大学生指導者から見た日本サッカー。サッカーを学問として考える必要性【4月特集】

2019年04月03日

コラム

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経験則でしか指導できない4種の問題点

——少し話が離れてしまいましたが、実際に大学のトップチームからジュニアユースまで指導されて感じることがあると思います。高校と中学のチームに関わってみて、指導者のレベル、また指導環境のどういう部分が問題だと感じていますか?

小谷野「指導者の問題は『経験至上主義』というか、経験則でしか指導を考えていない方が多いのかなと感じています。それはA級ライセンス取得講習会の運営サポートを行ったり、高校生のBチームの遠征に同行したりして、いろんな指導者と触れ合って思うことです。多くの方が自分の選手時代の経験を今もそのまま応用していることが悪い方に出てしまっている気がします。その経験とサッカー指導に必要なベースとなる知識とを織り交ぜながらトレーニングに落とし込むべきなのに、経験則でしか指導していなくて、昔の理不尽・体罰・根性論による指導が引き継がれているなと実感しています。

 なぜ改善されないのか。

 その一つの原因として、私は指導者養成に注視しています。指導者が知識や指導方法をアップデートする機会が少ないのが一つの要因なのかな、と。様々な指導者の方に聞いてみても、『指導を学ぶ機会が少ない』とおっしゃっていました。実際に、学ぶ環境が少ないと思っています。

 また、部活動でも選手の受け渡しがうまくいっていません。例えば、小学校から中学校に上がる段階で、どういう選手がどういうチームに行って、何が足りていないのかなどの受け渡しがしっかりなされていません。そういうものがないため、小学生で結果を残す、中学生で結果を残す、高校生で結果を残すという流れになってしまっています。小学校から高校まで一貫して指導できない仕組みになっているのが、部活動を中心に回っているために起こってしまっているのかなと思っています」

——A級ライセンス取得講習会の運営サポートを行ったり、高校生のBチームの遠征に同行したりした時に、具体的に経験則でしか指導できていないなと感じられたのですか? 関わった指導者との関係もあるので、言える範囲で教えてください。

小谷野「ある大会で懇親会に参加したことがありました。私は大会中に指導者が『入れろ』『決めろ』『そこじゃない』というような、コーチングとは異なる根性論を振りかざす声のかけ方に疑問を持っていました。実際に、選手も楽しそうにプレーしていませんでした。だから、思い切って質問してみました。

『選手が楽しそうにプレーしていないようでしたが、どう思いますか』と。

 すると、ほぼ全員の指導者が『オレたちの頃はこうだったから、今もこうしなくちゃいけないんだよ』という返事でした。なんなら『根性が足りていないから、こういう指導をやっている時期なんだよな』ということを口にしていて、『根性が足りないなら一発殴ってやればいい』という指導者もいて、本当に『ひどいな』と思いました」

——それはひどいですね。A級ライセンス取得講習会の運営サポートをされていると、講習内容を目の当たりにされています。日本ではレベルの高いライセンスになりますが、それについてはどう思いましたか?

小谷野「その前にスペインサッカー協会のライセンスを取得している坪井健太郎さんと話をする機会がありました。なので、A級講習会の印象を聞いてみました。すると『どちらがいいというより、日本サッカー協会(JFA)のライセンスは指導の知識を新たなにプラスする機会が少ない』と感じたそうです。『スペインだと知識をたくさん取り入れて、実際の現場指導は任せ、知識のアップデートを優先させるような感じ』だとおっしゃっていました。日本の場合だと講義で知識を詰め込む部分が少ない、と。

 私も講義を聞いていたのですが、インターネットを活用して自分自身の独学で学べるような内容しか出てこないように感じました。新たなに『そういう知識があるんだ』という発見がないのが感想です。指導養成を考えると、そういう部分をもっとアップデートしていかないといけないのかなと思います」

——ライセンス制度の仕組みで明らかな違いがありますが、どのような感想を持っていますか? 例えば、日本ではこんな感じ、スペインではこんな感じなのかなという言い方しかできないとは思いますが。

小谷野「日本のサッカーは研究というか、学問化の話になるのですが、カタルーニャ州ではバルセロナ体育大学があって、そこに現場の実践知が集まって大学で研究されて各クラブやスクールにまた落とされていくと聞きました。では、日本ではJFAがそういう研究しているのかと考えた時に『サッカーを深めていくような学問化・言語化をする』部分に圧倒的に差があるのかなと、自分の印象としては持っています。プレー1つとっても、例えばスペインではドリブルが二つあって言語化までされています。そういう部分でも、学問としてサッカーを考えるという差が、ライセンスの差にもつながっていると思います」

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