「止める・蹴る」が秀でれば、それは大きな武器になる。デ・ブルイネが示す基礎の重要性

2018年06月30日

サッカーエンタメ最前線

≪デ・ブルイネの決勝ゴール≫

「止める・蹴る」は大きな武器になる

 この試合の決勝点となったデ・ブルイネのゴールは、デ・ブルイネとジェズスの壁パスから生まれている。ラインをスキップさせたパスワークではない。ただ、デ・ブルイネは最初のパスを受けたときにワンタッチで前方のジェズスへ捌いていた。パスの方向を変化させるようなフリックに近いパスだ。

 デ・ブルイネのワンタッチパスは、自らをスキップさせたのと同じ効果を与えている。バレーボールの「1人時間差攻撃」と少し似ているかもしれない。ベルギーにはエルジェ作の世界的に有名な漫画「タンタンの冒険」があるが、主人公のタンタンとよく似ている。

 デ・ブルイネの武器はインサイドキックの強さと正確さ。サイドキックができない選手はいないので、これが武器といわれてもピンとこないかもしれないが、誰もがやっていることだからこそ「止める・蹴る」が秀でていれば、それは大きな武器になる。逆サイドのゴールエリア角へフワリと上げるパス(というよりほぼトスアップ)はシティ定番の攻め手だが、近いほうのGKとDFのわずかな隙間へ刺すような低いパスも速度と精度が抜群。いずれもデ・ブルイネの右足を生かした攻撃ルートだ。

 かつてのデイビッド・ベッカムと似ていてセットプレー同然の威力がある。右サイドのスペースへ斜めに走り込んで縦パスを引き出し、そのままダイレクトで折り返すクロスボールもよく使っている。無理な体勢なのに無理に見えない。まるで体を液状化させてGを分散させているかのようで、そんなときのデ・ブルイネは大きなネコになる。

 カウンターアタックではジェズスやアグエロを狙ったスルーパスが十八番。球足が速く、距離が遠くても失速せずにDFの間を通過させられる。かつて冷遇されたチェルシーに対する決勝点は得意の右足でなく左足のミドルだった。左足でも同じような質のボールを蹴る。これもデ・ブルイネの長所だ。走れるしコンタクトにも強い。

 ただ、彼の武器は誰もができるが同じ水準では決してできないサイドキックである。チェルシーはバチュアイとペドロを投入、前線を厚くして1点を追ったが、あまり効果的な攻撃はできずに終わる。カンテからのパスが再三カットされてシティのカウンターを許していたのは痛々しくもあった。

<関連リンク>
・【特設ページ】2018 FIFAワールドカップ ロシア

≪デ・ブルイネの武器が分かるプレー集≫


<プロフィール>
デ・ブルイネ(ベルギー代表/マンチェスター・シティー)

1991年6月28日生まれ、ベルギーのヘント出身。母国クラブから2012年にチェルシーへ加入するもレギュラー定着には至らず、2014年にヴォルフスブルクに移籍。年間最優秀選手賞を獲得するなど活躍し、2015年からマンチェスター・シティでプレー。同クラブでリーグ、カップ戦タイトル獲得に貢献。


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