なぜ柏レイソルは中村航輔を輩出できたのか? GKを育てる独自の取り組みとは
2018年09月06日
未分類J1リーグを戦う柏レイソルは、在籍するGK全員をU-18から輩出しており、年代別日本代表にも多くの選手が選出されている。そこで、日本代表にも選ばれた中村航輔選手をジュニア年代から指導し、現在はトップチームでGKコーチを務める井上敬太氏に、GK育成について話を聞いた。
取材・文●鈴木智之 写真●Getty Images、ジュニサカ編集部
『ジュニアサッカーを応援しよう!Vol.50』より一部転載

中村航輔が持つGKのメンタリティ
――柏レイソルは中村航輔選手を始め、トップチームのゴールキーパーをU‐18出身者で占めています。ゴールキーパーの育成について、クラブとしてどのような考えを持っているのでしょうか?
井上氏「アカデミーから良いゴールキーパーが育つ要因のひとつが「クラブとして、ゴールキーパーの育成に理解がある」ことだと思います。数年前、フロントの方がファンミーティングの場で『ゴールキーパーはアカデミー出身の選手を中心に考えています』と言っていました」
――それは、GKコーチからすると心強いですね。
井上氏「はい。そして、指導者の一番の目標が(ホームスタジアムの)日立台のピッチに立つ選手を送り出すこと。そしてクラブスローガンに「柏から世界へ」という言葉があるように、選手も指導者も、日々世界を意識して取り組んでいます」
――日本国内はもとより、世界で通用するゴールキーパーになるために、必要な要素は何でしょうか?
井上氏「これはロシアワールドカップを見ていて、とくに感じたことなのですが、技術や戦術、フィジカルなどは当然のこととして、メンタリティの部分はかなり大きいと感じています。ゴールを守る、シュートを止める、目の前の相手に勝つといった気持ちをどれだけ強く持てるか。日本代表の川島永嗣選手はメンタリティの強さを見せてくれましたし、中村航輔を見ていても、日々感じています」
――メンタリティは指導で伸ばすことができると思いますか?
井上氏「その子がもともと持っているメンタリティを変化させるのは、すごく難しいことです。(中村)航輔は小学5年生のときにセレクションを受けて、レイソルのアカデミーに入ったのですが、彼に関して僕が何かを要求した記憶はほとんどありません。グローブをはめて生まれてきたような選手で、ジュニアのときからとにかくシュートを受けるのが大好きでした。そしてゴールを決められること、失点することが大嫌い。目の前の相手や試合に勝ちたい!という気持ちは、大人になったいまでも入団当時と何も変わっていないと思います」
――中村選手のメンタルの強さは、11歳ですでに発揮されていたのですね。
井上氏「はい。ジュニアユースの時は、失点した後に味方の目の前まで行って『何で寄せなかったんだ!』と強く要求している場面を何度も見ました。私の方から『味方に指摘しよう』と言った覚えはありません。そう考えると、メンタリティは持って生まれた部分が大きいのではないかと思います。レイソルのアカデミーには身長があって、フィジカルに恵まれた選手はたくさんいますが、メンタルが強ければ、もっと上のレベルに行けるのに……と思うことが多々あります」
――指導者としては、そこをどう伸ばしていくかが悩みどころですね。
井上氏「アカデミーで指導をしていた頃は、航輔のようなメンタリティを持っていない選手を、どうやって導いていけばいいかを考えていました。そこで、まずはゴールキーパーとしての楽しさ、喜びを体験させることで、前向きに取り組むことができたり、もっとうまくなりたいという気持ちになるのではないかと考えました。シュートを止める 喜び、取り組んでいることを成功させた感触、味方と連携してゴールを守る喜びなど、『よっしゃ!』というガッツポーズを試合中に何回できるか。その積み重ねが失敗したとしてもトライしたことを見逃さずに声をかける指導者の目が、失敗を恐れない姿勢を生み、ゴールキーパーとしてのメンタルの向上につながっていくのではないかと思います。航輔は自分が成長すること、チームが勝つことに対する情熱が尋常じゃなかったんですよ。とてもじゃないですけど、今はそういう選手をあまり目にしませんね」
――指導者の立場からすると、手のかからない選手だったわけですね。
井上氏「おっしゃるとおりで、よく取材などで聞かれることがあるのですが、私が何かを教えたという記憶はほとんどないんです。もちろん、日々の指導で真剣に向き合い、技術、戦術、フィジカルなどの話はしましたが、時間さえあれば、自発的にシュートを受ける練習をしていました。『こういう選手がトップレベルに行くんだろうな』と思わされることがたくさんありましたね」
――中村選手とのエピソードの中で、思い出に残っていることはありますか?
井上氏「練習前に海外の選手のプレーを見て、話し込んだことですね。ブッフォンやカーン、カシージャスなど、当時の世界トップレベルの選手のプレーを一緒に見て、二人でよく話していました。「スターセーブ」という、シュマイケルが得意な両腕を目一杯広げて、シュートを体に当てて防ぐセーブがあるのですが、航輔が中学1年生のときにその映像を見せたのですが、直後の試合で実際に成功させたんですよ。『これは凄い選手だな』と改めて感じました」
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