弁護士に聞く、熱中症対策。抑えておきたい“4つの知識”。管理者・指導者の責任は?

2018年07月26日

コラム
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熱中症01
※写真はイメージです。選手及びチームは記事の内容と関係ありません

熱中症対策に必要な“4つの知識”

 実際に熱中症にかかると、体内の水分不足や血流減少による頭痛やめまい、吐き気、脱力感、倦怠感などが引き起こされます。この段階で適切な処置が施されれば問題はありませんが、さらに症状が進行すると、脳や内臓が大きなダメージを受け、意識障害や応答の遅れ、言動の不調などが起こります。症状がここまで進行すると、多くの場合、手の施しようながなくなるため、子どもが「疲れた」「だるい」などと口にしたときは、すぐに日陰の気温が低い場所に移動させ、水分を十分に取って休ませる必要があります。

 また、近年、より高い効果があると言われているのが、ラグビーなどで実施されているアイスバスです。人間ひとりが入れるくらいの容器に大量の水と氷を張って、その中に入ります。これだけで熱中症の症状がかなり緩和されるそうです。

 運動中の水分補給に関しては、好きなタイミングで自由に飲ませているだけでは不十分です。水分だけでなくミネラルも十分に補給できるように、水に塩と砂糖を混ぜたものを10分ごとに飲んでいるかを管理する。これが今の主流です。指導者は「水を自由に飲んでもいいよ」ではなく、「水は10分ごとに必ず飲みなさい」という徹底した管理を行って、子どもの体を守ってあげてください。

 Jリーグでは、練習後に体重が1.5㎏以上落ちていた場合は、チームドクターから「練習中の水分補給が足りない」と注意されます。サッカーは特に運動量の多いスポーツなので、夏場の水分補給にはそれほど神経を尖らせる必要があるのです。

 もし、万が一、練習中に子どもが熱中症で倒れ、通院が必要になるなどのケースにおいては、多くの場合、指導者の管理責任が問われます。そうならないためにも、指導者は以下の4つのポイントを知識として踏まえなければいけません。

 まず、ひとつ目は、熱中症は死に至るほどの危険性をはらんでいることです。実際に先日、愛知県で小学1年生の児童が熱中症により、帰らぬ人となりました。熱中症はそれほど危険であるという認識を持つようにしましょう。

 2つ目として、熱中症が起こりやすい要因を事前に知っておく必要があります。以下がその主な要因です。

①気象条件(気温、WBGT)
②暑熱順化の程度
③体調や食事量のチェック
④肥満傾向か否か
⑤運動負荷および継続時間
⑥休憩の頻度・時間と水分や塩分の摂取状況
⑦着衣の状況

 特に、③体調や食事量のチェックに関しては子どもからの申告になるケースが多いため、素直に話し合える環境を普段から作っておくべきでしょう。また、⑥休憩の頻度・時間と水分や塩分の摂取状況は、きちんと全員が摂取したことを確認しなければいけません。

 3つ目に必要な知識が、熱中症の症状です。けいれん、脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気、体温の上昇、意識障害などはすべて、熱中症によって引き起こされた体の変調です。これは前兆であり、ここから適切な処置を施さなければ大変な事態になってしまいます。

 そして、4つ目の知識として必要なものが、こうした症状が起こってからの適切な処置です。熱中症の発症を疑った場合、特に意識障害があるケースでは必ず救急車を呼び、医療機関で適切な処置を受けましょう。また、意識がハッキリしていて、自分で水分補給できるようであれば、気温の低い日陰へと移動させ、水分を摂りながら、十分な休息を与えてください。近年、熱中症による医療機関への搬送が急増していますが、そのおかげで一命をとりとめるケースも増えています。

 これらの知識がなく、適切な処置を施せないまま、子どもを死に至らしめた場合は指導者に法的責任が問われ、有罪判決を受けたケースはこれまでいくつもあります。

 そして、冒頭でも記したように、今夏のような猛暑の中で子どもたちにサッカーをさせること自体が大きな間違いです。WBGTの指標で警戒レベル(25~28℃)を超える環境では、練習も試合も行わないことが最大の熱中症対策になると私は考えます。

望月先生
【スポーツ事故等を専門分野とする望月浩一郎弁護士】

熱中症に関する知識や対策は、日本体育協会の公式サイト内にある『スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック』がわかりやすく書かれています。下記URLからダウンロードして、参考にしてみてください。
http://www.japan-sports.or.jp/medicine/tabid/523/Default.aspx

<関連リンク>
「夏休みのうちにどれだけ心身ともに追い込めるかが大切だ」。日本の“夏トレーニング”に対する違和感
「知らなかった」ではすまされない熱中症対策。正しい水分補給の“効果”と“限界”


<プロフィール>
望月 浩一郎
(もちづき・こういちろう)
山梨県生まれ。京都大学法学部卒業後、1984年に弁護士登録。専門分野はスポーツ事故、医療事故、過労死・労災職業病事件。弁護士業務の傍ら、数々の競技団体の委員やアスリートの代理人を務める。2014年より日本スポーツ法学会の会長職に就く。著書に『スポーツ法学入門(共著・体育施設出版)』『スポーツの法律相談(共著・青林書院)』などがある。


 

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