攻守両面からの立場でどう突き詰めて考えるか。育成大国ドイツに学ぶ「サッカーの基本原理」
2018年04月26日
コラム観察する”目”が大切
かつて、ハンブルガーSVや西ドイツ代表として活躍した点取り屋のウーヴェ・ゼーラーはストライカーの動き、さらにゴールを奪う秘訣を明かしたことがあった。
「観察する目が大切だ。まわりの選手が動き回っているときはジッと押し黙って気配を消す。そして、まわりの動きが収まったときに動き出すんだ。ゴールに直結する動きを知ることが大切だ。ボールを持つ味方と逆の方向に動くことでDFの視野から逃げられる。味方がシュートを打つときは、特に相手守備のマークが緩むときだ。センターからファーポストの方にスルリと抜け出せば、DFやGK、ポストに当たって、ボールがこぼれてくる可能性が高まる」
チャンスを作り出すこととゴールを決めることは同義語ではない。最終的には、GKの牙城を崩さなければならない。GKが予想しても止められないコースに、速さと重さのあるシュートを狙うのが模範解答だ。どんなに優れたGKでもゴールの四隅を正確に狙われたら、なす術はない。しかし、その四隅を狙いすぎると外れる可能性が高くなる。だからこそ、相手の逆を取る駆け引きがゴールを決めるために必要であり、身につけなければならないのだ。
ゴールを守ることは、ゴールを狙うことと逆の見方になる。つまり、ゴールが決まる確率が高いポジションにボールを運ばせず、そこからのシュートを許さないことが一番の対処法だ。相手の余裕を奪うには、攻撃側にプレッシャーをかけることが大事なのだが、日本人は誤解して『ボール保持者と距離をとったまま見る』ところで終わってしまっている。パスコースを消すだけの守備は、ただそこに存在しているだけのアリバイ守備だ。
大切なのは「ボールを取られるかもしれない」という心理的プレッシャーを与えることで、そのためには「常にボールを奪い取ろう」とする意識で守備に入らなければならない。インターセプトでボールを奪えればベストだが、不用意なチャレンジで体を入れ替えられたらピンチになる。奪えない状況ならば相手にキープさせて動きを止め、縦への展開を遮断する。
モダンサッカーが導入された近年でも、ドイツでは1対1でのボールの奪い合いが重要視されている。ツヴァイカンプフ(※1対1での状況におけるボールをめぐる凌ぎ合いのこと)は『いつ』『どこで』『どのように』奪いに行くのかという、相手の選択肢を狭める術を身につける大事なスキルなのだ。
【1/22トークイベント】中野吉之伴氏×末本亮太氏『ドイツサッカーの育成文化をどう日本に落とし込むか』
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