードと対戦する多くのチームが自分よりも体の大きな選手のプレッシャーに弱気になり、前を向いてプレーしようとしなかった。
普段なら1mの距離にまでプレッシャーをかけられてもターンをしたり、半身になってボールをコントロールしたりして前を向くのに。レアルの選手を相手にした途端、2m以上距離が空いているのに前を向かず、とにかくボールを後ろに下げてしまったり、後ろ向きの状態で近くの選手にボールを預けてしまうことがほとんどだった。
この原因は二つのことが考えられる。
一つ目は、練習から試合のように激しさを持ってプレーしていないこと。二つ目は、試合と同じような状況下でプレーしていないこと。つまり、少人数で行うトレーニングばかり行い、試合には程遠い人数設定で練習をやっていることだ。
U15にもなれば、一般的にチーム戦術の基本を覚える時期に入ってくる。ということは、例えば中盤で複数の相手にプレッシャーをかけられることは当たり前のように経験しているはずなのだが、日本のチームの選手たちは「この試合でいきなりそういう状況に出くわしてビックリした」という顔をしているし、試合後にもそのような発言をする。それは指導者も然り。試合のための練習をしているはずなのに、なぜ初めて体験したかのような反応を示すのか、かなり理解に苦しむ。
レアル・マドリード カデーテBを率いたペドロ・サンチェス監督もそうだが、海外の指導者たちを取材すると必ず「練習で試合の準備をしたい」と口にする。そして、その練習を見ても試合と同じ状況を作り出してインテンシティの高いトレーニングを行っている。
日本チームの課題は細かいことを言えば、キリがない。しかし、育成年代が抱えている課題は「状況に応じたプレーを味方とともに行うことができない」ことに尽きる。その原因は、練習から試合のように激しくプレーしていないことと、試合には程遠い人数設定で練習をやっているからではないのか。
プレッシャーのない技術練習ばかりしていないだろうか? U12なら小学校高学年なのに2対2、3対3程度の周囲との関わりが少ない少人数の練習ばかりやっていないだろうか? U15なら4対4程度の人数設定のグループ戦術らしき練習ばかりやってはいないだろうか?…。
小学校低学年から練習の中で試合に近いゲーム性の高いトレーニングをたくさん経験し、各々が磨いた技術をどう発揮するのかを状況によって自分なりの解決策を数多く覚えさせるのが、課題解決への第一歩だと思う。
試合に近いトレーニングだからこそ試合に生きる技術が身につくし、その使い方をたくさんの状況下で体験するからサッカーのプレーとして覚えるのだ。この考え方を持ってもう一度、湘南ベルマーレの監督とキャプテンのインタビューを再読してもらいたい。
■第1回
「U-15」と「U-12」年代のサッカーで起こっている「課題が同じ」なのはなぜか?
>>ジュニサカ公式facebookはこちら
>>ジュニサカ公式Twitterはこちら
>>ジュニサカ公式Instagramはこちら
>>ジュニサカ公式Youtubeチャンネルはこちら
>>ジュニサカオンラインショップはこちら
カテゴリ別新着記事
ニュース
-
【第49回 日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会】出場チーム決定!2025.06.18
-
なでしこジャパン(日本女子代表)、国際親善試合(vsスペイン女子代表)と「E-1サッカー選手権」に臨むメンバー発表!2025.06.18
-
「エリート女子GKキャンプU-15」参加メンバー発表!2025.06.17
-
「東北トレセン女子U-13」が開催!2025.06.10
フットボール最新ニュース
-
近江高校の躍進を支えた7つの班。「こんなに細かく仕事がある」部員も驚くその内容2024.05.21
-
「三笘薫ガンバレ」状態。なぜサッカー日本代表は個を活かせないのか?2024.05.21
-
【遠藤航・分析コラム】リバプールは何が変わったか。遠藤を輝かせる得意の形2024.05.21
-
リバプールがプレミア制覇に一歩リード?「タイトル争いは間違いなく波乱万丈」2024.05.21
-
前回王者マンC、絶対的司令塔の今季CL初出場・初ゴールで勝利。レアルも先勝2024.05.21
大会情報
-
【卒業記念サッカー大会 第18回MUFGカップ 大阪大会】大会結果2025.03.07
-
【卒業記念サッカー大会第18回MUFGカップ 東京大会】フォトギャラリー2025.03.03
-
【卒業記念サッカー大会第18回MUFGカップ 東京大会】F.Cボノスが逆転勝利で優勝を果たす!<決勝レポート>2025.03.01
-
【卒業記念サッカー大会 第18回MUFGカップ 愛知大会】大会結果2025.02.25
お知らせ
人気記事ランキング
- かつて“怪物”と呼ばれた少年。耳を傾けたい先人の言葉
- 東北トレセンU-13が開催!
- 低学年と高学年の食事量の違いは?/小学校5・6年生向けの夕食レシピ例
- 食べてすぐに運動しても大丈夫! 試合前にとりたい”消化の良い”食事とは?
- パスやシュートばかりでドリブルしない子ども
- 長友佑都・小川佳純も大学からプロへ! 明治大学サッカー部 神川監督に聞く、学生サッカーと文武両道【前編】
- 効果的な練習メニューの考え方。トレーニングを構築するために必要な9つの要素とは【サッカービギナーコーチ養成講座】
- 試合前の食事の悩みを解決!運動前に食べてもOKなものとNGなものは?
- 今、指導者に何が求められているのか?サッカーを“サッカー外”から学ぶ重要性
- W杯アジア最終予選に参加する日本代表メンバー発表!アーセナル移籍の冨安も選出【日本代表選手の経歴】