「最初から“できない”とは思わない」。“遅咲きのスピードスター”伊東純也が描いた成長曲線
2018年10月16日
コラム森保一監督率いる新生・日本代表で頭角を現しつつある伊東純也(柏レイソル)。“プラチナ世代”と呼ばれる柴崎岳(ヘタフェ)や宇佐美貴史(デュッセルドルフ)など10代から注目を浴びてきた同年代の選手たちに比べると伊東の経歴は少し異質に見える。日本代表の未来を担う“スピードスター”はどんな成長曲線を描いてきたのだろうか。
取材・文●元川悦子 写真●Getty Images
サッカー漬けの日々
伊東純也が神奈川県横須賀市で誕生したのは 93年3月。Jリーグ発足を2か月後に控え、日本中が盛り上がっていた頃だ。父・利也さん、母・由香さんにとって待望の長男。男の子の場合は由香さんが名づけ役になるという約束があり、「『純』という響きが気に入ったのと、お父さんから『也』の一字を取って『純也』にしました」と母は言う。
2年後に次男・賢吾さん、6年後に三男・幸輝さんが誕生し、3兄弟は仲良く育った。「3人でよく遊びました。ケンカはしたことないです」と伊東本人も笑顔を見せる。「家の中にはボールがたくさんころがっていて、廊下で突然1対1が始まったりするのは日常茶飯事でした。蹴ったボールが天井や壁に当たって壁紙が剥がれたこともあったかな」と父も笑顔をのぞかせた。和気あいあいとした環境で成長した純也少年が本格的にサッカーを始めたのは小原台小学校1年の冬。同じ団地の4つ上の幼馴染みが横須賀鴨居サッカークラブ(鴨居SC)に入っていたことに加え、同級生のサッカー仲間も続々とここでプレーし始めたことから、自分も通うようになったのだ。
85年発足の鴨居SCは谷口博之(柏レイソル)らを輩出した地域密着型クラブで、現在は90人が活動している。原田康臣代表を筆頭に指導者は基本的に父兄。高校時代に快足ウインガーとして鳴らした利也さんも純也少年の入会と同時にコーチを始め、3兄弟が卒業した今も少年たちにサッカーを教え続けている。
「親父とは家ではあまり喋らなかったけど、サッカーになると怖かった」と伊東は述懐しているが、親子のピッチ上でのコミュニケーションは密だった。「練習の中で特に強調したのは、ボールを追うことと走ること。純也には『やる気のスイッチ』があって、やるべきことをきちんとやっていない時には怒りましたね」と父も振り返る。
原田代表も「純也はマイペースなタイプで、選手全員がベンチ前で体育座りをしながら監督の指示を聞いている時も、なぜか1人だけベンチに座ったままだったことがあった。その天然ぶりが彼のよさなんです」と笑っていた。そんなキャラクターを周囲の大人が認め、ガミガミ怒ったりしなかったのは彼にとってよかった点だ。
母・由香さんも当時からソフトボールをやっていて、鴨居SCの練習場所の隣で自身のプレーに勤しんでいたため、過保護にすることはなかった。「子どもたちが自由に伸び伸びとやってくれればそれでよかった。純也は野菜嫌いという問題を抱えてましたけど、何でも細かく切ってハンバーグとかに入れれば食べていたので、食事の面もあまり神経質にならずに普通に対応していました」と母は何事もおおらかな気持ちで見守り続けていた。 恵まれた環境を最大限生かし、純也少年は思い切りボールと触れ合う日々を過ごした。
「鴨居SCの活動は週末だけなんで、平日は仲間や弟と一緒に学校の校庭や公園で毎日何時間もサッカーしてました。自分はドリブルばっかりしてた。ゴールするよりドリブルで相手を抜くのが一番楽しかった。僕は好きなことへの集中力がすごくて、ポケモンとかゲームも極めてました」と伊東は言う。
カテゴリ別新着記事
フットボール最新ニュース
-
近江高校の躍進を支えた7つの班。「こんなに細かく仕事がある」部員も驚くその内容2024.05.21
-
「三笘薫ガンバレ」状態。なぜサッカー日本代表は個を活かせないのか?2024.05.21
-
【遠藤航・分析コラム】リバプールは何が変わったか。遠藤を輝かせる得意の形2024.05.21
-
リバプールがプレミア制覇に一歩リード?「タイトル争いは間違いなく波乱万丈」2024.05.21
-
前回王者マンC、絶対的司令塔の今季CL初出場・初ゴールで勝利。レアルも先勝2024.05.21
大会情報
-
【卒業記念サッカー大会 第18回MUFGカップ 大阪大会】大会結果2025.03.07
-
【卒業記念サッカー大会第18回MUFGカップ 東京大会】フォトギャラリー2025.03.03
-
【卒業記念サッカー大会第18回MUFGカップ 東京大会】F.Cボノスが逆転勝利で優勝を果たす!<決勝レポート>2025.03.01
-
【卒業記念サッカー大会 第18回MUFGカップ 愛知大会】大会結果2025.02.25
お知らせ
人気記事ランキング
- 全試合日程・組み合わせ・会場一覧【第56回全国中学校サッカー大会】
- FCポルタ、デサフィオC.F、武生FCブルーキッズらがラウンド16進出!【JFAバーモントカップ 第35回全日本U-12フットサル選手権大会】
- トリアネーロ町田、マルバ千葉、TSAフットサルスクール、リオンJr.が準決勝進出!【JFAバーモントカップ 第35回全日本U-12フットサル選手権大会】
- 全試合日程・組み合わせ・会場一覧【JFAバーモントカップ 第35回全日本U-12フットサル選手権大会】
- マルバ千葉fcがFCトリアネーロ町田を下し優勝を飾る!【JFAバーモントカップ 第35回全日本U-12フットサル選手権大会】
- マルバ千葉fcとFCトリアネーロ町田が決勝の舞台で激突【JFAバーモントカップ 第35回全日本U-12フットサル選手権大会】
- FCトリアネーロ町田、京都長岡京SS、ともぞうSCらが2連勝スタート!【JFAバーモントカップ 第35回全日本U-12フットサル選手権大会】
- マルバ千葉fc、リオンジュニア、TSAフットサルスクールらが準々決勝に駒を進める【JFAバーモントカップ 第35回全日本U-12フットサル選手権大会】
- 全試合日程・組み合わせ・会場一覧「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2025」
- 判断は“頭”でするものではなく“感情”でするもの。元フットサル日本代表監督の言葉から紡ぐ「すべてを出し切る指導」の真意