なぜ4種の選手は「多忙」なのか…。少年サッカー界が抱える”トレセン”の深刻な問題/指導者座談会2【9月特集】

2018年09月21日

コラム

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【アーセナルサッカースクール市川U-10・12の南里雅也監督】

「指導者がきちんとスケジューリングすることが必要」

南里「関東のチームとしては、本来JFAが管轄する関東大会に重きを置くのがクラブとしてのスタンスだと思うんです。でも、今回おもしろかったのは某Jクラブと強豪町クラブについては同時に2つ、3つの大会に参加しているんです。私は、どう選手を分担するのかなと様子を見ていました。どの大会に重きを置くのかでチームを分けていたり、全ての大会で力が均等になるようにチームを分けていたり、チームによってカラーが出ていました。

 でも、そうやってスケジュールが重なる時に、力を出すべきところはどこなのかを指導者が見極めないと、せっかくのすばらしい大会も力を出し切ることが難しいです。だから、スケジュールの問題は根深いと思います。

 ワーチャレは協会の管轄ではない大会ですが、一方で世界を体感できるメリットがあります。世界に行くことが難しい日本において、オフィシャルの大会が優先順位が低くなる現象が起こっているわけです。Jクラブや強豪の町クラブもすべての大会に出場していたら選手たちの体が持ちません。どう選定するのか。本当にプレイヤーズファーストで選手育成を考えるのであれば、選手の体の回復は考慮すべきことです。ただ乱れ打ちにどの大会にでも出場するのはどうなのか、と。確かに、町クラブなら招待大会なんかは嬉しくて、全部出たくなってしまいたくなります。

 でも、本当に選手育成を考えるのであれば、指導者がきちんとスケジューリングすることが必要です。一方で、経験という意味で、量で育つ部分もあると思います。ただ、あの炎天下の中で1日に3試合を数日こなすのは、いいパフォーマンスが出せる条件ではありません。実際には選手が疲弊するばかりだし、プレーを見た指導者や保護者も不満が溜まるばかりです。特に、近年の夏の暑さは異常です。

 元スペイン代表のリカルド・ロペス氏は去年までアーセナル市川のダイレクターとして在籍していましたが、彼が来た1年目にジュニアの選手たちが3試合目を戦う様子を見て発言したのは『疲れているのに、なぜ試合をする必要があるんだ。やっている意味がないぞ』と叫んでいました。うちの指導者もすごく怒られていました。夏場の三試合目なのに指導者が『お前ら、気合が足りない』と火に油を注ぐような言葉を選手に言っているし(苦笑)。私もそうですが、『自分がやってみたらできませんよね』っていう話です。

 選手の起用法で多少の調整は効きますが、年間スケジュールについては大きな枠から変えていかないと子どもたちに何かが起こった後では遅いです。それに合わせて、レギュレーションも含めて見直していく必要があります。

 またリーグ戦で結果を出しているのに、なぜか全少で負けてしまうと『弱い』と評価されてしまうし、子どもたちにとっても非常によくない環境になってしまっているのが現状です。これはジュニアが抱える大きな問題なんです。ジュニアユース以上は、年間のリーグ戦を通して昇降格が決まるし、優勝チームが決まります。だから、今年はJクラブをはじめとする強豪クラブが出場する大会を選ぶところが見られたことは興味深いなと思いました」

高橋「みなさんの話を聞いていると、レギュレーションが統一されていないのも問題のようです。そうなると、準備が難しいと思うのですが、どういうふうに出場する大会を選んでいるんですか? 末本さんの大豆戸FCはバーモントカップにも出場されているようですが、どうですか?」

末本「大豆戸では6年生を3チームに分けて夏の大会合宿に出場しています。3チームで31名の選手が在籍していて、私たちは全員に出場機会を与えるためにそういう編成で活動するようになりました。

 例えば、地元の区大会は11人制です。夏の段階で11人制サッカーを戦うには、戦術的にもフィジカル的にも足りないところが多いので、私たちは『8人制の延長上として、いかに2〜4人のグループを作って優位性を生み出して戦っていくか』という目標に切り替えて試合に挑んでいます。

 ただ一方で、週末に招待される試合やJFA管轄のリーグ戦は8人制だったりもします。そこは子どもと共に頭を切り替えて課題を明確にしてやっています。

 神奈川では、1月に6年生と4年生を対象にした『日産カップ』という大会があるのですが、2年前までは11人制で行っていました。でも、それは小学生コートでの11人制です。

 つまり、夏のワーチャレとは違う環境、スポーツになっている現状がありました。どちらのカテゴリーにおいてもピッチが小さいので大変な状態です。選手たちがプレーしていてかわいそうなくらいです。否が応でもスペースがないので『中盤を経由して』というよりダイレクトな攻撃が続く大味な展開が多くなります。

 でも、ようやく昨年から8人制に切り替わりました。ただ6年生においては、この時期は11人制で試合ができるようになっているし、中学1年生のリーグ戦はフルコートの11人制なので、むしろそこにレギュレーションを合わせてもらった方が子どもたちにとってもスムーズなのではないかと個人的には考えています。

 そう考えると、中学生はリーグ戦を中心に行うため、オーガナイズも変わらずにスケジュールもスムーズです。それに比べるとジュニア、特にU-12の年間スケジュールと試合環境(8人制と11人制)は旧来のものと新しいものとが混在し、非常にマネジメントが難しいのが現状です」

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