監督が「チャラけて」選手のバリアになる。興國高校サッカー部がプロを輩出し続ける秘密

2019年01月25日

コラム

「チャラけているのがちょうどいい」

――昨年は日本のスポーツ界に問題が噴出しました。今までの日本には軍隊式でしかやっていないチームが非常に多くて、そんな中で内野さんの話していることが共感を得たのではないかと思うのですが?

「日本のスポーツを取り巻く環境は、僕の中ではすごい偏見の集まりで、(軍隊式というのは)全世界から見たら局地的なものだよって。確かに軍隊式によって組織が強化されるというのはあります。

 ただ軍隊ではひとり統率を乱す人間がいると、部隊の全滅につながります。それはサッカーの守備の組織には当てはまります。だけど攻撃の部分は違います。それが当てはまる部分もありますが、相手の統率の裏側にいく要素がないといけません。だから軍隊的組織のトップダウンと、ボトムアップもどっちも必要というのが僕の考えです。それは指導者もさることながら、選手も理解していかないとダメだと思います」

――興國のスタイルが良くも悪くも注目を集めています。

「アンチ興國は『あんなチャラチャラして』みたいな(笑)。じゃあ何がチャラチャラしてんねんってなった時に、出てくるのは監督の服装くらいのもんなんです。選手はちゃんとしてるし。僕が上下ジャージを着るというのは、『今日は練習に混ざろうかな』って時ぐらいですね。それ以外はチノパンにシャツでいます。

 おもしろい話があって、2015年に選手権の大阪府予選で決勝戦でYシャツにスーツ、パンツの上にジャージを羽織ってベンチに入ってたんです。そしたらコーチの奥さんが『うっちー、何であんなチャラい服装してんの』と言っていたらしいんです。

 でもその後にワールドカップを見たその奥さんが『監督ってスーツのほうがめっちゃかっこええやん。何で日本はそうならんの?』と。そこでコーチが『だから内野さん、普段スーツやん』と一言。奥さんは『あっ!』ってなったそうです。だから世界的にみたら日本の『チャラチャラしてる』というのは偏見なんです。

 リオ五輪で優勝したブラジル代表監督はデニムにジャケットでした。じゃあその代表監督を批判しますか?ブラジル代表の監督だから批判しない、日本の高校の監督だからダメっていうのは差別なんです。だったらそれもダメじゃないと。ジャージが正しい服装なんですか?偏見ですよ。


【リオ五輪でU-23ブラジル代表を優勝に導いたロジェリオ・ミカーレ監督(写真●Getty Images)】

 6,7年前にはこんなこともありました。知り合いから選手を紹介されたんですが、結局興國にはこないと。

『選手は乗り気やったんですけど、どうしてですか?』
『お前やからハッキリ言うけど、親がジーパンはいて指導するような監督のところにいかせたくないって言ってる』
『それじゃ僕と合わないんで、仕方ないですね』って。じゃあ、あなたはルイス・エンリケ(スペイン代表監督)の指導も受けないんですね、と。

 僕の中ではひとつ狙いがあって、自分が興國高校サッカー部のアイコンになってそういう雰囲気を出してるんです。(選手の)バリアみたいなもんで。

 そのバリアを突き抜けてくる人は、基本的に反発がないんです。僕らの指導方針、関西弁でガラが悪いのも、笑って見てはるんです。僕というフィルターを通り抜けている段階で、かなり共感を得ているんでやりやすい。だから選手が伸びていき、クラブの雰囲気がいいというのがあると思います。だからチームが目立つときほどあえてそうしています。
 
『監督、何でそんな格好しているんですか?』ときかれた時に、『日本の監督はこうで、外国の監督はこうです。どっちが多勢ですか?』となると外国なんです。ジャージがダメだ、ということはない。しかしジャージやないとアカンというのは偏見やし、視野が狭い。

 フットボールという全世界で行われているスポーツをする人の考え方ではない、と保護者には笑って話します。こういう考えを共感できる人ではないと、興國ではやっていけないし、これくらいチャラけているのがちょうどいいんですよ(笑)」

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