「学びたいけど、学べない」。大学生指導者が考える、日本サッカーに根性論が根強く残る背景【4月特集】

2019年04月10日

育成/環境

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学生コーチが行う指導環境の改善

——北陸という土地でもそのような環境があるんですね。実際に一人あたりの指導者に対する人数、また試合経験をどれだけ積み上げさせられるのかは大きく「好き」に関わる問題だと思います。そのあたりの工夫はしていますか?

小谷野「基本的に自分が指導した中学生のチームは、試合もなるべく平等な出場時間を作っています。大学では、サブチームの試合があるので公式戦に出場できなかった選手の出場機会もあります。高校生については私が土日の試合に帯同できませんので、詳しい状況までは把握できていません。

 ただ数名の選手から『半年試合をしていません』という悩みが相談されたので、監督に直談判して『試合数を増やして欲しい』とお願いしたのですが、『帯同するコーチがいないので、現実問題難しい』という答えが返ってきました。そのサッカー部は指導者2人に対して、部員が110人くらい在籍しています。だから、試合を経験できない選手は多数いるのではないかと思います」

——ちなみにその学校は部員が100人オーバーいるわけですが、どういう区分けをされているのですか?

小谷野「Aチームが20~30人とそれ以外のBチームという感じです。スケジュール次第では、Cチームを作って試合をしたりしています。でも、基本はAチームとそれ以外です」

——「いち指導者」に対するキャパシティ、マンパワーがないにしても手立てが必要ですね。

小谷野「それ以外のBチームを見ているコーチは一回の練習で40〜50人を指導しなければならない環境です。私が入った時は二回に分け、自分が見られる選手数に減らして見たりはしています。

 あと私がしている取り組みは、一人ひとりを見られないのでグループラインを作って映像を送ったりしています。その映像について『今日の練習のこういうところは改善した方がいい』とか、自分がいいと思ったプロの選手の映像を投げかけてそれに対して質問してきたら答えるとか、オンラインを活用しています」

——限界があるとはいえ、今の時代そういうものを駆使すると、何かしら少しずつは個々に目を向けられることはありますよね。

小谷野「最近嬉しかったのは、BチームからAチームに上がった選手から『オンラインの指導のおかげで上がることができました』と言われたことです。実際に、少しは効果があるのかなと思います」

——最後になりました。何か伝えたいことがあればお願いします。

小谷野「何度も言いますが、自分は選手時代に理不尽や根性論を振りかざした指導を嫌というほど目の当たりにしてきたので、正直言うと『サッカーを辞めよう』と何度も思いました。精神的に追い詰められた時期があって、本来サッカーは楽しいものなのに、『どうしてサッカーのせいでこんなに苦しいのか?』という矛盾した思いも体験しました。

 そして、指導する立場になった時に『理不尽や根性論の指導がまだまだ根強く立ちはだかっている』現状を見たので、今のうちから指導環境を変えていくビジョンを立てましたし、こういった情報を通してそういうことをしている指導者の考え方を変えたいという強い思いがあることを伝えたいです。

 サッカーには最適解があると思いますが、それが経験則ではなく最新の情報とかを織り交ぜながら『何が最適解なのか』を本当に考えた指導をサッカーコーチにはして欲しいという思いです」

——言い難いことにもたくさん答えていただき、本当に感謝しています。理不尽、根性論、暴力、いじめなど日本のスポーツ界の悪しき風潮が少しでも改善していけばいいなという思いもあって、今回の特集を企画しました。

 経験があるから、若手だからという偏った見方ではなく、それを含めて指導者は何を学ぶべきか、育成全体として何を変えていくべきかをもっと議論していく必要があると思います。今回はご協力いただき、本当にありがとうございました。


 >>4月17日(水)は二人目の大学生コーチが登場!


 
【4月特集】大学生指導者から見る4種の問題


<プロフィール>
小谷野拓夢(こやの ひろむ)
北陸大学4回生。サッカー部のコーチをしながら中高年代も指導する。SNSを活用して積極的に「理不尽・根性論など日本が抱える指導者問題を考え直すキッカケになるような情報」を発信中! ※notetwitter


 
 

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