ベンチにいるだけでは成長できない。札幌・英国人FWの言葉から読み解く”選手の育て方”
2018年05月19日
インタビュー強靭なフィジカルと柔らかなテクニックでゴールを量産してきた北海道コンサドーレ札幌のFWジェイ。イングランド代表も経験した世界基準のストライカーは「黙ってベンチを暖めているだけでは、成長することができない」と話します。そんな彼のインタビューの言葉に子どもの育成につながるヒントが隠されている気がする。
取材・文●志田尚人 写真●Getty Images
日本人選手はピッチの中で忠実にゲームプランを遂行する
――来日して、4年目のシーズンを迎えています。これまでにジュビロ磐田と北海道コンサドーレ札幌の2チームに在籍し、J1、J2の2つのディビジョンでプレーする機会があったわけですが、現在、Jリーグで展開されるサッカーの質やレベル、日本人選手の特徴など、率直にどのような印象を持っていますか?
お世辞抜きに、Jリーグはプレミアリーグ(イギリス)、セリエA(イタリア)、リーガ・エスパニョーラ (スペイン)など、欧州各国のリーグに引けを取らないほど、高いレベルのサッカーをしていると思いますよ。
すべての選手が高いプロ意識を持ち、しっかりとした技術をベースにプレーしている。これも日本人選手の特徴の一つですが、ピッチの中で忠実にゲームプランを遂行するよう努めます。チームとしてのディシプリン、選手としてのインテリジェンスなど、あらゆる面で世界基準にあるのは確かですよね。
――選手個々が技術的に優れ、チームとしての規律が徹底していると評価される一方、日本のサッカーはこれまでに世界の舞台で確固たる結果を出せていない、というのが現実です。その理由、また、原因はどこにあると思いますか?
これは個人的な感想ですが、勝つことに対しての執着心とか、社会の中でのサッカーの価値観とか、そういうところが欧州と比較して、ちょっと質が異なるとでも言うのでしょうか。意識とメンタリティの違いが、プレーや結果に少なからず影響を与えているところはあると思います。それは選手個人の部分だけではなく、クラブの姿勢にも言えるのかなと。
――例えば、どういう部分でそれを感じていますか?
クラブで言うならば、チーム強化の姿勢とその方法です。毎シーズン、『絶対に優勝しなければならない』というような宿命を背負っているチームは、いくつかあるでしょう。その一方で現実的なスタンスを保ち、J2に落ちなければ良い、J1に残留できれば良いと考えているクラブや選手もいますよね。
日本も欧州も、基本的にそういった形でリーグが成り立っています。欧州の場合、絶対に優勝しなければならないクラブは本気でクラブを成長させ、チームを強くすると思った時、日本のクラブでは考えられないぐらいに躊躇いもなく強化に莫大なお金を注ぎ込みます。どんな手段を使っても、勝つ。そういった強い気持ちが強化の姿勢に表れています。
――日本のクラブの場合、そういう意志があまり見られない、ということですか?
もちろん、それぞれのクラブには、それぞれの事情があります。 そこにはフットボール文化の違いもあるのかもしれません。特に選手の移籍については、そう感じています。ご存知の通り、欧州の場合、リーグの強豪チームに優秀な選手が集まる傾向が見られますよね。
それには理由があって、そういったチームは強豪であり続ける必要があるからです。前年、下位チームで高いパフォーマンスを見せた選手がいて、自チームの戦力につながると確信した場合は間違いなく、強豪チームは獲得しにアクションを起こします。
選手もまた、強豪チームへステップアップすることを望んでいます。それが当たり前。ところが日本では、そのような場合でも、選手のクラブ間で移籍する機会が少ないように映ります。
――そういう事情は、日本へやって来てから知ったことですか?
はい。その仕組みが分からない頃は、どうしてそういう事態になるのか、さっぱり理解できませんでした。クラブが強くなりたいと 思っているなら、良い選手を獲らなければならない。最初の頃は、本当にチームを強くしようと思っているのか、勝つ気はあるのかと 思ったぐらいです。
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