「何を?」「どのように?」「どこで?」「いつ?」プレーするのかが戦術だ【10月・11月特集】

2018年11月02日

育成を考える

ジュニア年代における戦術指導とは何なのか? 日本では戦術と言うと“拒否反応”を示す指導者も多い。しかし、サッカーにおいて戦術は必要不可欠な要素のひとつだ。つまり、トレーニングを構成するうえで戦術的要素を入れ込むことは必須なのだ。10・11月に特集テーマである「トレーニングをデザインする」から倉本和昌氏のインタビュー第2弾をお届けする。

【10月・11月特集】「トレーニングをデザインする

取材・文●木之下潤 写真●佐藤博之、ジュニサカ編集部


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戦術の正体は『見ること』『判断すること』


第1回(「目指すサッカー」がない指導者が明確な言葉を子どもに伝えられると思いますか?)の続き


倉本「戦術って何ですか?そう質問されると、日本の指導者達は困惑してしまう人が多いでしょう。本当に、戦術というものに対する拒否感や拒絶反応がすごいと思います。なぜか?それは戦術が何かわかってない、あるいは言語化できていないからです。お化けの正体がわからないようなもので、漠然としているからです。難しいものだという潜在的な植え付けがあります。戦術ってひと言で説明したら何ですか?」

中澤「サッカーに勝つためのものです」

倉本「そう言ったら子どもは戦術が理解できますか?」

木之下「相手をだますこと。パッと思いついたのはそれくらいです」

倉本「だますって言います?お父さんやお母さんが『だます』ことはダメだって言っていたからと、子どもが話しそうではないですか?」

木之下「そのあたりは、『サッカーでは、』的に話を落とし込んでいくと思います」

倉本「でも、そういうことです。どんどん説明できる指導者はいいですが、それが説明できない指導者は触れてはいけないものになってしまっています」

高橋「戦い方を決めること」

倉本「それで幼稚園の子がわかります?私の答えは『見て何をするか考える』ことです。その状況を見て、何をしようかと考えることが戦術です。つまり『認知-判断』そのものが戦術だという捉え方です。日本では難しく考えすぎて、誤解が生まれています。

 ヨーロッパの指導者たちが日本に対して不要だと提言しているのは、『ポジションを固定させて、やることを決めて、ロボットみたいに動かすことだ』ということです。見て、判断することを止めろと言われたら、彼らにとっては『なら、どうしたらいいの』と困ってしまうからです。

 よく『戦術っていつ頃から必要ですか?』と言いますが、サッカーを始めた最初からに決まっています。現ヴィッセル神戸のリージョ監督が昔言っていたのは『何を?どのように?どこで?いつ?プレーするのかが戦術だ』ということ。全然難しくありません。相手が来たんだったらどうする?パスをする。これも戦術です。そして、実際にやってみることが技術です。私のセミナーに参加した大阪のコーチは戦術をこう例えました。

『変化を起こす、見る、使う』。

 木之下さんが最初に言われた『相手をだます』にとても近いですが、例えば『裏をとる』ではまだ説明としては足りません。それを幼稚園児にも伝えるには、変化を起こすは伝わると思います。それは止まっていて起こす場合もあるし、動いて起こす場合もあります。そこには相手を見ることが必要不可欠になります。他の人でもいいし、本人が変化を使うかどうかです。だから、変化を起こす、変化を見る、変化を使うが共通認識としてあれば、質問内容はそれだけで事足ります」

木之下「本当に、いい表現ですね。変化はいい言葉のチョイスです。私も使わせてもらいます」

倉本「それが正しいとか間違いとはではなく、自分自身で定義すればいいのです。でも、日本の指導者たちはみんなの中からそれを探し出そうとするから難しくなっていきます。だからこそ早くから自分自身で定義し、実行に移したコーチが結果を出しています。

 ホルスト・ウェインというドイツ人がいたのですが、知っていますか? 

 私は、直接指導を受けた唯一の日本人だと思います。もう亡くなってしまいましたが、彼はずっとバルセロナに住んでいました。元々はホッケーの指導者だったのですが、サッカーの方が指導者としての需要が多かったのでサッカー指導者になった方です。彼が言っていたのは、ホッケーに限らず他のスポーツも技術的にフィジカル的にトップレベルの国ではすでに大差がないということでした。何が決定的な勝敗を分けるポイントになるかと言うと、『インテリジェンスの違いで勝ち負けが決まる』と。

 では、インテリジェンスをどう向上させるのかと、ホルスト・ウェインが考えて行き着いたのが『4ゴールゲーム』でした。向かい合った場所にそれぞれゴールが2つあり、どちらを狙ってもいいという簡単なゲームです。彼は『これをやるだけでインテリジェンスが向上する』と主張したのです。

 実際にトレーニングしたら分かりますが、プレーを始めるとボールを片方のゴールに運んで行くと、もう片方が空くという単純な仕組みなのです。でも、これってストリートサッカーと同じ原理が働いているのです。つまり、遊びの要素が原理として多分に含まれています。

 彼曰く『U-10までの選手たちには、4ゴールゲームをやらせたらかなりプレーの質が向上する』。ヨーロッパでもジュニア年代では9人制、7人制のサッカーをプレーさせていますが、U-10以下の選手たちがいきなりその人数で試合をやるのは厳しいのです。だから、4ゴールゲームで2対2とか3対3とかからスタートしてサッカーのプレーの原理を身につけ、その後に7人制や9人制に移行するとスムーズだと、4ゴールゲームを推奨しました。

▼4ゴールゲーム(例:2対2)
4ゴールゲーム図

 実際にやってみると、選手たちが勝手に判断するようになっていきます。ピッチの外から『広いのはどっち?』『空いているのはどっち?』と声をかけるだけで、子どもたちがサッカーのプレーを自然に表現するようになります。最近、ドイツではU-8以下では4ゴールゲームで試合をしようという話にもなっていて、試合を行っている地域もあるようです。

 私がホルスト・ウェインに学んだのは2004年でしたが、この理論はすでに英語でも訳されていました。実は、日本にこの理論を持ち込もうということで彼と打ち合わせをしていたのですが、最終的に実施するに至りませんでした。

 これは、ある幼稚園に導入した映像です。3年生以下の選手たちですが、1対1を4ゴールのコートを使ってやっています。映像を見ていると、指導者が何もアドバイスをしていないのに、子どもたちが自然に空いているスペースへと進んでいるのがよくわかります。

 次に、2対1で守備側が一つ上の学年の映像です。よく見ていると、守備がボールを奪いに来た瞬間に味方にパスしています。外からは何もアドバイスはしていません。この映像を観察していると、子どもたちは技術がなくとも顔が上がっている様子が見て取れます。つまり、技術がないと顔が上がらないのは迷信だということが証明されています。大切なのは、顔が上がるようなオーガナイズをすればいいわけです。

 では、問題です。

 タッチラインからボールが出た場合、どうやってスタートするのが望ましいですか?」

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