どうゴールを奪うのか。なぜかメッシは子どものときからそれを知っていた

2018年09月20日

サッカーエンタメ最前線

≪メッシの少年時代≫

どうゴールを奪うのか。なぜかメッシは子どものときからそれを知っていた

「雨上がりのサーベドラ公園に現れた8歳のディエゴは、ボールリフティングしながらGKの頭越しにゴールを決めた」

 マラドーナがプレーした少年チーム、ロス・セボジータス(玉葱の意味)のコーチだったフランシス・コルネーホは、初めて見た8歳にしてすでに我々の知るマラドーナだったと証言している。

 メッシの少年時代の映像も現在のメッシそのものだ。小さくてユニフォームはブカブカで、ボールの大きさが膝ぐらい。それでも少年がメッシであることはすぐにわかる。右へ肩を落として左足のアウトでカットイン、相手の体重移動を見極めて切り返し、どんどん進んでゴール、誰も止められない。

 体の大きさやスピードはもちろん違っているけれども、やっていることはほとんど同じ。子どものときのスーパースターもやがて普通の大人になるものだが、マラドーナやメッシはそのまんま世界の頂点まで行ってしまった天才である。

 メッシが天才なのは、雷光の反射神経と図抜けたボール親和力だけではない。ボールと人体の原理を本能的に知っていたことだ。ユベントス戦の1点目、ルイス・スアレスとの壁パスから決めたゴールは実にシンプルだった。守備戦術のオーソリティーであるイタリア、その名門ユベントスが、ただのワンツーで破壊される。ただのワンツーは言い過ぎかもしれないが、凄く正確で速く巧みであることを除けば、小学生でもやるパス交換であり、おそらくサッカーが始まったときからあった崩し方だろう。

 戦術を複雑化させるのが好きな人がいる。いろいろな用語が生み出される。守備は100年間でどれだけ進歩し洗練されただろうか。でも、単純なワンツーでユベントスは崩された。ボールと人体が同じである以上、それで崩せるのだ。

 頭の中で装飾されて肥大化しているだけで、現代サッカー理論の最高峰もワンツー1つで崩されるものにすぎない。なぜかメッシは子どものときからそれを知っていた。

 なぜかサッカーの原理がDNAに入っていた。身体能力やもろもろを除けば、子どものメッシはユベントス守備陣を突破できる。

 バルセロナでテストを受けていたメッシ少年を見に来た、当時強化部長だったチャーリー ・ レシャックはキックオフに少し遅れた。そしてベンチにたどり着くまでのグラウンド4分の3周の間に契約を決めたそうだ。

 議論の余地がなかった。メッシはサッカーそのものに思えたからだ。

≪メッシの1点目/UEFAチャンピオンズリーグ2017-18 バルセロナvsユベントス≫


リオネル・メッシ(アルゼンチン代表/FCバルセロナ)

1987年6月24日生まれ、アルゼンチンの サンタフェ州ロサリオ出身。13歳でバルセロナに加入し、17歳でトップチームデビュー。以後、リーガ・エスパニョーラやUEFAチャンピオンズリー グなどの優勝に貢献。また、得点王やバロンドールといった個人タイトルも数多く受賞している。


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